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決勝トーナメント三日目(ベスト16:ドイツ対メキシコ、オランダ対ユーゴスラビア)(1998年6月30日)

 暑い、暑い・・。温度計は「33度」をさしています。

 いま、フランスの南、地中海沿いの町、モンペリエにいるのですが、その暑いこと。ここはあまり雨が降りませんから、スタンドの屋根も申し訳程度。ということで、直射日光が降りそそぐ炎天下で、熱い戦いを観戦することになってしまいました。

 とはいってもそこはヨーロッパ。湿度は高くありませんから、木陰では涼しいのです。でもスタンドは炎天下。もうまいっちゃいましたヨ。特に帽子を忘れた湯浅は、髪の毛が黒いこともあって、もうゆでダコ状態。一時は、ホントに気が遠くなってしまうような感覚におそわれたりしました。それでももちろん試合はしっかりと観戦しましたけれどネ。

 昨年のワールドカップ最終予選、対UAE戦でも(至UAE)そうだったのですが、気候によってサッカーはガラッと変わってしまいます。その時の日本代表も、あまり動けずに苦労しました。これは、空気が薄く(高地だから)暑い気候に慣れているメキシコにとっては有利です。

 私の周りは、すべてメキシコ人サポーター。私はドイツを応援していますから、チョット不安。この試合は、どちらかといったら、サポーターのマインドで見ようと思っていたのですが、それはやめにして、純粋にライターとして見ることにした次第。

 でも、近くに座っているドイツ人は、周りのメキシコ人と仲良く話しながら見ています。チョット耳をすますと英語でしゃべっている様子。

 「エルナンデスはいいネ。ラミレスは残念だったネ(メキシコの中心選手・・前回のオランダ戦で退場になりこの試合は出場停止)・・」とドイツ人。逆にメキシコ人は、「いやー、アンタのところだって、クリンズマンやビアホフなんか強い選手がいて、メキシコは頑張ってもたぶんだめだろうネ・・」など。

 とにかく試合前は和気あいあいなのです。それでも試合が始まったら様相がガラッと変わり、両方とも、相手のファールには拳を振り上げて「ブー!ブー!」。それでもその手が隣に当たったら「オー・パルドン(アッ、ゴメンネ)」ですよ。まあ、いろいろな意味でサッカーは、有効な文化接点だということなのでしょう。

 さて試合です。

 思った通り、両チームともに、中盤でのダイナミズムが欠けていますが、総合的なチーム力では、明らかにドイツの方が上。堅実でダイナミック、そしてクリエイティブな守備をベースに(メキシコでフリーになる選手はまったくといっていいほど出てきません)、ココゾッという場面では、何人もの選手が猛ダッシュで(リスクチャレンジの)攻撃参加です。

 そんなドイツに対し、メキシコは攻め手がないといった状況。それでも一度だけ、エアーポケットに入ったように、エルナンデスにスルーパスが通り決定的な場面になったことがありました。ドイツGKのケプケが、ギリギリのところで足に当てて防いだのですが、そのときのドイツ人サポーターの顔は、例の「眉根にシワ寄せる」シリアスなもの。一瞬シーンと静まりかえり、その後「ザワザサ」と今のプレーの問題点を議論するドイツ語の会話が聞こえます。その反応がドイツらしくて笑えました。もちろんメキシコ人サポーターは、感情あらわに「クソー!」ってなもんです。横のメキシコ人カップルなんか、抱き合って悔しさを表現しちゃったりして・・・失礼しました。

 前半でのドイツのチャンスは数度。その中で、一番惜しかったのが、39分の、マテウスから左サイドでタテにフリーランニング(パスを受ける動き)したヘスラーにパスが通り、そこからのセンタリングを、ビアホフがヘディングしたチャンスでした。完全に入ったと思ったのですが、ボールは無情にもバーを叩いてしまいます。

 後半早々のエルナンデスの先制ゴールですが。それはまあ、どうしようもない失点でした。ゴール前の混戦からうまく抜け出したエルナンデスが、本当に冷静に、ゴール左上隅に決めたものですが、そこにエルナンデスのゴールゲッターとしての真価を見ました。それは、ココゾというワンチャンスをものにしてしまう「能力」のことです(私は、ゴール前の嗅覚などというファジーな表現は使いたくありません)。

 さて追いつめられたドイツ。ここから、世界中で恐れられている「勝負強さ」を発揮できるのか(予選リーグの対ユーゴスラビア戦では、残り15分に発揮して二点取り、結局引き分けに持ち込む)。それとも、このまま消えてしまうのか。ドイツの調子はいま一つですから、ここで負けてもおかしくありませんし、私も納得するしかありません。この調子じや、どうせいつかは・・。それでも、ここで逆転できたら、もう一つチーム力がアップするだろうにな・・。私はそんなことを思っていました。

 そして13分、今大会でドイツの中心になることが期待され、結局「いつもの通り」期待はずれの出来でベンチを暖めていたメラーが登場です。この状況で活躍できなければ、もう彼は二度とチームに入ることはないに違いありません。そのメラーが燃えました。中盤での鋭い守備から、時にはスライディングタックルまで見せたのです。

 どんなに素晴らしい才能があっても、モダンサッカーでは、守備をやらない、できない選手はスグにお払い箱になります。そのことをメラーほどの選手が知らないはずがありません。そんな彼のプレーでまず目立ったのが守備だったのです。これは期待できる・・

 たしかに16分には、メキシコのカウンター攻撃にあい、ポストに当たるシュートから最後はエルナンデスに決定的なシュートを打たれてしまったとはいえ(ケプケが奇跡的にセーブ)、ドイツの調子が上向きになってきたことだけは確かでした。

 20分過ぎからは、もうガンガン攻めまくります。そんな「前に」重心がかかっている状態にしては、中盤の守備も、まあまあバランスがとれています。いつかは点が入るかも知れない・・。そんな期待を抱かせる時間帯。そして29分。ハマンの右からのセンタリングをビアホフが競り、こぼれたボールを、クリンズマンが、倒れ込みながらしぶとく決めて同点とします。

 決勝ゴールは、40分。交替出場したキルステンが右からセンタリングを上げ、それをビアホフがヘディング一閃。ボールは、メキシコのスーパーゴールキーパー、カンポスの手をかすめて右上隅に吸い込まれていきました。

 この勝利には、次の準々決勝に臨むドイツにとって重要な意味が含まれています。その第一が、メラーが復活のきざしを見せはじめたことです。とはいってもまだ不安が一杯。まず先発メンバー(そのポジション)がクルクルと変わること。そして主力選手の調子がまだまだだということです。これでは・・と思えてしまうのですが、そこはドイツ。こんな「カオス(混沌)」の中でも、最後(これがどこになるのか・・)にはキッチリとドイツらしい「超アクティブ&ダイナミック」なサッカーを見せてくれると期待してはいるのですがネ・・。

 (暑いし、水分不足だから)フラフラになりながらも、やっとホテルに到着した湯浅でした。

 さて次は、ユーゴスラビア対オランダです。この試合は、ホテルでのテレビ観戦です。

 この試合は、典型的な、チカラが拮抗するチーム同士の戦いになりました。緊張感がブラウン管を通して伝わってくるのです。両チームともに、しっかりと守備を固め、チャンスあらば・・と相手の「針の穴」を狙います。

 とはいっても、やはり総合力はオランダの方が上。基本的には彼らが試合のペースを握り、ユーゴスラビアが、「才能をベースにした」鋭いカウンターを狙うといった展開です。ユーゴのカウンターのキープレーヤーは、いわずと知れたストイコビッチ。そしてユーゴビッチ、ペトロヴィッチ、最前線のミヤトビッチが絡んでいきます。

 浦和レッズのペトロヴィッチですが、チームの中で本当に重要な役所を任されています。監督の、彼に対する信頼をヒシヒシと感じます。彼の役所は、攻守にわたる「つなぎ役」、「穴埋め役」、そして突撃隊長です(詳しい意味は、長くなってしまうので・・)。とにかく大車輪の活躍なのです。彼の移籍のウワサは本当なのでしょうか。レッズは、彼のことを是が非でも引き留めなければなりません。

 緊張感がただようなか、試合が進行していきます。ただ徐々にオランダの攻めが鋭く、危険なものになっていきます。

 試合が進む中で、選手たちはどんどんと「学び、成長」し、そして心理的な「揺動」が徐々に収斂され、あるレベルで落ちついていくものなのですが、ユーゴスラビアの危険なカウンターに、守備的ハーフのダビッツとセードルフが、ほぼ完璧に対処できるようになった頃から、オランダ選手たちの心理状態がどんどんとダイナミックなものになっていきます。

 そして37分、ベルカンプの先制点が決まります。タテパスを受け、背にしたマークの相手を巧みに外して右足で決めたシュートは見事の一言。彼は、イングランド一部プロリーグ、プレミアリーグのチャンピオン、「あの」ベンゲル監督率いるアーセナルでも王様です。

 ただ、後半が始まってすぐの3分。ユーゴスラビアが同点ゴールを奪ってしまいます。ストイコビッチの、「例の」正確無比なフリーキックから、ディフェンダーのコムリエノビッチがヘッドで決めたゴールでした。ファーポスト側に上がったセンタリングを、ニアポストへ「ドカン!」と決めたスーパーヘッドだったのですが、スゴイ! と感動していたのもつかの間、今度はユーゴビッチが引き倒されて、ユーゴのPKになってしまいました。それを「見事」に外すミヤトビッチ。蹴られたボールが、ドカンっとバーに当たり跳ね返ってきてしまったのです。これは・・ドラマの予感・・。

 その後は、逆にユーゴがオランダを押し込みはじめます。そしてストイコビッチに代わって、サビチェビッチが登場です。この二人は同じタイプということで、同時にはうまく機能しないということなのでしょうが、守備も含めた総合力では、ストイコビッチの方が断然上だと思うのですが・・。

 そのこともあったのでしょう、後半も中盤が過ぎる頃から、今度は逆に、オランダが完全にゲームを支配してしまいます。ストイコビッチの抜けた穴は大き過ぎた?! とにかくオランダが、ロナルド・デブール、オーフェルマルスを中心に、ベルカンプ、コク、はたまた後方から上がってくる、ダビッツ、セードルフが波状攻撃を仕掛けるのです。

 最後の時間帯、ユーゴスラビアは完全に劣勢。まったく攻め上がるエネルギーを感じません。対するオランダはトップフォーム。どんどんと攻め込んできます。場所はツールーズですから、モンペリエ同様、暑いに違いないのですが、にもかかわずのダイナミックサッカー。それも試合終了間際までその勢いが落ちないのですからね。オランダは、高い技術、戦術能力だけではなく、フィジカルでも素晴らしいものを備えていることを証明しました。もしかしたら・・。

 ロスタイムに入り、ダビッツの、表現しようもない素晴らしい決勝ロングシュートが決まり、結局オランダが準々決勝に進出します。相手は、イングランドとアルゼンチンの勝者。この決勝トーナメントブロックはものすごく面白い組み合わせになりましたネ。

 湯浅ですが、日本代表が帰国した後も、ワールドカップをテーマに、ラジオの文化放送に定期的に出演しています。それは、朝の「小西」さんの番組。だいたい「7時5分」ころから5-7分くらいしゃべります。機会がありましたら是非お聞きください。

 明日は早起きをしてボルドーへ飛びます。観戦する試合は、「ルーマニア対クロアチア」。ご期待アレ・・




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