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天皇杯・・ガンバvsレッズ(2-1)・・決勝はラジオ文化放送で・・(1997年12月22日)

結局は、ドラマチックな試合になってしまいました。それでも前半の出来は、その幕切れとは裏腹に、非常に「カッタルイ」ものだったことは、見ていた皆さんもお感じになったことと思います。

前半の「カッタルさ」は、トーナメントにありがちな傾向が出た結果でした。両チームの守備が非常にいいのです。特に、両チームの中盤の守備は特筆モノ。ほとんどフリーな選手が出てきません。だからといって攻撃でのリスクにチャレンジしない両チームの「態度」には納得いきませんでしたが、それでも、「最初は」様子を見よう・・、とにかく失点だけは避けよう・・、というのはトーナメント戦での基本的な態度ですから、仕方のない展開だったのかもしれません。トーナメント戦では、最後の20分が見物・・というのが普通ですからね。

この試合、レッズは「ライン・フォー」で試合に臨みました。センターバックコンビは、ネイハイスと土橋です。これは、マークの「受けわたし」をベースにした最終守備ラインのシステム。そんなに簡単ではありません。それでも、ネイハイスと土橋は、よく「クリエイティブな守備」をこなしていました。それも、「あの」ブッフバルトの遺産なのかもしれません。対するガンバは、スーパーマン、エムボマを出場停止で欠いています。彼らの攻撃が、最初うまく機能しなかった背景には、エムボマを欠いたことで、少し自信を失っていたことがあったのかもしれません。また後半には、守備の重鎮、バブンスキーをも怪我で失ってしまいます。「自信を支える二枚看板」を失ったガンバ。そこらあたりからレッズの攻勢が目立つようになってきました。やっと試合が「動き」始めたのです。どちらかのチームが「アクティブ」になれば、もう一方のチームも刺激されるモノ。ガンバも、看板を失ったとはいえ、鋭いカウンターで応酬します。それは、ガンバの強さがホンモノになってきた証明でもありました。やっと面白いゲームになってきた・・、そう感じていた後半37分、レッズの先制点が生まれました。ガンバ、ペナルティーエリアの手前で「タメ」をつくった福永の右側を、超速でオーバーラップする山田。その前方に、ボールを「置く」ようにパスを出した福永。才能を感じる「タメ」とパスでした。山田は、ニアポストへ鋭いセンタリング。それを岡野が、右足でダイレクトシュート!!とにかく、福永の才能を証明する「タメ」、山田の「リスクチャレンジ(オーバーラップ)」とピンポイントセンタリング、そして岡野の「ゴール前の嗅覚」を象徴する走り込み・・。それらの「エキサイティング要素」が詰め込まれたビューティフル・ゴールでした。

試合の流れからすれば、完全にペースを握っていたレッズが、そのまま押し切ってもおかしくない試合でしたが、そこで「サッカードラマの神様」の登場です。ガンバが、ロスタイムに入ってから同点シュートを決めてしまったのです。それは、クルプニのゴールだったのですが、右サイドをドリブルで駆け上がった小島の、せっぱ詰まったシュートによく反応した「執念ゴール」でした。そして最後は、昨年、オランダ留学から帰国した船越の「Vゴール」です。それは、レッズ守備陣が中央に集中してしまったことで、右サイドにできた「穴」を突かれたゴールでした。これがサッカー。これがトーナメント・・。

ガンバの次の相手は、アビスパを「6-0」と粉砕したリーグNo.1の実力者、アントラーズです。この試合には、エムボマも帰ってきます。面白い試合になること請け合いといったところ。期待しましょうかね。

さて、例によって私は、ラジオ文化放送で、天皇杯決勝の解説をすることになりました。お楽しみに・・と、このコラムを終わらせるのでは尻切れトンボ。ということで、今年10週間続けて、テレビ「スポーツ i(パーフェクTV)」で「J」の試合を解説したときの経験から、そこで感じたことに少し触れたいと思います。

私の解説のコンセプトは、「明るく、内容のある解説」というものです。解説は、「映像」というソフトに「付加価値」をつけ加えなければいけない存在。あるプレーの「背景」を、私なりに解説することで、奥の深いサッカーのバックグラウンドを、より多くの方々に知っていただく・・、そしてそれを通して、サッカーをより面白く観戦していただく・・。それが私のコンセプトです。とにかく、なるべく早く、「すべてのサッカーファンが解説者」という「環境」になることを願っています。それが、本当の意味でのサッカー文化の醸成につながり、必然的に「ホンモノしか残らない」という環境も整備されるに違いありません。それが、今の私の「サッカー活動」の目標です。

ということで、テレビの解説へも進出したわけですが、それまでラジオでしか解説をしていなかったこともあって、最初の頃はとにかく「しゃべり過ぎ」てしまうのです。そこに「映像」があるのだから、状況描写はカットして、もっと深い「内容」へ入っていってもいいのに・・。もちろん回を重ねるごとに「落ちついて」はきましたが、メディアの種類、性格で、「ソフトの内容」もガラッと変わることを実感させられてしまいました。そして、テレビの「メディアとしての強さ」も・・・。

今度はラジオですから、「明るく、内容があり、よくしゃべる湯浅」ということで、面白い番組にしたいと思います。ご支援、よろしく・・・。




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