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第二戦では、色々な「変化」がありました・・サントリーチャンピオンシップ・・エスパルスvsジュビロ(2−1)・・(1999年12月11日、土曜日・・深夜)

今は、土曜日の夜中。正確には、日曜日(12月12日)の午前1時。愛車のオートバイを駆り、やっと清水から東京の自宅にたどり着いてコラムの執筆にかかったところです。

 まだ元気はありますが、このところ、来年早々に出版予定の本の執筆(新潮社)、連載コラム、スポット記事などの執筆、はたまた私の本業(副業?!)のマーケティング企画の仕事などが重なって、ちょっとオーバーワーク気味。ということで、この試合に関しては、ポイントだけ、短くまとめることにしたいナ〜〜

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 とにかく試合の流れを追うことからはじめましょう。

 試合は、立ち上がりから拮抗した状態が30分ほど続きます。たしかに最初の時間帯はエスパルスペースでしたが、前回の試合同様、完全にペースを掌握しているというのではなく、「勢い」で勝っていたという感じです。

 この試合では、前回の反省なのでしょうか、アレックスの攻撃参加を「より」積極的に支援する体制がとられたように感じます。アレックスのサイドに、伊東、澤登が交代に顔を出すのです。基本的には、いつものことなのですが、この試合では、より徹底して・・という「ゲーム戦術的」な意図を感じました。

 とはいっても、完璧に崩すまではいけない・・。藤田、安藤、はたまた三浦文丈までも、守備サポートに回ってきていましたからね。

 両チームともに、確実な守備をベースに、「ワンチャンスを・・」という戦い方は、第一戦と同じ、そして試合展開も、交代にペースを奪い合う・・

 それでもエスパルスの方は、とにかく攻撃をシュートで終わる・・という意図は、より鮮明になっていたように感じます。アレックスが、澤登が、はたまた安永が、積極的に「惜しい」中距離シュートを放っていましたからネ。

 それでも拮抗したゲーム展開には大きな変化はありませんでした。ジュビロが先制ゴールを決めるまでは・・

 それは前半の30分過ぎ。まず西澤が、バックパスミスから決定的ピンチを招いてしまうなど、何度かミスを重ねることで自信をなくしかけたところ、運悪く、またまた西澤のスポットで「決定的な競り合い」になってしまいます。そして中山にボールを支配され、藤田(福西?!)が絡み、最後は、こぼれ球を服部に決められてしまったのです。前半34分のことでした。

 そしてすぐその後、アレックスが、安藤に対する報告行為でレッドカード・・。

 このとき私が確信したことは、ただ一つ。「ヨシッ、これでエスパルスが、何かから吹っ切れて、攻守にわたって仕掛けていくに違いない!」・・でした。

 そしてその直後の、澤登のスーパーフリーキックからの同点ゴール。

 その後は、(案の定というか・・)もう完璧にエスパルスペースでした。サッカーは、心理ゲーム。エスパルスの選手たちは、「一人でもサボッたり、受け身になったら、完全にジュビロにやられてしまう!」という『意識』で統一されたのです。

 服部のゴールとアレックスの退場は、「表面的」には「ネガティブなダブルショック」ではありましたが、「心理的な影響・効果」という意味では、確実に「強烈なポジティブ刺激」だったのです。ネガティブな刺激による「ポジティブな影響」・・。サッカーではよくあることなんですよ。

 それに澤登の同点ゴールが決まり、結局は、「トリプル・ポジティブ・刺激」になってしまったというわけです。私は、エスパルスがペースを握ることを確信していました。多くの人たちが、失点し、アレックスが退場になって、「もうこれでゲームは終わった・・」と感じたかもしれません。ただ私は、そんな状況で、ネガティブな現象が、チームにとって、レベルを超えた「ポジティブ刺激」になった例を、数限りなく経験しているのです。

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 ただ後半の立ち上がりは、完全にペースを握ったジュビロが押し込みます。それでも、果敢に(ある程度の人数をかけて)危険なカウンターを仕掛け、「最後」まで行きそうになるエスパルス。

 そんな展開を繰り返しているうちに、またゲームが落ち着き、拮抗してきます。

 ゲーム展開がそうなったら、もうエスパルスのものだ・・。そこでも私は、そんなことを思っていました。

 それは、ゲームが落ち着いてきたら、「覚醒」している方が有利だということを、世界のサッカーシーンで何度も体感していたからです。

 ジュビロの選手たちは、「このまま失点さえしなければいい。今は、エスパルスに、危険な攻めを繰り返すほどのパワーはないから、このペースで大丈夫。人数はこちらの方が多いのだから、落ち着いていけば・・」なんて思うことで、守備組織に多くのプレーヤーが「残ってしまう」現象が頻繁に起きはじめます。また攻撃でも、後方のだれも「前のスペース」へ抜け出ようとせず(その役割は、中山に任せっぱなし)・・ってな具合です(確かに、藤田、三浦文丈は積極的に、前に絡んでいこうとはしていましたがネ・・)。

 対するエスパルスの心理状態は、「とにかくオレたちの人数は足りないのだから、一人でも、本当に一人でも眠ってしまったら、攻守の両方で、確実にジュビロにやられてしまう・・。とにかく、まずオレが行く!!」、というものだったに違いありません。

 その時点での心理ポテンシャルは、確実にエスパルスの方が上だったのです。

 そしてエスパルスがペースを握りかけます。ただそこは、アジアチャンピオンのジュビロ。簡単には守備を突破させてくれません。逆に、またまた盛り返し、何度か、危険な攻めを仕掛けてきます。

 そんな時間帯での、エスパルス、サントスの守備には、大きな感動がありました。フリーキックやコーナーキック、はたまた流れの中でのセンタリングを、何度ヘディングでクリアしたことでしょう。彼には、センタリングの「コース」を読んでしまうような「千里眼」でも備わっているのでしょうか。彼の、「経験」をベースにした、「ココゾ!」の鋭い感覚には、本当に脱帽でした。

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 試合は膠着状態。そんな展開の後半23分、エスパルスのペリマン監督が動きます。安永に代えて、ファビーニョを投入してきたのです。それは、「よし、今が勝負だ。とにかく危険を犯して、攻めよう!」という彼のメッセージ(外的な刺激)だったのです。

 そして、そのメッセージに応えるように、エスパルスの攻めのペースが急にアップし、ジュビロを押し込みはじめます(逆にジュビロは、強すぎる警戒心から、下がり気味に・・)。そして、ファビーニョが絡みながら何度か「チャンスの芽」を作り出しているうち、久保山の、バー直撃のシュートが飛び出します。あれが決まっていれば、スーパーなベンチワーク・・ということになったでしょうに・・

 ただ、「ファビーニョ効果」も、続いたのは五分間程度。ジュビロ最終守備ラインの鈴木と安藤が、意識してファビーニョを抑えにかかり、その「エスパルスにとっての心理効果」を消し去ってしまいます。そこらあたりの、鈴木、安藤の「判断の良い修正(調整)」には大拍手といったところ・・。彼らは、「今は、ファビーニョがペースを作り出している。ヨシ、オレが抑えてやる・・と考えたに違いないと思うのです。

 そしてまたまた拮抗状態に入ってしまいます。そのままタイムアップ。延長では、再びジュビロが、「平面的」に押し込みます。つまり、選手たちの「定型」にはまり込むような変化のない動きには、活性化の兆しが見られなかったということです。

 最後は、交代出場した長谷川の「突破トライ」をキッカケに、そこからのジュビロディフェンダーのクリアミスを大榎が拾い、ファビーニョへタテパスを通して、ザッツイット。素晴らしいVゴールではありました。

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 サントリーチャンピオンシップの二試合は、非常にレベルの高い、拮抗した内容のゲームでした。二試合目には、様々な「変化」もありましたし、私は堪能しました。

 とはいっても、「年間リーグチャンピオン」を、この二試合だけで決めてしまうというのは、様々な方が意見を出しているとおり、不自然きわまりないことです。

 そうそう、前には、ナビスコカップのチャンピオンとリーグチャンピオンが、グランド・チャンピオンなどという「似非タイトル」を争ったこともありましたっけね。まあ笑止千万ではありました。

 このことについても、今度もうちょっと深く考えてみることにします。とにかくもう限界・・ということでお休みなさい・・




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