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天皇杯準決勝・・アントラーズvs東京ガス(3-1)・・決勝はラジオ文化放送で・・(1997年12月29日)

東京ガスが、元気があるというか・・、とにかく素晴らしい立ち上がりを見せました。それは、特に中盤の守備が素晴らしくアクティブだったからです。ただ私が見る限り、決定的なチャンスをつくるという意味では、確実にアントラーズに「一日の長」ありといったところ。それは、前半で何度か、東京ガスの選手がフリーでボールを持った状況で、つまり「攻撃の起点」になったにもかかわらず、他のチームメートが、フリーランニング(パスをうける動き)を見せないのです。それでは、相手の「決定的なスペース」を突くまでにいたらないのは道理。サッカーは、基本的にはパスゲームですからね。そこに、「J」との「差」が見えかくれしていました。そんな東京ガスに対し、アントラーズの攻めは本当に「危険」。その意味の本質は、彼らが、「サッカーはボールのないところで勝負が決まる」ということを心底理解しているからです。そのことは、ボールが動き始めた瞬間での、ボールのないところにいる選手たちの「アクティブな動き」を見ていれば一目瞭然です。一人だけではなく、何人もの選手たちが同時に、前後左右に動きはじめるのです。それも、常に「決定的なスペースでパスをうける」という明確なイメージをもって・・。

ということで、前半の8分、アントラーズが「理の当然」というゴールを決めました(ジョルジーニョ)。そして前半21分の二点目(ビスマルク)。それは、攻撃のサイドを変えながら、東京ガス守備ラインを何度か振り回して挙げた素晴らしいゴールでした。東京ガスの選手たちにとっては、2点のビハインドは、まだ「可能性の残る範囲」。その後のアントラーズの加点チャンスをよくしのぎ切、前半はそのまま「2-0」で終了です。

さて後半がはじまりました。東京ガスは、まだ可能性が残っているということで、しっかりとした中盤ディフェンスからのカウンター狙いという基本的なゲーム戦術をくずしません。そして何度か「チャンスらしき」シーンはつくりますが、それでも「単発」といった印象はぬぐえない・・と思っていた矢先、東京ガスが「 希望をつなぐ」一点をたたき込んでしまいます。それは、後半19分、コーナーキックからのチャンスを、エドウィンがシュート。それを、岡元がヘッドでアントラーズゴールへたたき込んだゴールでした。これで「2-1 」。東京ガスが俄然勢いを増します。ただこの一点は、逆に、後半は「カッタルイ」出来だったアントラーズに火をつけたようです。「イケイケ」になるかと思われた東京ガス以上の「パワー」で、彼らを押し込みはじめたのです。ただその勢いが続いたのも10 分間くらい。その後は、東京ガスが「人数をかけた」積極的な攻撃をしかけてきます。そして今度はアントラーズは、逆にカウンター狙いです。カウンターのベースは「才能」。その意味でもアントラーズに歩がある試合展開でした。そして後半41分、ちょっとしたスキをついて、マジーニョが追加点を挙げてしまいます。これで万事休す。東京ガスは、よく頑張りましたが、試合運びなどの経験、選手たちの才能、チーム戦術、そのどれをとってもアントラーズが「実力の差」で決勝に駒を進めたという試合内容でした。

もう一つの準決勝、ジュビロvsフリューゲルスですが、この試合は、テレビで部分的にしか見ることができませんでした。ということで、フリューゲルスが最後の最後に、三浦のFKからの逆転勝ち越しゴールを決めて決勝に進出したことだけをお伝えするだけにとどめておこうと思います。それにしても、「ドゥンガ抜き」のジュビロが、(チャンピオンシップでアントラーズに勝利したこともあったのでしょう)大きく自信を深めたことを感じます。本来彼らがもっていた、しっかりとボールを動かす組織プレーに、より磨きがかかっただけではなく、中盤、そして最終守備ラインでのディフェンスが、本当に確実で安定してきたことを感じるのです。わたしは、試合内容としてはジュビロに軍配をあげようと思います。ただそこはサッカー。そしてトーナメント。最後まであきらめなかったフリューゲルスも、立派な闘いを披露し決勝に進出しました。

これで、天皇杯の決勝は、アントラーズvsフリューゲルスということになりました。この対戦は、常にエキサイティングな内容になります。その意味でも期待大です。私は、例によってラジオ文化放送でこの試合の解説をします。パートナーは、文化放送、長谷川太アナウンサー。「楽しく内容のある解説」にできるかどうか・・・、ご注目あれ。




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