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ファーストステージの優勝決定・・ジュビロvsアビスパ(1-0)(1999年5月26日)

ほぼベストメンバーに戻ったジュビロ。対するアビスパでは、中盤守備の王様、フェルナンドが、ケガが癒えずに欠場です。

 ということで、(最初の時間帯は・・)基本的なチーム力の違いが「はっきり」と分かる展開。ホームのジュビロがゲームを支配します。アビスパは、しっかりと守備を固めてカウンターを狙おうという意図なんでしょうが、あまりにもジュビロの中盤を自由にやらせ過ぎ。中盤の高い位置でボールを奪い返さなければ、有効なカウンター攻撃を組み立てるのは至難のワザですから、もっともっと中盤でのプレッシャーを厳しくしなければならないのに、これでは・・と感じていたのですが・・

 ただその後、ゲームが完全に拮抗してきてしまいます。ジュビロの、前へのスピードが急に失われてしまったのです。それも、アビスパの、マスロバル、野田、ヴィジャマジョールを中心にした攻撃が、しっかりとした組立から危険なシーンを何度も演出するなど、ジュビロを心理的に注意深くさせたからなのでしょう。

 久しぶりに見るアビスパ。マスロバルが入ってから、中盤での組立にキーポイントができたと感じます(フェルナンドが絡めば、もっとクリエイティブになる?!)。

 一番重要なことは、マスロバルを中心に組み立てるという意識が、チーム全体に浸透してきたことです。「彼にボールをわたせば、そこで中盤でのポイントを作りだし、確実に次に展開できる・・」。チーム全員に、そんな確信が芽生えはじめたのです。これまでは、相手からボールを奪い返しても積極的な押し上げがなく、常に中途半端に攻撃が終わってしまうシーンが多く見られたのと比べれば、格段に危険な攻めを展開できるようになったと感じるのです。

 またこの試合では、好守のバランスが特にいい。確実、堅実、忠実な守備をベースに、ココゾ!のタイミングで、「その時点で参加できる」選手が、本当に積極的に攻撃に参加してきます。そのバランスをうまくマネージメントしているキーマンは、野田。マリノスでは、「あの」ボランチ・マスター、アルゼンチン人選手、サパタのパートナーとして一世を風靡した彼が、本来のボランチのポジションを任され、水を得た魚のような活躍です。

 後半はジュビロが本来のペースを取り戻し、ほぼゲームを支配し続けます。それでもアビスパ守備を崩し切るところまでいけない・・。感動的なまでに集中を切らさないアビスパ守備陣。素晴らしい・・

 ドリブルで切り崩されても、ギリギリのところで(自分のマークを放り出し)カバーリングの選手が急行する、ボールを持つ選手に対するプレッシャーは言うに及ばず、フリーランニングでマークを振り切られるシーンなどもほとんどない。基本的なマークポジションにいながら、チャンスとあらば、すぐに相手の「パスコースに入り込んで」パスのインターセプトを狙う・・・

 いや、それは感動的な集中力でした。アビスパが調子を上げていると聞いてはいたのですが、これほどまでとは・・。確かにペースは握られています。それでも守備だけというのではなく、チャンスとあらば、「これだ!!」っと、何人もの選手がしっかりと参加してジュビロのゴール前まで行ってしまうんですからね。

 ゲームは延長に入り、ジュビロも攻撃のペースを上げます。それでも、ギリギリのところで耐えるアビスパ。

 ただ最後は、奥のミドルシュートがディフェンダーに当り、コースが変わってゴール左隅に吸い込まれていきました・・決勝Vゴ〜〜〜ル・・

 この勝利で、ジュビロがファーストステージの優勝を決めたわけですが、内容的には、苦しみ抜いた末のハッピーエンド・・といったところ。全体的には、調子を落としていると感じます。確かに「まだ」活発にボールは動きますが、何か、その「次にくるべき目標」を喪失してしまっているように感じるのです。

 攻撃の目的はシュートを打つこと。その目的を達成するために、ボールを動かしながら攻撃の起点を作りだし、その瞬間、必ず誰かが、決定的なスペースに走り込んでいる。そこへのパスから直接シュートへいけないまでも、いつもだったら「その次」の選手が必ずバックアップしている・・そんな分厚い攻撃が彼らの真骨頂だったはずですが・・。何となく、ジュビロ本来の「攻撃イメージ」が微妙に崩れはじめていると感じるのです。このことについては、もう少し時間をおいて書いてみたいと思います。

 このコラムはここまでにし、少し眠って、明朝のチャンピオンズリーグ決勝に備えたいと思います。それではオヤスミナサイ・・




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