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トルシエ監督と周辺ノイズについての雑感・・(1999年6月25日)

昨日の夜中に「2002 Club」の原稿をアップしたし、今日は(6月25日)ミーティングもないので、久しぶりにゆっくりとした気分・・ということで、例によって原宿のキャフェで、(明日からオリンピック日本ラウンドが始まることもありますから・・)リラックスしながら新聞に目を通していました。

 すると、そこに踊っていた見出しは、ほとんどが「反トルシエ」のオンパレード。サミアコーチや山本コーチが、トルシエのやり方とは違う方向性で練習をやっている・・そして選手たちもイキイキとトレーニングに励んでいる・・(サミアコーチ、反トルシエ流練習!!なんて見出しが踊っていたりして)、「鬼の居ぬ間に?!日本代表イキイキ」なんて見出しもありました。いやいや、これはホントに、トルシエとメディアとの関係はかなり重傷で、もう修復不可能なんだろうか・・なんてコトを感じてしまいましたヨ。

 「2002 Club」のコラムでも書きましたが、たしかにトルシエの「対外的な言動」には、「事前の言い訳・・?!」「成功したら全て自分の功績・・?!」「記者会見での一方的な論評・・?!」などなど、かなり問題あり・・ということなのでしょうが、それでも、グラウンド上での彼の「お仕事」は評価に値することも事実です。

 今回の、「いまの日本代表にとっては最後のチャンス・・」発言にしても、選手たちの覚醒と緊張感の高揚を意図した『挑発モティベーション』なんでしょうし、それをやること自体にも「世界とのギリギリの勝負を勝ち抜く」ために必要な「クオリティー」を感じます。それでも、その後のアフターケアーについては分かりませんがネ・・。

 「瞬間的な怒りや憎しみ」などという、「人間心理のダークサイド」を揺り動かす心理マネージメント・テクニックを駆使した「チーム内での緊張感の演出」には、プロコーチとしての高い能力を感じている湯浅なのです。それでも、(もう何度も書きましたが)そんな「ギリギリの緊張感」と「自由でリラックスした雰囲気」という「相反する心理環境」を、チーム内に同時に演出することも重要です。

 (心理ダークサイドの)挑発や刺激と、その後の効果的なアフターケアー。そんな「高低差のある」チームマネージメント、つまり「バランス感覚あふれるモティベーション」が重要ということなのですが、その視点で、トルシエ監督には問題があるんでしょうか・・。

 もちろんそこのところの事実関係など、「外野」に分かるハズがありません。ですから私は、グラウンド上のお仕事(トレーニング、合宿・共同生活、試合での采配など)と、グラウンド以外の「お仕事」の集大成としての「勝負がかかったゲームの内容」のみをベースに評価しているのですが・・。

 また、そんな「現場でのチームマネージメント」は別にして、トルシエ氏は、協会やメディアとのおつきあいが下手・・なんでしょうネ。周りのメディア関係者のハナシを総合するとそういうことになりそうです。もちろんそれもプロコーチの「総合能力」の一部ですから、いくらグラウンド上で優れたパフォーマンスを見せていたとしても、総合的な評価では・・

 サッカー的なコーチング能力は当然として、それ以外の、「心理ダークサイド・モティベーション能力(瞬間的に憎まれ、恨まれることに顔色を変えずに耐えられる能力?!)」、「その後の、(ダークサイド刺激とは極端にギャップのある)心理アフターケアー能力」、「協会(組織マネージメント)との良好な関係を維持するビジネス能力」、「メディアとの良好な関係を維持する対外マネージメント能力」、そして誰にでも『最後には』認められ、レスペクトされる『人間性』・・

 そんな、プロビジネスにとって必要な全ての「(人間性も含む)能力」を併せ持つプロコーチ。私が知る限りでは、一人も・・。誰しもどこかに問題を抱えているわけですから、優れたプロコーチは、それを補える「他の人のチカラ」を受け入れるだけのキャパシティー(度量)を備えていなければならない・・ということなのです。それらの問題の本質も、(仕事をする場所にかかわる=自分自身にはよく分かり難い)文化的、社会的、歴史的な環境(背景)に大きく左右されるものですからネ・・

 まあ、これからのトルシエ氏、協会、メディアの動向(言動)に注目・・ということですか・・




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