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やったネ・・アンダー20日本代表(その3)・・(1999年4月19日)

またまた・・イヤ、素晴らしい・・。優勝候補、アルゼンチンを「4-1」と撃破したメキシコに対し、若き日本代表の強者たちは『完勝』という内容でベストフォーに駒を進めました。

 身体的、技術的には互角。ただ戦術的、心理・精神的には、メキシコを完全に凌駕していました。

 彼らにはホンモノの自信が芽生えているように感じます(イヤ、世界に抗しても揺るがない確固たるワールドクラスの自信といったほうが正確?!)。ここで前回のコラムの内容をもう一度載せます。

 『また、彼らのレベルを超えた自信は、トルシエ監督の「心理マネージメント」の成果だともいえそうです。「サッカークリック」に掲載されている、大住氏のトルシエ監督インタビュー記事で、彼が「日本選手の技術レベルは、世界トップに匹敵する。あとは、そのことに確信し、自信をもってプレーすれば、確実に世界とも対等に勝負できる・・」と言っていたのですが、世界を知る彼の言葉に、選手達の「確信レベル」が高揚しないはずはありません。』

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 ウイニングチーム・ネバーチェンジということがよく言われます。「イメージ・シンクロ」「心理的なハーモニー」「ポジションバランス・イメージ」などなどの意味も含めて、勝っているチームは変えるべきではない・・という意味です。トルシエ監督は、その原則通り、前の試合で稲本を途中交代させたにもかかわらず、この試合も、不動の先発メンバーで臨みます。

 もちろんポルトガル戦で交代出場した稲本の調子が本来のものではなかったこともあったのですが、それにしても、選手たちに対する「心理マネージメント」も含め、「白い魔術師(アフリカでは、トルシエはそう呼ばれていた・・)」の面目躍如といったところではあります。

 日本の先制ゴール。前半3分の、目の覚めるような鮮やかなゴールでした。それも、小笠原からバックパスを受けた右サイドバック酒井から、左サイドバックの本山へ(ファーポスト側へ)送られたセンタリングからの、ここしかないという、素晴らしくコースがコントロールされたヘディングシュート。それは、サイドバック同士のコンビネーションによるゴール!!

 このゴールシーンですが、酒井がセンタリングを上げる体勢に入ったとき、相手の最終守備ラインがチョット上げます。オフサイドトラップだったのでしょう。ただ日本の最前線、高原と永井は、それに引っかからず彼らと一緒に「下がり」ます。これが良かった!

 それは、自らゴール前にスペースをつくってしまい、そこを逆サイドにいた本山(二列目の選手)に、まんまと使われてしまったというゴールでした。それにしても鮮やかなスーパーゴールではありました。

 日本代表の両サイドバックは、本当に攻守にわたって大活躍です。トルシエ監督の「フラットスリー」システムでは、両サイドバックの自由な(もちろん忠実さがプライオリティー!!)動きが、攻守の生命線のようにも感じられてきたものです。もちろんそれには、ボランチの遠藤、そして積極的に守備参加する小笠原、小野との「タテのポジションチェンジ」がスムーズに機能していることを忘れるわけにはいきません。それは、彼らの意識の高の証明でもあります。

 そんなことを考えていた前半23分。日本が、これまた鮮やかな追加ゴールを挙げてしまいます。

 何度かの怒濤の攻撃の後、右サイドでボールを持った小笠原が、こねくり回さない「シンプルなタイミング」でセンタリング。それを、ピッタリのタイミングで走り込んでいた小野が、冷静にヘッドでゴール右隅に決めたのです。もちろん小笠原は、パスを受けた時点から、走り込む小野が見えていたに違いありません。それは、「小野の動きが呼び込んだ」ピンポイントセンタリングとも表現できるものでした。

 先制ゴール、そしてこの小野のゴール。これは、メキシコチームの、上がってくる「二列目の選手」に対するマークミスが原因でした。

 両ゴールともに、メキシコの右サイド(日本の左サイド)のディフェンダーが「ボールウォッチャー」になってしまい、最初は本山を、そして次には小野をフリーにしてしまったのです。そのメキシコのディフェンダー(中盤選手?!)が同一人物だったかどうかは分かりませんが、そんな「決定的な瞬間における集中力」にも、日本とのレベルの差を感じた湯浅でした。

 いつもだったら、「決定的な集中力が欠けている・・」という批評は、日本に対するものがほとんどなのに・・。頼もしい限りではありませんか・・

 それにしても、今回のユース日本代表チームは、全員が、攻守における「次のプレー」に対して、常に「同じイメージ」を共有していると感じます。イメージ・シンクロ(同期・同調)レベルが高いということです。もちろんそれも、彼らの「技術・戦術レベル」の高さの証明でもあるわけですが、そのことにつていも、トルシエ監督の功績を認めなければなりません。

 全員が、次のプレーに対し「同じイメージ」を抱けることは、強く、魅力的なプレーにとって決定的な要素になります。そしてそのイメージを作り出すのが、トレーニングにおけるコーチのウデというわけです。

 守備にしても、最終守備ラインの素晴らしいコントロール(微調整)だけではなく、中盤における自信あふれる守備もスーパー。味方とのポジションバランスを意識することをスタートラインに、勝負所では、素早く、クリエイティブに「バランスをブレーク」して効果的な勝負を仕掛けていきます。無闇にプレスをかけていくのではなく、勝負所をわきまえて(もちろんそのベースはクリエイティブな『読み能力』)守備の仕掛けを展開していく。それが素晴らしく機能していたのです。

 もちろんそれには、メキシコの中盤でのボールの動きが、傍目にも明らかに「カッタル」かったことも理由として挙げなければなりません。

 メキシコは、中盤でのドリブル(キープ)が多く、時間をかけすぎです(またショート・ショート・ロングというリズムもなく、ショートパスを多用しすぎ)。要はボールをこねくり回しすぎというわけですが、それでは、簡単に日本チームが「次」を読んでしまうのも当然といったところ。もしかするとメキシコは、日本を甘く見ていたのかもしれません。

 結果として、メキシコの攻めでは、中盤や最前線で「フリーでパス受ける選手(つまり攻撃の『起点』になる選手)」がほとんど出てきませんでした。それは、攻撃における「間接的」な目標なのですが、そのことが、スペースをうまく活用する・・ということの本質的な意味なのです。

 トルシエ監督が標榜するサッカーで勝ち進む日本代表。彼らの、自分たちがやっている(やろうとしている)サッカーに対する「確信・自信レベル」は天井知らずといったところでしょう。

 若き日本代表は、チームとして、また個人としても、大会が始まってからも大きく伸びていると感じます。大会期間中に成長を遂げる・・。それは、技術・戦術的なマネージメントだけではなく、心理・精神的なマネージメントも含め、コーチングスタッフの直接的成果でもあるのです。

 さて次は、ブラジルを破ったウルグアイ。「やったネ・・アンダー20日本代表(その4)」まで書きたいですネ・・




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