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加茂ニッポン、ブラジル代表に敗れる(0-3)(1997年8月14日)

「あの」ブラジル代表相手に、決定的チャンスも含めて、二桁のシュートを放った・・・とはいっても、全体的な出来は満足できるものではありません。ブラジルは強い。そんな、自信に満ちあふれてプレーするブラジルに比べ、日本チームの立ち上がりは自信なげ。プレーが、消極的で受け身でした。

まず守備について。世界チャンピオンのブラジルを相手にしても、完全に「守備ラインが崩される」場面があまりないなど、井原、秋田、斉藤のトリオで形成する中央の最終守備ラインはそこそこ安定していました。とはいっても、守備全体としては、ロングシュートやセンタリングのチャンスなど、決定的な場面でのマークの甘さも目立っていました。あれほどのチームですから、正確なロングシュートやセンタリングは当たり前。フリーでやらせたら、それこそ「決定的なシュート場面」と同じように危険です。また、相手ゴールに近い「高い位置」でのボール奪取にも問題がありました。ボールへの「寄せ」が甘いために、「次のインターセプト」「次のアタック」が、どうしても後手にまわってしまうのです。もちろん、ブラジルチームの巧さの証明という考え方もありますが、ボールを持つ相手を「追い込み(チェイス)」、パスを出させ、そして「次を狙う」という「意図のあるディフェンス」が、うまく機能しなかったことは課題として残りました。また、相手の「タテのポジションチェンジ」に対する守備にも課題があります。典型的な例は、後半に見せた、ロベルト・カルロスのオーバーラップに誰もついていかず、結局は、決定的スペースに走り込まれてフリーでシュートを打たれてしまった場面です(川口のナイスセーブ!)。タテのポジションチェンジ(オーバーラップ)に対する確実な「受け渡しマーク」は難しいモノ。ですから、一番近くにいる選手が、オーバーラップする選手についていくのが最も確実だというわけです。韓国戦では、右サイドの攻撃選手、コ・ジョンウンが、ロベルト・カルロスをしっかりとマークしていました。コ・ジョンウンは、最前線から、自分の最終守備ラインを「追い越し」てでも、『最後まで』カルロスについて戻っていたのです。それが、特にワールドカップ予選という、「肉を切らせて骨を断つ」、緊張レベルが最高に高まる闘いの場においては、もっとも「確実」な守備だということです。ここでいいたいのは、いくら「受け渡しマンマーク守備」とはいっても、最後の瞬間には「確実な、タイト・マンマーク」に移行するわけで、そのタイミングがどこか・・、また「タテのポジションチェンジ」をするプレーヤーのマークをどうするのか・・ということが明確ではない場合、大きな問題が生じてしまうということです。

次に攻撃についてですが、まだまだ「強い相手」と対戦したときの「我を忘れた積極性(無計画いう意味ではありません)」に課題があると感じました。サッカーは、ボールのないところで勝負が決まってしまいます。ですから、パスを受けるプレーヤーの動き(私はフリーランニングと呼びます)が、成功のための決定的なファクターになってきます。そのために、(攻守の人数のバランスをとった上で・・ブラジル相手では、どうしても後ろに残る人数は多め?!)出来る限り多くの選手が攻撃に参加しなければなりません。それが、特に前半はカゲをひそめてしまっていたのです(足が止まってしまったという表現を使う場合もあります)。ボールを持つ選手が孤立してしまう場面が多かったのですから、クリエイティブな攻めを展開することなど望むべくもありません。止まっている選手の足元へパスを出しても、そこは完全に「狙われて」いますからね。もっと中盤で、しっかりとボールを動かし(ボール周辺の選手たちのパスを受ける動き=フリーランニングが基本)、相手守備に「ターゲット」を絞らせないような、すばやいボール回しをベースにした攻めを展開しなければならないのです。韓国チームは、(先日の日韓戦と同様)とにかく、全員が積極的に攻撃に参加していました(しようとしていた)。彼らは、どんどんとオーバーラップしてきます。前線の選手までも追い抜いてしまうような攻め上がりには勇気がいります。途中で「変なカタチ」でパスをカットされようものなら、そのまま、相手の「決定的なカウンター」になってしまうのですからネ。それでも韓国選手たちは、そんな心配などどこ吹く風、本当に「我を忘れた」かのような積極性を見せます。そして、「あの」ブラジル相手に、中盤でクルクルとボールを回し、シュートチャンスを作り出してしまうのです。いくらブラジルのコンディションが悪かったとはいえ、あの積極性は「驚き」の一言。積極的に攻めることで、相手を「悪魔のサイクル」に落とし込めてしまう・・、そんなサッカーが「本当の勝負の場」でも出来るのか・・。私には、「彼らだったらやってしまうだろうな・・」そんな印象を持ちました。ブラジル、ザガロ監督は「韓国は身体面が強い」と話していました。ただ私は、それよりも「心理・精神面の強さ」の方が手強いと感じています。先日の日韓戦に関するコラムでも書きましたが(「2002 Japan」)、押し込んではいるものの、あまり決定的なチャンスができない日本に対し、数は少ないけれども、チャンスとなったら「我を忘れた積極性」で攻め上がってくる韓国。迫力十分でした。ワールドカップ予選での最大のライバルは韓国(もちろん、ウズベキスタン、カザフスタンも強敵です)。彼らに打ち勝つためには、とにかく「精神面」での充実がもっとも重要だと感じるのは私だけではないに違いありません。




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