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FC東京vsFマリノス(0−2)・・いや〜、(見方によっちゃ)面白い試合でした・・(1999年7月24日)

第一戦のシュート数は、マリノスの「22本」に対し、FC東京はたったの「8本」。それだけを見ても、総合力の違いが分かろうというものですが、そこはサッカー、第一戦ではFC東京のゲーム戦術が、魔法のようにうまくツボにはまったということなのでしょう。FC東京の「堅実・忠実に守ってカウンター」というゲーム戦術が・・

 ところは江戸川競技場。私も、読売サッカークラブ時代に何度か試合をしたことがあります。懐かしい・・。もちろん当時の雰囲気は、レベルを超えた盛り上がりを見せるこの試合とは比べものになりませんがネ。今日は、もう12時にはダフ屋の「ホクホク商売」も終わってしまったということらしいんです。

 二部とはいいながらそこは同じプロ。それも相手は強豪のマリノスですから、FC東京の「気合い」は、ファンの盛り上がりも含め、底知らずといったところ。彼らの「意地」と「チャレンジ精神」が、どこまでピッチ上の「集中力(特に守備での考え続ける姿勢・・)」に反映されるのか。そこもこの試合の注目点です。

 マリノスは、より攻撃的な「フォーバック」で試合に臨みます。そして案の定、試合の主導権を握る・・、そしてたまに見せるFC東京の「怒濤のカウンター」・・。何人もの選手たちが全力で参加する東京のカウンターの勢いからは、選手たちの「確信レベルの高さ」を感じます。「行けば」何とかチャンスを作り出すことができる・・。そんな確信です。これが、第一戦の「3-0」という結果につながったのでしょう。基本的に成功の確率は「才能ベース」によるとはいいながら、参加する選手たちの「確信レベル」によっても、危険度に雲泥の差が出てきてしまうものですからネ。

 そんなことも含め、見方によっては非常に面白いゲームでした。

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 まず三点以上を取って「イーブン」までもっていかなければならないマリノス。ガンガン攻め上がろうとはしますが、FC東京の、忠実・堅実なマーキングにてこずり続けます。それはそうです。(マークが厳しいことで)パスの受け手の動きが緩慢なだけではなく、「各ステーション(ボールホルダー)」のボールハンドリング(ボールの扱い)も遅い、遅い。そしてそのことでボールの動きが停滞気味になってしまいます。これでは、攻めがスタックしてしまうのも道理といったところ。まずゴールを挙げなければならないマリノスなのに、ゴールをイメージしていない(シュートまでいくことを意識していない)のでは・・

 相手が、マンマークを厳しくする「守備的なゲーム戦術」で臨んできた場合、ダイレクトワンツーなどの素早いボールの動きをベースに、どのくらい(前で勝負しようとする相手を)置き去りにできるかどうかが生命線ということになります。ただこの試合でのマリノスではそれがうまく機能しない。また全体的に、攻撃の目的である「シュートを打つこと」に対する意識も低い・・これでは・・

 対するFC東京は、全員の「守備の意識」が、もう天文学的なレベルです。抜かれても、外されても、足を止めることなく、すぐに「次の守備ポジション(カバーリングポジション)」へ戻ります。そこに、全員の、「オレがボールを奪ったる・・そしてカウンター一発で攻め込んだる・・」ってな高い意識を感じるのです。

 もちろん、マリノスのボールの動きがカッタルかったことで、FC東京の守備も「次」を読みやすかったり、抜かれたり、置き去りにされても比較的戻る時間的余裕があったんでしょうがネ・・

 21分、城が先制ゴールを決めましたが、試合展開自体はまったく動かず。とにかくFC東京の、忠実・堅実なマーキングに一糸の乱れも見えません。

 ただ後半8分の、これまた城のロングシュートが決まった辺りから、波乱の予感が・・

 基本的な試合の流れは変わりませんが、FC東京に、徐々に「前へ重心を掛ける」という姿勢が感じられるような「微妙な変化」が起こりはじめたのです(たぶん自然発生的なもんなんでしょう・・「何だ、ヨシ一点くらい返してやるゾってな具合かな・・)。オッと、これは逆に、マリノスに「三点目」を奪うチャンスが出てくるかもしれない・・。そんなことを思っていた矢先、マリノスの井原が、フリーで突進してきた佐藤を「身体で」止めて一発退場になってしまいます。

 あと一点奪わなければならないマリノス。その守備の中心である井原が退場。これでは・・というのが一般的な見方なのでしょうが・・。サッカーは心理ゲームですからネ。これまでに何度も、このような窮地での大逆転劇を目撃してきた湯浅は、逆に、「さてこれで、ホンモノの波乱が起きる舞台はそろったな・・」なんて思っていたんですよ。

 失うモノがなくなったチームは、吹っ切れた心理・精神状態で、攻守にわたって「仕掛け」続けられるモノですし、逆に、状況的に「失ってはいけないモノ」が見えてきたチームは、消極的、そして受け身の心理状態に陥ってしまいますからネ・・

 案の定、最後の10分間は、典型的な「心理的要素が大きく影響を与える」という試合展開になります。

 ほとんど三人で守るマリノス。(FC東京に何度か決定的なチャンスを作られしまったとはいえ・・)逆にマリノスの攻撃が、「やっと」ボールの動きがアクティブに、シンプルになり、ガンガンと「選手個々が主体」になって仕掛け(リスク・チャレンジを)続けるようになったのです。

 その(精神的な)勢いと「広く、素早い展開」にタジタジになり、ちょっと足が止まり気味になってしまうFC東京。この時間帯は、本当に「運命の三点目」が入ってもおかしくない・・といった展開でした。フ〜〜、面白かった・・

 さて準決勝まで進出したFC東京。次も、ゲーム戦術を変えずに「チャレンジ」を続けるんでしょう。(この試合では)負けたとはいえ、最後まで集中を切らさず、ひたむきに戦い続けたFC東京に大いなるシンパシーを感じた湯浅でした。




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