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湯浅のドイツ報告・・国際会議のその後と、女子ワールドカップ決勝(1999年7月11日)

マイケル「エアー」ジョーダン。彼と一緒にゲータレードのテレビコマーシャルに出演している女性がいます。ミア・ハム。アメリカ合衆国、女性のサッカー代表チームのスーパースターです。

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 ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟主催の国際会議の最終日は、ドイツ代表監督、エアリッヒ・リーベック、「あの」ギュンター・ネッツァー(1970年代のドイツのスーパースター)、ドイツを代表するプロコーチの一人、カールハインツ・フェルドカンプ(前サッカーコーチ連盟副会長)、そしてドイツ協会のコーチ養成コース責任者、ゲロー・ビーザンツ(日本の「S級ライセンス」のゲストティーチャー!)が参加するパネルディスカッションで始まりました。

 司会は、北部ドイツ放送のスター・アナウンサー、ゲアハルド・デリング。軽妙な司会で、ディスカッションが進みます。(メンヘングラッドバッハ当時の)ネッツァーとヴァイスヴァイラーの「関係」などを例にとったチームマネージメントの本質について、トヨタカップにヨーロッパチャンピオンとして参加したこともあるハンブルクのチーム事情のこと(ネッツァーは当時、ハンブルクのジェネラルマネージャー)、若い世代のサッカー、(ボスマン判決後の)ヨーロッパサッカーの変動、若いタレントが、外国人選手が増えたことで、チャンスをあまり与えられないこと、などなど、広範囲の話題が深く掘り下げられていきます。(機会を見て、内容の詳細をレポートしましょう・・)

 その後、アディダス(ドイツサッカーコーチ連盟のパートナー)社が、ドイツで行われている「アディダスカップ」についてのプレゼンテーションを行いました。このカップは、ドイツ全土で子供を対象に行われている「サッカーを楽しむこと」をメイン・コンセプトにした大規模イベントです。

 年間に、(子供の親、観客も含めて)何十万人の参加者を数えているというのですからハンパじゃありません。主催者が「あの」アディダスですから、もちろん何人もの往年のスター選手が参加します。映像を多用した本当に「プロフェッショナル・プレゼンテーション」。それが、サッカー(文化)の普及につながっている・・。素晴らしいことです。

 最後は、ゲロー・ビーザンツの「今回の国際会議のまとめ」、そして会長、クラウス・ロルゲン氏の閉会の挨拶。

 「とにかく、みんなの協力関係をベースにした努力が、今後のドイツサッカーが発展するための唯一の希望だ。お互いに頑張ろう・・・。じゃ、またな!!」

 いや、強烈なパーソナリティー、人間的な魅力にあふれるロルゲン氏の「締め」ではありました。

 その後、フランクフルトまでブッ飛ばしてドイツサッカー協会とドイツサッカーコーチ連盟の事務局を訪れ、そして最後にケルン(ケルン体育大学や仲間のサッカーコーチ連中にまだ用事がありまして・・)へ戻りました。ホテルはケルンの一流どころなのですが、そこも、(私が)ドイツ「S級ライセンス」コーチ、ドイツコーチ連盟の会員ということで大幅な割引です。さすがドイツ、サッカーネーションなのです・・

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 そこで、アメリカで行われている女子のサッカーワールドカップの決勝をテレビで見たときに、(冒頭で書いた)アメリカで流されているテレビコマーシャルのこと(マイケルとミアのコンビによるゲータレードのコマーシャル)が紹介されていたというわけです。衛星放送などの世界情報化の進展・・本当に情報は、リアルタイム、グローバルに環流しているのです。

 地元アメリカと中国が相まみえる決勝の会場は、カリフォルニアの「ローズボール・スタジアム」。九万人(!)の観客でスタジアムは超満員。もちろんクリントン大統領が、この「プロモーション機会」を逃すはずがありません。何度もテレビ画面に映し出されます。

 キックオフ前のセレモニー、ハーフタイムショー、(ポップコーンをほうばるクリントン大統領も含めた)観客のノリ・・。それはもう「ティピカル・アメリカン」。トラディショナルなヨーロッパサッカー(その雰囲気)にドップリつかっている湯浅は、何となく違和感を覚えたモノですが・・

 サッカーというスポーツは「一つ」ですが、その「見え方」、「文化的な(社会的な)在り方・浸透の仕方」は千差万別・・ということなんですネ・・

 アメリカでは、女子サッカーワールドカップの「認知度」は信じられないほど高い・・そんなアナウンスが流れています。もちろんそこでプレーされているサッカーの「質」は、技術的、身体的、戦術的なレベルなど、男子とは比べモノになりません。

 要は、純粋サッカーロジック的には「ミニ・男子サッカー」というわけですが、アメリカでは、女子のプロサッカーが、男子をしのぐ勢いだというのです。サッカーは一つですが、そこに「女子」という異質な価値(マーケティング的にいえば、エンターテイメント的付加価値ということになるんでしょう・・)が加わることで、「女子サッカー」という「新しいプロ(エンターテイメント)スポーツ」が芽生えているということなんでしょう。

 もちろん、地元アメリカの代表チームが決勝に進んだ(男子では絶対に無理!)、そこには(メディア注目度=社会注目度が高い)ミア・ハムなどのスーパースターがいる、そして相手は、政治的にも対立している「あの」中国!! 社会注目度が「天文学的」なところまで高まるのも当然といったところですがネ・・

 試合は、両チームともに、相手守備を崩すところまでいかない・・、最後の瞬間の勝負では、どうしても(基本的に受け身の)「守備」の方が強い・・など、「チカラが足りない」サッカーの典型的な展開。そんなサッカーでは、どうしても守備の方が光ってしまうものなのです。

 それでも結果は、大変なドラマになりました。最後は、1994年アメリカワールドカップ決勝(ブラジル対イタリア)同様、PK戦で、アメリカ合衆国の勝利!! アメリカがワールドチャンピオン!! スタジアムの興奮は、延長前半の、コーナーキックからの決定的なピンチ(中国の決定的なチャンス)をギリギリのところで防いだこともあって、これまた天文学的な・・ってな具合です。

 「質」とは関係なく、そこにも、いつもの「必然と偶然が交錯するシナリオのないドラマ」が展開されていました。そして、サッカー界全体にとってのハッピーエンド(?!)。サッカー・ゴッドの粋な演出・・ではありました。

 これで、アメリカのサッカー熱は盛り上がるんでしょうか。「異質な価値を提供する」女子サッカーは確実でしょうが、まだまだ「世界一」にはほど遠い男子サッカーは?? 男子サッカーが世界でのポジションを上げていかなければ、ホンモノの「サッカー文化」は育たないでしょうけれど、独自の文化を持つアメリカでは、サッカーネーションとはまったく違った「サッカー文化」が展開してしまったりして・・。注目してみましょう・・

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 さて、湯浅の「出張報告」はこれでフィニッシュということになります。次は、日本に帰ってから・・。これからもよろしくサポートのほどをお願いします。

 なお湯浅は、「サッカーマガジン」でもコラムを発表することになりそうです。もしそうなったら、そちらもよろしくお願いしますネ。では・・




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