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中田はまだまだ伸びる・・(1999年1月24日)

22歳になった中田の最初のセリエマッチは、ユーヴェントス戦。同カードの開幕戦ではセンセーショナルな二得点と、なんとも派手なデビューを果たしたわけですが、その後半年での彼の多くのゴールも、セリエの雰囲気に馴染んでしまった印象を与えるのですから、ホントに大したモノです。

 ペルージャの試合運びは、アウェーでは常道の「しっかり守ってカウンター」。対するユーヴェは、ホームですから、当然人数をかけて攻め込んでいきます。ただ、オリーヴェがもどったペルージャの中盤守備がうまく機能し、ユーヴェがチャンスを作り出すことはできません。

 ユーヴェは、リッピ監督のシーズン後の移籍が決定していることが悪影響を与えているのか、プレーが沈滞気味・・というよりは、クリエイティブな攻めがまったく見られないといった方が妥当です。また守備もチクハグ。ちょっと表現がファジーですが、とにかく、攻守にわたって、チームメイト同士のプレーイメージがまったくシンクロ(同期)しない「前半」のユーヴェからは、「らしさ」がまったく見えてこないことは寂しい限りでした。

 対するペルージャのカウンターアタックは危険そのもの。彼らの攻めは、基本的に、二列目の中田、左右のハーフ、ペトラッキ、ラパイッチ、そしてセンターフォワードのカヴィエデスの四人だけで展開します。そして何度も決定的なチャンスを作り出してしまいます。

 その中でも17分のチャンスは特筆モノ。右サイドに飛び出した中田へ、ペトラッキからのタテパスが合います。マークするデシャンは遅れ気味。中田は、そこでボールをこねくり回すことなく、例によっての「シンプル・センタリング」です。それもピンポイントの・・。大したものです。そしてそれが、ペルージャの決定的なチャンスにつながるのです。

 また、20分に生まれたペルージャの先制ゴールですが、右サイドでタテにドリブルするペトラッキの前方スペースには、中田がしっかりとフリーランニングで上がっていきました。それが、ユーヴェのストッパーを中央から引き出し、そこにスペースを生み出したのです。そこへ、うまいタイミングで走り込んだカヴィエデス。そしてその彼に、ピッタリのパスを合わせたペトラッキ。確かにそれは素晴らしいゴールでしたが、それも中田のスペースへの飛び出しがなければ、成就しなかったゴールかもしれません。

 後半のユーヴェの大攻勢はサスガでしたが(4分にはコンテからのセンタリングからフォンセカに、また10分には、ジダンにそれぞれヘディングでゴールを割られて逆転)、それにしても、「あの」フランス代表のデシャンまでも、かなり意識させていた中田。彼は、完全にセリエの顔の一人にまで成長したようです。

 彼のプレーについては、何度もヨーロッパのエキスパートたちとハナシをしたことがあります。結論からいえば「クレバーなシンプルプレーの天才」ということなのですが、この頃の彼のプレーからは(この試合では世界一流のマークが厳しかったため、あまり冴えませんでしたが・・)、組立のシンプルパスだけではなく、中盤での勝負ドリブル(アタックしてくる相手への身体のあずけ方などは秀逸)、チャンスでの爆発的なフリーランニング(この試合でも、何度も決定的なフリーランニングを見せていた)など、自信レベルが高揚していることに伴って、プレーの幅もどんどんと大きな広がりを見せていると感じます。

 確かに、他チームよりもペルージャの基本的なチーム力が劣ることで、いつも本当に満足できるプレーを展開できているわけではないのでしょうが、それでも本場のエキスパートたちは、現象面とは別に、プレーの「意図・プロセス」までも評価の対象にしますから、(イタリアのサッカー専門誌などが)彼に対して高い評価を下すのも当然のように感じます。

 彼らは、(派手なオーバーヘッドゴールなどの)「結果」だけに踊った表面的な評価は下さず、事前の意図や、そこに至るまでのプロセスまでにもしっかりと目をやるのです。その意味でも、ホンモノの世界を目指す中田にとっては、やり甲斐のあることこの上ない仕事場であることだけは確かなことです。




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