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素晴らしく積極的なサッカーは、2-1で韓国に軍配(1998年4月1日)

 今回の韓国戦は、事情があってテレビ観戦することになってしまいました。残念ですが仕方がありません。残念・・。それにしても韓国のテレビ映像は「寄りすぎ」。ホンモノのドラマである「ボールのないところでのプレー」を詳しく見ることができなかったことは、ホント、残念・・。

 試合は、両チームともに、攻守にわたって素晴らしく積極的なプレーを展開するエキサイティングな内容になりました。フィールド上の22人全員が、攻守にわたってリスクにチャレンジするアクティブサッカーを展開したのです。見ている方にとっては非常に面白い試合内容です。

 要は、両チームともに攻守にわたって「仕掛け合った」ということなのですが、私にとっては、そんなアクティブなサッカーが「進歩」のベースだということを再認識させられた試合でもありました。とはいっても、個人的な能力では、まだ韓国に一日の長があります。特に、ソ・ジョンウォン、チェ・ヨンス、ファン・ソンホンなど、韓国トップ選手たちの能力には秀でたものを感じます。そして彼等を中心に、何度か決定的なチャンスを作られてしまいます。特に、ソ・ジョンウォン。彼の爆発的なダッシュ力と、ドリブル突破能力。たしかにそれは、世界でも通用するレベルにあります。

 それでも日本代表は、得意の「組織プレー」で対抗します。立ち上がりは押し込まれてしまうのですが、その最初の時間帯に魅せた、ダイレクトパスを何本も通して相手ゴール前まで迫ってしまったカウンター攻撃は、「見事!」としか言いようがありませんでした。ただいかんせん、個人的な勝負能力が問われる「ラスト・バトル」では、どうしても限界を感じてしまうのです。あ〜〜、釜本がいればな・・。無い物ねだりの湯浅です。

 中盤での攻防は互角。それでも、前にスペースがあれば、どんどんと「スペースをつなぐ超速ドリブル」で上がってくる韓国に対し、日本代表は、ほとんどのケースで「パスのみ」。ということで、中盤の展開にあまり変化がつきません。唯一、その変化を演出できていたのが中田でした。彼のプレーには、自信だけではなく、中盤の王様としての「風格」さえ備わってきたことを感じます。

 ただ、井原が負傷退場してからは、ラインフォーの最終守備ラインが少し不安定になります。交代出場した小村の出来は悪くはなかったと思うのですが、急造の秋田との「センターバックコンビネーション」が理想的に機能したとはいえないと感じたのです(テレビ観戦だったもので、これ以上は言及できない。残念・・)。具体的には、最終守備ライン中央での「マークの受けわたし」に不安が残ったということなのですが、それでも、急造にしては、よくやったという見方もできます。

 守備については、山口、名波、中田、そして北沢の中盤カルテットが大車輪の活躍。特に山口と名波。井原が抜けてからは、この二人が、最終守備ラインの前の「リベロ」として効果的に機能していたと思います。リベロですから、皆さんがごらんになったとおり、両人とも、攻撃にも積極的に絡み、そして効果的なプレーを展開します。もちろん、中田、北沢も、「ボールのないところ」も含めて、素晴らしくアクティブな守備を展開していました。それが後半に入って、20分までの、ダイナミックで危険な攻撃につながったのです。そしてプレーの流れの中での、中山の同点ゴール。これを、「ゴール前の嗅覚」と表現して良いモノかどうか・・。ともあれ、「そこにいた」ということは評価できます。ワールドカップ本大会での活躍に期待がふくらんだ時間帯ではありました。

 もう一人、相馬。とにかく彼の積極的で「効果的」なプレーには拍手です。彼は、日本を代表するサイドバックとして、まだまだ「伸びシロ」のある大きな可能性、キャパシティーを持っていることを証明しました。堅実でアクティブな守備をベースに、攻撃となったら、サイドからのえぐりだけではなく、そこにスペースがないと見るや、今度はどんどんと中へ切れ込んで勝負にトライするのです。名波という「あ・うん」のカバーリング・パートナーがいるとはいえ、とにかく彼のリスクチャレンジの姿勢は、チーム全体に活力と勇気を与えたに違いありません。

 17歳で代表デビューした市川ですが、そのサイドにソ・ジョンウォンがいたことを考えれば、総合的には合格点だとすることができそうです。たしかにまだ守備でのマークの判断(受けわたし判断)、ボールのないところでの守備(相手決定的なフリーランニングに対するマーク)などに甘さは見られますが、積極的なオーバーラップからの勝負強さも見せるなど、可能性の大きさも証明しました。

 さて、中盤のダイナモ、北沢と、ボールに絡む積極性が見えてきた柳沢にかわって、小野と岡野が入った後半20分過ぎからの日本代表です。はっきりいって、それまでのダイナミックな攻守を「100」とすれば、そこからの出来は「60」といったところ。もちろん、同点にされた韓国が、再び積極的に前へきたこともありますが、それ以上に、日本の「ペース」の低下が目立ってしまいました。

 その原因の一端は、小野の、攻守にわたった積極性に欠けるプレーにもありました。彼についての詳しいコメントは、今週金曜日アップデート予定の「2002 Japan」で書きますので、そちらをお読みください。

 日本の失点ですが、その原因は、相馬がいない(ケガ)ことに気づかず、プレーを続行してしまったことにもありました。チョット問題です。そんな小さなミスが、ワールドカップ本大会では命取りになってしまいます。

 それでも、とにかく一度、本大会での、世界との「ホンモノの勝負」を経験すれば、「次のステップ」がより明確に見えてくるハズです。今回の韓国戦では、(敵地であるにもかかわらず)互角の(イヤ、それ以上の)チカラがあることを証明した日本代表。ワールドカップ最終予選という「肉を切らせて骨を断つ闘い」を勝ち抜いたことから得た「自信」の大きさを「事後的に」証明した試合ではありました。




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