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日本女子代表・・かなり心配させられたけれど、本当によかった!!・・日本女子代表対メキシコ代表(2-0、日本が女子W杯アメリカ大会へ!)(2003年7月12日、土曜日)

どんなレベルのサッカーにも学ぶべきモノがある・・。ドイツでたたき込まれたコンセプトの一つです。たしかにスピードやテクニックでは男子とは比べものにならない・・それでも、しっかりと観察すれば、たしかに深〜〜い学習機会になる・・。

 試合を見はじめてすぐに感じたことは、メキシコが、たしかに守備は安定しているけれど、攻撃では「局面の個人プレーをツギハギしたサッカー」でごり押しの(強引な)仕掛けを繰り出してくる・・それに対し日本代表は、攻守にわたって、素晴らしくコレクティブな(組織的な)サッカーを展開している・・ということです。

 攻撃では、とにかくよくボールが動く。もちろんそれは、ボールがないところでの忠実なアクション(フリーランニング)の量と質でメキシコを凌駕しているからに他なりません。また守備にしても、しっかりとしたスリーバック(ファイブバック)とダブルボランチによる堅牢な守備ブロックを基盤に、クレバーに相手を追い込みながら、周りがプレスの輪を築いてしまうなど、素晴らしく効果的なプレーを展開している。まさに、内容ではメキシコを凌駕している日本代表といった展開なのです。ところが・・。

 メキシコが展開する強引で稚拙な攻め。それでも、局面では、たしかな効果があるのです。個人のテクニック頼りのごり押しのドリブル勝負。そしてそこからの、ごり押しのクロス。それでも、メキシコ選手たちは背が高いですから、アバウトでも、クロスが送り込まれれば危険この上ない。全体的なチャンスメイクの頻度と質では日本代表が圧倒しているものの、実際にゴールが入るかもしれないという感覚的な可能性では、メキシコの方が上回っているのかもしれない・・。特にセットプレーの危険度では、雲泥・・とも言えるくらいメキシコの方が上。これは、・・。

 そんなゲーム展開のなか、たしかに日本代表は、組織パスプレーとドリブルをうまくミックスしたバランスある仕掛けからチャンスを作り出すのですが、どうもフィニッシュがうまくいかない。何度、「惜しい!」というチャンスがあったことか。そして逆に、メキシコのワンチャンスのカウンターやセットプレーからのヘディング勝負に冷や汗をかかされてしまう・・。とにかく、頻度は少ないにしても、メキシコの攻撃は、ツボにはまれば本当に怖いのですよ。前述したように、ドリブル突破能力もあるし、なんといっても、高いヘディングという絶対的な武器もある。だからセットプレー場面では、いつも半分目を閉じたりして・・。フ〜〜、この試合展開は、本当に心臓によくないな。

 日本代表は、戦術的に、本当によくトレーニングされています。守備でのポジショニングや(ボール絡み、そしてボールがないところ)、1対1での対応など、それら一つひとつのプレーに「ハイレベルな意図」を感じるのですよ。また攻撃にしても、常にボールがないところを「最終勝負ポイント」とイメージしているから、ボールがよく動くし、選手たちもボールのないところでよく動く。だから、うまくスペースを活用できる。そんなハイレベルなサッカーを展開している日本女子代表なのですが、勝負は、そんな「内容」とは次元の違うところで決まってくるのが常ですからネ。

 後半立ち上がりの時間帯での私の印象は、「たしかにゲームは支配しているけれど、どうも悪いパターンにはまりかけている・・チャンスにしても、前半立ち上がりの時間帯以降は、決定的といえるところまで行けなくなっているし、逆にメキシコの攻撃は、強引で稚拙ながらも、時間を経るにしたがって危険度を増している(メキシコチームも、ワンチャンス勝負に自信を持ちはじめている)・・これは本当に悪いパターンだ・・」というものだったのです。

 ところが、そんな心配をしはじめた後半10分、やってくれました、日本代表が。澤の、見事なヘディング先制ゴールが決まったのです。それは、貴重な、本当に貴重なゴールでした。

 大きな展開から左サイドでボールを持ち、素晴らしい切り返しで相手マークを振り切った山本から、ベストコース、ベストタイミングの「ラスト・クロス」が飛びます。そして一瞬フリーになった澤が、素晴らしいヘディングシュートを決めたという次第。それは、澤を、完璧にオールコートでマンマークしていたパトリシア・ゴメスのマークが一瞬途切れてしまった瞬間でもありました。そのマークミスは、直前の「大きな展開」があったからこそ生まれた。日本代表の大きなボールの動きによって、ゴメスの視線と意識が「分散」してしまったのです。それにしても、本当にワンチャンスをよく決めた・・。

 この試合の日本代表は、アウェーゴール「二倍」のルールがありますから、「0-0」や「1-1」の引き分けでも、日本女子代表がワールドカップ本大会に出場できます(メキシコ・アズテカスタジアムでの第一戦は「2-2」の引き分け!)。さてこれで「交通事故の一失点」までは許容することができる・・。そんな精神的な余裕が日本代表を解放し、サッカー内容が、彼女たち本来のレベルまで回復してくるのです。そこから日本代表が魅せたサッカーは、メキシコよりも一枚も二枚も上手でした。そして日本代表が、決定的な追加ゴールを奪ってゲームを決定づけることになります。

 日本が先制し、余裕を持ってプレーしはじめてからは、私も「サッカー内容」を楽しめるようになりました。(男子と比べれば!)スピードが遅く、テクニックレベルも低いからこそ、各チームの、また選手一人ひとりの戦術的な意図が明確に見えてくる・・だからこそ、意義のある学習機会になる・・もちろん私自身のイメージトレーニングとしても・・ってなわけです。これからは、機会を見て女子サッカーも観戦しよう・・なんて思っていた湯浅でした。

 それにしても、先制ゴールが決まるまでの「不安」は尋常ではありませんでした。日本が押していたからこそ募る不安。それもまた、私の体感レベルのハナシです。(特に日本チームの場合)そんな展開から、ワンゴールを奪われて守りきられてしまうという悔しいゲームを、これまでに(日本サッカーの歴史上)何度経験させられてきたことか・・。だからこそ、澤のヘディングシュートに喜びが爆発してしまった・・。とにかく、本当によかった。

 私は、日本代表が二点目を奪ったところで、「もうこれで大丈夫・・」と、国立競技場を後にしました。もちろん、市原臨海公園競技場へ向かうためです。




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