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ニューイヤーサッカー・・高校選抜は、トルコのガラタサライユースにいいところなく敗北(1999年1月17日)

ちょっと寒かったのですが、いろいろな興味に引かれ、愛車のオートバイを駆って、浦和の駒場競技場まで足を運ぶことにしました。

 正月の高校選手権。その選抜チームが参加した「ニューイヤーサッカートーナメント」は、ヨーロッパでも進境著しいトルコを代表するプロクラブ、ガラタサライ・イスタンブールのユースチームが、素晴らしいサッカーを展開して優勝しました。

 高校選抜ですが、寄せ集めチームですし、正月大会が終わったばかりと、たしにか疲れは残っていたに違いありません。ですから、(準決勝で、個々の選手の才能をベースにした「一発の強さ」が爆発して勝利を収めたとはいえ)全体的には押し込まれていた対韓国ユース代表戦、また(二度も追いつくなど粘りに粘ったとはいえ)内容的には圧倒的に支配されてしまった決勝の対ガラタサライ戦でも、全体的には「健闘した」といえるのかもしれませんがネ・・・

 それでも私は、特に決勝のガラタサライ戦での、点差以上に開いていた「内容的な大きな差」には納得できませんでした。

 まず中盤でのボールの動き。日本選抜のパスは、(周りの動きが鈍重だから)常に味方の「足元」ばかり、それも、相手の激しいプレッシャーに「心理的に押された」状況でパスをするものですから、パスコースはミエミエもいいところ(ほとんどが簡単にインターセプトされていた)。

 対するガラタサライユースは、まずしっかりとボールをキープし、必要とあらば、素早く、広く展開します。確かにトルコサッカーの「クセ」ともいえる、過度のボールのこねくり回しも見られましたが、そんなネガティブプレーも、(日本代表の中盤守備が淡泊なことで・・)逆にポジティブな意味での「タメ」として、うまく機能してしまうのです。

 そんな組織プレーだけではなく、ガラタサライは、中盤でのスペースをつなぐドリブルやドリブル突破トライなど、「ココゾッ」の個人勝負プレーもふんだんに盛り込みます。先制点の場面ですが、それは、右サイドで勝負し、「マタ抜き」で抜け出た選手が、ゴール前に斜めに走り込んできたチームメイトに、それこそ「ピンポイント」という鋭いセンタリングを送り込んで挙げた先制ヘディングゴール!! でした。

 ゴールキーパーも含めた日本の守備陣は、まったく反応することができません。ここが勝負というセンタリングの場面こそ、ディフェンダーの「マーキング技術」が発揮されなければならないのに、この瞬間、日本の最終守備ラインは「ボールウォッチャー」になってしまっていました。

 また、日本選抜の攻めのほとんどが「単発」なのに対し、ガラタサライは、たまには「有機的なプレー連鎖」と表現できるほどの見事なパス回しをベースに、危険な攻撃を披露します。

 日本の攻めが単発だったのは、パスを出した選手が、再び「次」でもらうという意識をほとんど持っていなかったからです。彼らは、パスを出しただけで(パスがつながったことで責任を果たした?!)止まってしまうのです。それに対し、中盤で、何度もシンプルな「ワンツー」で抜け出し、チャンスを作り出してしまうガラタサライ。「パス・アンド・ムーブ」はサッカーの基本中の基本だというのに・・。

 それだけではなく、「中盤の(人数的な)厚さ」にも大きな差が感じられました。それは、ガラタサライの「攻守の切り替え」が非常に素早いからです。(相手にボールを奪われたとき)まだ自分の眼前でボールがプレーされている状況で、人数、そしてポジションバランスを意識して「下がる」ことは、(意識的に)そう簡単なことではありません(この部分、チョット分かりにくいですかネ・・)。それでもガラタサライの選手たちは、そんな状況でも、「次のプレーゾーン」を埋めてしまうためにすぐに戻ってしまうのです。

 ボールを奪い返した後の日本の攻撃が、中盤ゾーンで簡単に終わってしまうシーンを何度目撃したことか・・(観客の、ア〜〜アッ・・というため息を何度聞いたでしょう)。それは、ガラタサライの素早い攻守の切り替えを考えてみれば(逆に、日本チームの切り替えの遅さを考えてみれば)、必然的な結果だったように感じます。

 確かにガラタサライは、先制点を奪った後は、ちょっと下がり過ぎたり、攻撃ではスタンドプレーに奔る傾向がありました。守備の押し上げが鈍いこともあって、ボールを持ちすぎて自滅してしまうシーンが続出したのです。それでも、日本が同点に追いついた後は、再び息を吹き返し、それこそ爆発的とでもいえるくらいのダイナミズムで、「アンタたちとは、こんなに実力が違うんだゾ・・」とでも言うかのように、日本チームを押し込んでしまいました。

 そんなガラタサライに対し、たまには日本選抜も、韓国戦で見せたような才能ベースのカウンター攻撃は仕掛けます(それがPKにつながったのですが・・)。ただ味方のサポートが十分でないことから、それも単発に終わってしまうことがほとんど。そして、すぐにガラタサライに押し返されてしまうのです。

 そんな試合内容に、かなり落胆させられてしまったのですが、その背景には、日本選抜の「個人的な(技術・戦術)能力」が、かなり高いレベルにあるという「私の個人的な感触」がありました。私は、(彼らは)やり方によっては、互角に渡り合うことができるくらいのキャパシティーを備えていると感じていたのです。それが実際のグラウンド上でのプレーでは・・・

 寄せ集めチームだから、互いの「次のプレー」に対するイメージがシンクロ(調和)し難い?! イヤイヤ、私がいうのは技術的、戦術的な『基本』のことですし、彼らほどのレベルならば、長い合同練習などなくても、ある程度できる(またはやろうとする姿勢・発想が見える)のが当然です。要は、パスを受ける動きや、パスを受ける前に周りを見ておくなどといった基本中の基本ですからね。

 確かにボール扱い(テクニック)はうまくなりました。それでも、ガラタサライのような世界レベルのユースに、ファールギリギリの(身体的・心理的)プレッシャーを掛けられた場合、『本来の』自信にあふれたトラップやボールコントロール、はたまた素早いパス回しや正確なミドル・ロングパスなどが出来なくなってしまう。それは彼らに、実戦的な「自信」、そして基本の応用である「スキル」が備わっていないことの証明なのです。

 厳しいコメントになってしまいましたが、高いレベルの基本能力をもった高校選抜の選手たちですから、歯がゆくて仕方なかったという風にご理解ください。

 ガラタサライの強さのベース。それは、基本的技術・戦術プレーの積み重ねです。日本チームが出来ないはずがありません。それが歯がゆい・・

 選手たちは、「基本の積み重ねプレー」が、世界にいけばいくほど重要になってくることを肝に銘じなければなりません。とはいっても、そのことは経験を通してしか体感できないことも事実ではありますが・・。

 もし彼らが、このような素晴らしい「学習機会」を「ノホホン」とやり過ごしてしまうようだったら、その才能は、このまま埋もれてしまうんだろうな・・




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