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オリンピック予選・・日本代表vsマレーシア代表(4-0)(1999年6月16日)

この予選グループ最強の相手と予想されるマレーシアとの一戦。トルシエ監督が送り出した先発メンバーは、彼が考えるベストメンバーなのでしょうか。そこには小野の名前はありません。小野のコンディションが悪い?! 南米選手権へ行くかも知れない小野なしの状況を試した?! 小野と中村を同時に中盤にセットしたときの機能不全?! さて・・

 第一戦の香港戦を引き分けてしまったマレーシアは、本気でこの一次予選を勝ち抜くつもり。立ち上がりから、彼らの意気込みが伝わってきます。それまでの対戦相手と比べれば、相手選手たちの基本的なチカラはかなり上。そんなマレーシアが、中盤で激しいプレッシャーを掛けてくるだけではなく(特にツートップとチャンスメーカー中村に対するチェックが厳しい)、ボールがないところでのマークにも忠実・堅実。これでは、中盤でのボールの動きがままならないだけではなく、フリーでウラに走り込める(パスを受ける決定的なフリーランニング)日本選手が皆無というのもうなづける・・

 そしてマレーシアは、ココゾ!のカウンター攻撃を仕掛けてきます。ほとんどは、日本が跳ね返してしまうのですが、それでも何度も仕掛け続けていれば・・

 前半は、日本が押し気味だとはいえ、全体的な(戦術的な)印象はまったくの膠着状態。チャンスメーカーの中村も、うまく機能することができません。フィリピン、ネパールと、比較的「楽な」試合をしてきたことで、また暑さからの蓄積疲労からか、チームの総体的な「運動量とプレーのダイナミズム」が不足している?!

 もう一つ、先制ゴールを挙げた稲本の交代について。(テレビ観戦なものでボール周辺のプレーを確認できませんからはっきりとしたことは分かりませんが・・)たぶんそれは、身体的な問題点、戦術的な問題点など、総合的な判断だったのでしょう(試合後のインタビューも通訳される瞬間に音声が切り替わってしまった!!)。

 相手キーパーソンのマークが甘い・・?! ボールをもったときのプレーが遅い(ちょっとこねくり回し過ぎ)・・?! ケガが癒えているはずの稲本ですが、まだ「物理的・感覚的な本調子」までは時間がかかりそう・・ということなんでしょうかネ。

 それにしても、(ナイジェリアでもあった)『中途半端な時間での交代』。こう何度も続いた場合、稲本の「心理的な状態」に悪影響がおよばなければいいのですが・・。そこでは、コーチングスタッフの「アフターケア能力」が問われます。

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 後半、目ただず仕舞いの中村に代わって小野が登場。ただその交代とは関係なく、開始直後、柳沢のスーパーな突破からの戻り気味ラストパスを、本山が、ズバッ!! この追加ゴールだけではなく、その後のPKも柳沢のモノ。彼はまだ得点はありませんが(前半最後の時間帯、また後半の決定的なチャンスを決められなかったのは頂けないとはいえ・・)、第一戦の対フィリピンでもそうだったように、『彼がいるから出来たチャンス』が多いという「玄人好み」の目立ち方です。

 柳沢の「玄人好みプレー」のコア、それはもちろん「ボールがないところでのプレー(フリーランニング=パスを受ける動き)」。「動き出しのタイミング」などという表現もありますが、彼のそんな「目立たない」プレーに本当に磨きが掛かったという印象を受けます(だから彼のポストプレーも光る!!)。

 やっぱりサッカーは、「ボールがないところで勝負が決まる」んですヨ。そのメカニズムをしっかりと理解する柳沢。彼の今後に対する期待が、これまでにも増して増殖し続けます。

 さて試合ですが、後半出場の小野も、三点目が決まるまではあまり目立った活躍ができません。これは、日本の出来が悪いというよりも、最初に書いたとおり、そこそこの高い能力を備えているマレーシアが、(特に日本のキープレーヤーに対する)忠実・堅実・ダイナミックな守備をベースに、本当に「戦術的に首尾一貫した」サッカーを展開したからです。

 そんなこともあり、日本チームでは、中村や小野といった「チャンスメーカー(スター)」よりも、両サイドの本山、酒井、そしてボランチの明神の活躍が目立つ、目立つ。特に明神。彼の攻守にわたる献身的でクリエイティブなプレーは確実に「MVP」もの。本当のゲームメーカーはボランチであるべき・・という世界共通の常識を再認識した湯浅でした。

 それにしても、稲本、中村、そして小野という「中盤(攻撃)で中心的な機能を果たさなければならない選手」たち。マレーシアという、実力的にも「ホンモノ勝負にトライする意義ある相手」との対戦でベストパフオーマンスを発揮できない「中心選手」・・。最終予選というホンモノ勝負の「肉を切らせて骨を断つゲーム」では彼らがチームを引っ張っていかなければならないのに・・。

 たしかに、自分たちがハードマークされているということを逆手にとって「周り」の明神、本山、酒井などをうまく使ったという表現ができないこともありません。それでも、ホンモノの「中心選手」は、どんな状況でも最後には「決定的な仕事をする」もの。その意味で、この試合での彼らのパフォーマンスには不満がつのります。

 これで二日後の香港を破れば、最終予選への進出は確実といってもいいでしょう。そうなれば、小野や柳沢も、ホンモノの「世界勝負の経験」を積むことができるようになるかもしれません(南米選手権へ行ければのハナシですがネ・・)。

 彼らのような若い才能は、とにかく何度も、レベルの高い「ホンモノ勝負」を経験することが「次」の大きなステップになるものです。世界の「技術・戦術能力・運動量・スピード・心理パワー・精神パワー」を体感し、刺激されることで、自分たちに足りない部分を見つめ直し、それが「次につながるモティベーション」になるものなのです。




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