トピックス


フィオレンチーナ対ペルージャ(2-2)・・どんどんとプレーの幅を広げる中田(1998年12月20日)

海外出張から帰国し、久しぶりに中田のゲームを見ました。

 この試合での中田選手・・・いや、素晴らしい出来でした。

 以前、中田について「シンプルプレーの天才」と書いたことがあります。それは、不用意にボールをこねくりまわしたりせず、チームの中心ステーションとして、どんどんと効果的に(ボールを)動かしてしまう彼のプレーを表現したものでした。

 たしかに今でも基本的なプレースタイルは変わっていませんが、そんなベースに、中盤での「スペースをつなぐドリブル」や相手を抜き去ってしまう「勝負のドリブル」、タイミングが良く自信に溢れる「タメ」、ゴール前の決定的なスペースへのタイミング良い入り込み(これが『ゴール嗅覚』と呼ばれるモノの本質です)、そして思い切りの良いシュート(この試合におけるロスタイムでの、落ち着いた同点PKゴールは、『世界一流の同僚』たちも舌を巻いたことでしょう)などの、世界一流プレイヤーに欠かせない「塩とコショー」が加わりつつあります(それらのプレーのレベルが超速の進歩を遂げている!)。

 サッカープレイヤーの基本的な要素には、身体的、技術的、戦術的、心理・精神的(インテリジェンス・経験レベルも含む)な能力、そしてアンロジカルなもの(要はツキ)があります。中田は、そのほとんど全てでかなりのレベルに達しているということです。

 中田は、日本サッカーでは例外的な存在なのでしょうか・・。私はそうは思いたくありませんが、現状の「総合的パフォーマンス」では完全に他の日本人プロプレイヤーたちを圧倒していることだけは確かなことのようです。それに、彼が積んでいる「ホンモノの経験」という要素も加わりますから、「差」はどんどんと広がっているのかもしれません。

 彼に続く才能には、小野、中村、伊東(輝)などがいます。

 特に小野。今回のアジア大会の出来は散々でしたが、才能レベルでは中田にひけを取りません。彼には、いまブチ当たっている壁を乗り越え、早く、一回りも二回りも大きく脱皮してもらいたいものです。

 現在の彼のプレーにおける最大の問題点は、明らかに「心理・精神的」な部分にあります。だからコーチたちは、彼に対し、もっともっと積極的に『チームの中心』になるような姿勢を要求し続けなければなりません。

 パスを受け、最初のタッチではシンプルにボールを動かす(シンプルパスを回す)。ただそこからの展開でも、自分にボールを集めさせるような積極的な姿勢をもっと前面に押し出させるべきなのです。どんどんと動き回り、自分にボールを集めるよう要求する。ワンツーで抜け出したり、たまには中盤でのリスキーなドリブル勝負に挑んだり、相手を意図的に引きつける「タメ」を演出し、そこから決定的なスルーパスを通す。そしてどんどんとシュートにもトライする。そんな「チャレンジ・プレー」を、もっともっと要求すべきなのです。

 積極性と自信。それは心理的に同列にあり互いに影響を与え合います。積極的に(リスクチャレンジ)プレーすれば、いくら失敗しても、結局は強い自信のベースになります(自信がなければ積極的になれない?!)。逆に消極的で受け身のプレーを繰り返していたら、絶対に「世界に通じる自信」につながることはありません。

 中田の自信にあふれたプレーを見ていて、小野の「停滞」が少し心配になった湯浅でした。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]