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残念だったけれど頑張ったネ・・アンダー20日本代表(その5)・・(1999年4月25日)

この試合、出場停止のキャプテン、小野の代わりに、大会初出場の氏家(大宮アルディージャ)を使ってきました。要は、小野の代わりに本山を上げ、左サイドバックに氏家を入れるということです。基本的には、ウイニングチーム・ネバー・チェンジという原則を維持しています。さてこれが、どのような結果になるか・・

 対するスペインは、組織と個人が高い次元でバランスした、モダンサッカーを展開するチーム。間違いなく今大会のベストチームです。相手にとって不足なし。

 立ち上がりのスペインですが、やはりこれまでのラテン系のチームとは違い、しっかりとした組織プレーからの、勝負所でのドリブル勝負と、ひと味も、ふた味も違います。これは強いチーム。たしかに相手にとって不足なし!!

 と、思っていたら、フリーキックからの失点。南のオーバーステップを取られた、ゴール正面での間接フリーキックでしたが、まず軽くボールを動かしたスペインに対し、日本チームは完全に「カベ」を崩してしまいます。そしてバルケロの、これも定石通りの「グラウンダー(地をはうような)」のシュート。GKの南は、まったくボールが見えなかった(見えていたとしても反応できなかった?!)に違いありません。

 ここからの日本代表は、本山がチャンスを掴むなど(明らかにスペインのファール・・PK!!)、ちょっとは押し返しましたが、スペインとは、(残念ながら)チャンスの「質」が違います。彼らの、「縦横のポジションチェンジ」を多用した素早いパス回し(組織プレー)からのラストスルーパス・トライ、勝負のロングパス・トライ、ドリブル勝負トライの迫力はレベルを超えているのです。

 ボランチの遠藤も大忙しといったところ。それはそうです。どんどんと、後方からフリーな選手が上がってきてしまうのですからネ。彼らの、そんな「ローテーションサッカー」に対抗するためには、少し攻撃を犠牲にしても、後方からタテに抜け出ていく選手を、前の選手が厳しくマークし続けなければならないのですが、日本の中盤選手の足は止まり気味です。

 この時点での運動量は、完全にスペインが凌駕してしまっています。スペインの中盤でのボールの動き、選手のポジションチェンジがあまりにもアクティブなことで、日本選手たちの心理状態が完全に「受け身」になってしまっているのです。

 これでは、中盤でのパスカットや効果的なプレスなど望むべくもない?! チカラが上のチームと勝負をするためには、少なくとも運動量だけは互角以上でなければならないのに・・。相手とのチカラの差を実感させられ、物理的、心理・精神的に押し込まれ、オレが・・という、それまでの積極的な姿勢を完全に見失ってしまったようです。

 そしてスペインの追加点を許してしまいます。

 これはワザありのゴール。中盤で少しタメたスペインの中盤選手。その瞬間、日本の最終守備ラインに「平行」に走り、急にタテへダッシュしたパブロ。「浅い、日本の最終守備ライン」の弱点(横に動く選手に対する受け渡しマーク)を本当にうまくついた、決定的なフリーランニング(タテの決定的なスペースへの飛び出し)と、ピッタシカンカンの「ラスト・スルーパス」でした。

 25分を過ぎた頃から、やっと日本にも本来の「吹っ切れた自信」が戻ってきたように感じます。「もう何も失うものなんてないゾ! よしヤッタる!」ってな具合でしょうか。もちろんこれには、最初飛ばしていたスペインの、全体的な運動量が落ちてきたこともあります。

 ただ再びスペインのパブロが、33分に、スペインの三点目を入れてしまいます。

 日本の最終守備ラインのウラを狙った長いタテパス。それが本当にピッタリのタイミングで見事に通ってしまったのです(よく日本のシステムを研究している!)。そして、折り返しからのこぼれ球を決められたわけですが、それにしても、あのロングパスに、全力でウラスペースに走り込んだスペイン選手(誰だったか・・)。その「イメージ・シンクロレベル」は素晴らしいとしかいいようがありません。

 ここら辺りから日本チームは、再び足が止まってしまいます。中盤守備でも、相手のパスのカットを狙っている選手は皆無。また後方からのチェイシングもなし・・という状態。心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでしまうには早すぎるゾ!!

 それにしても、最初から強烈なプレスサッカーで日本を押し込み、効果的なタイミングでゴールまで挙げてしまったスペイン。中盤での素早いパス回しだけではなく、効果的にロングパスも多用してくる。サスガとしかいいようがありません。前半の日本は、完璧にスペインのアクティブサッカーに凌駕されていました。

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 後半、稲本が、氏家に代わって登場です。稲本にとっては名誉挽回のチャンス。非常にアクティブな立ち上がりです。彼が、中盤のリーダーになれれば・・。

 とにかく若き日本代表にとっては内容が重要です。自分自身の将来のために、ホンモノを体感し、ホンモノの経験として蓄積するために・・。もし消極的なプレーを続けたら、何も残らないのです。

 ただ後半早々の7分、四点目をたたき込まれてしまいます。まず、最前線でフリーになっていたパブロに、ショートのスルーパス(タテパス)が通ります。フリーですから、余裕をもってボールをキープし、後方から、これまたフリーで上がってきたガブリへ横パス。それを簡単に決められてしまったのです。

 日本のプレーは「前へ!前へ!」。そしてその間隙を、これまた本当に効果的に、効率的に攻め上がってくるスペイン。その後方からの上がりに付いて戻れない日本。

 それ以降は、両トップを入れかえた日本が押し返しますが、それも、勝負を決めてしまったスペインの、中盤でのアクティブサッカーが消えてしまったから。ホンモノの勝負は、後半の四点目が入ったところで終わっていたのでしょう。

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 この試合では、完璧にスペインに力負けしてしまったアンダー20日本代表。それでも彼らが、「世界の」準優勝チームであることには変わりありません。

 ある方が、「この大会を世界はどのように評価しているのか・・たぶん勝つための大会ではないのでは・・」などと言っていました。

 世界は、この大会を高く評価しています。私はそのことを良く知っています(何人かの日本選手は、すでにヨーロッパトップクラブから注目されてもいます)。たしかに参加した何カ国かは(その中にはイングランドなどのトップサッカーネーションも含まれています)、自国のトップリーグとの絡みで、ベストメンバーを送り込むことはできませんでした。それでもこの大会が、『勝負をかけた』世界大会であることは事実なのです。

 そして若き日本代表は、内容のあるサッカーで、準優勝という栄冠を勝ち取りました。

 最後の最後で「ホンモノの世界との差」を実感させられたことも含めて、それは、それは、素晴らしい成果ではありました。おめでとう! そして、ありがとう! 我らが若武者たち・・




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