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いろいろな見所がありました・・天皇杯準決勝・・グランパスvsレイソル(2−0)・・湯浅が、決勝戦をラジオ解説します(文化放送)・・(1999年12月26日、日曜日)

「目を覚ませ!!」

 グランパスの、ジョアン・カルロス監督が、ハーフタイムでのミーティングの最後に、そう活を入れたということですが、まさにその通り。グランパスの前半の出来は散々でした。

 それには、まずレイソルの忠実・堅実・活発な守備を挙げなければなりません。

 グランパスのトップ、呂比須とストイコビッチ。彼らには、薩川と渡辺毅がピッタリと、本当にピッタリと「オールコート気味」にマンマークに付きます。また両サイドの望月と平野に対しても、「早い段階」で守備ブロックの「ポジションバランス」を崩して(守備組織をブレイクして)渡辺(光)とバデアが、これまたピッタリとマークしてしまいます。

 また後方から上がってくるウリダ、山口に対しても、下平、明神、はたまた大野や酒井なども活発に守備参加。中盤から最終守備ラインにかけてのレイソルの守備ブロックは、本当に堅実に機能していました。そしてそのことが原因で、グランパスの攻めが「硬直化」してきてしまう・・。硬直化の意味は、呂比須、ストイコがトップに張り付き(つまり完璧にマークされ)、望月、平野も、たまには左右のポジションチェンジを見せますが、それでも「タテの決定的なスペース」へ飛び出していくような「変化のある動き」が出てこないということです。

 そんな「硬直化した」グランパスに対し、レイソルの「カッチリとした守備からのカウンター」は危険そのもの。大野が、酒井が、どんどんと、グランパス最終守備ラインのウラの決定的スペースへ飛び出していきます。何度も、何度も・・。そして二度、三度と、決定的なチャンスを作り出します。グランパスは、GKの楢崎に大感謝しなければ・・

 ここで私は、「完璧なスター」がいるチームの「ディスアドバンテージ(不利な面)」というサッカー的な側面を考えていました。ストイコビッチのいるグランパスのことです。グランパスの選手たちは、どうしても彼を見てしまい、そこにボールを集めようとする。ただ彼は前線に張りすぎていることで、どうしても薩川の強烈なマークに遭遇してしまう。だから、彼からの「効果的な展開」が、完全にカゲをひそめてしまう・・

 攻め手が見えてこないグランパス・・。もっと、ストイコを「オトリ」に使って、平野、望月がガンガン前へ行かなければならないのに・・。この二人の「発想」も、かなり消極的で受け身になっている。対するレイソルのマインドは、「ヨシ! これならやれるぞ!」ということでチーム一丸になっている・・。フム・・、レイソルがこのままペースを握り続ければ・・

 ただ、前半の残り5分くらいになったところから、ゲームの流れに大きな変化が見えはじめます。

 その「キッカケ」は、ストイコビッチが、自分の判断で、「プレーゾーン」を急に広げはじめたことでした。

 ストイコが下がってボールを受け始めたのです。グランパスの最前線は、レイソルのペナルティーエリア付近までいっているのに、彼がパスを受けるのはハーフウェイライン付近。レイソルの薩川は、そこまで付いていっています。ちょっと「前後の守備ブロックバランス」が崩れるレイソル。ストイコは、そこから、決まって、左サイドで「前のスペースをイメージしている」平野に正確なパスを回します。

 44分。その展開から素晴らしいセンタリングが上がり、逆サイドで待ち受けていた望月が惜しいシュートを放ちます。

 ストイコがトップに張り続けていては何も始まらない・・。彼が前後左右に動き始めてからゲームに「変化」がつきはじめたのです。そしてロスタイムでの、まったく同じ展開からの、平野からの決定的なセンタリング・・

 ここで私は、グランパスの「選手」たちが、自分たちの良いサッカーに対するイメージを再び取り戻しつつあることを感じていました。そしてハーフタイムでの、カルロス監督の「覚醒をうながす怒鳴り」。それが、選手たちの「マインド」を一つのまとめたと思うのです。

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 そして後半は、もう完全にグランパスのペースになってしまいます。

 平野、望月、呂比須、ストイコが、縦横無尽にポジションチェンジをはじめます。基本的な「サッカー能力」では秀でた連中ですから、彼らの「ボールがないところでの動き」と「ボールの動き」が「連動」しはじめたら、もちろん効果的なチームプレーになるはずです。サッカーは、「有機的なプレー連鎖の集合体」ですからね。

 また後半8分には、平野の「ココゾ!」の中央突破ドリブル勝負なんかも出てきます。

 グランパスの守備も、前半では、「ラインのブレイクポイント」が遅すぎることで、タテに走り込む大野、酒井のフリーランニングに振り切られてしまう場面が多かったのですが、後半に限っては、そんなシーンは皆無でした。また、たまに飛び出てくる危険なロングシュートや、セットプレーでも、楢崎が、抜群の「安定感」を誇示します。

 グランパスが試合の流れを掴んでいた後半25分、グランパスのカルロス監督が勝負に出ます。左サイドの小川に代えて、トップの福田を送り込んだのです。ただ、変更になったグランパスの「スリーバック」も、平野、望月、ウリダ、山口の「意識の高さ」を証明するような「考えるポジショニング・カバーリング」で完璧に機能しています。

 そして、二列目に下がったストイコビッチは、「何かから解放された」ように、今度は頻繁にボランチの位置まで下がってゲームを組み立てます。こうなったらもう薩川も付いていくわけにはいきませんし、受け渡しの「タイトマーク」がうまく機能するはずがありません。どんどんと「自由」にゲームを指揮するストイコ。ここで試合のペースは、もう完全にグランパスのものになってしまいます。

 そして後半36分のグランパス先制ゴール。ストイコのFKから横パスを受けた呂比須がシュート。平野のタッチから、レイソルディフェンスのミスで前へ転がったボールを、そのまま走り込んだ平野がプッシュ!!

 追加ゴールは、完璧なカウンター。望月からパスを受けた福田の、相手守備ブロックの集中を見越した、逆サイドに待ち受けるストイコビッチへのラストパスは絶妙でした。

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 チーム全体の「マインド」が、かなりのレベルで「シンクロ(同期)」しているグランパスは強い!!

 このコラムを書いている時点では、サンフレッチェがヴェルディーをリードしているということなのですが、どちらが出てきても、決勝では、現在のチーム力では「最強の相手」に対抗していかなければなりません。

 決勝戦は、面白くなること請け合い。今から楽しみで仕方ありません。

 前回も書いたのですが、湯浅が、決勝戦を、ラジオ文化放送で解説します。さて、どのくらい「ゲームのエッセンス」を、「分かりやすく」言葉に託すことができるか・・ご期待アレ・・




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