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天皇杯とトヨタカップ・・前半は盛り上がったのに、後半以降はまさに後ろ向きの膠着状態に終始してしまって・・ACミラン対ボカ・ジュニアーズ(1-1、PK戦1-3)・・でもまず天皇杯レポートから(レッズ対ベルマーレ、1-2、Vゴール!)・・(2003年12月14日、日曜日)

まず天皇杯、レッズ対ベルマーレ戦から。

 まあ、「局所アクションのつぎはぎサッカー」の典型ですね。サッカーは有機的なプレー連鎖の集合体だから、「常に」グラウンド全域にわたって(ボール絡み、ボールなしにかかわらず)攻守にわたるアクションが起きていなければならないのに・・。

 極端な言い方かもしれませんが、グラウンド上のサッカーを観ていて、ボールが回ってきたゾーンしかアクションが起きない・・なんていうネガティブな印象の方が先に立ってしまうのですよ。もちろん基本的なチカラではレッズが明らかに上。にもかかわらずの停滞サッカーだから、腹立たしいことこの上ありません。前半に長谷部がゲットした先制ゴールにしても、ベルマーレ守備ブロックを振り回したというわけではなく、単発のアクションをツギハギしているうちに、ラッキーにもシュートチャンスにつながった・・ってなシーンでした。

 後半も同じような流れですが、失うモノがなくなったベルマーレの勢いが倍加したことでゲーム自体はよりエキサイティングに変容していきます。そのなかでレッズ選手たちは、基本的なチカラが上とはいえ、攻守にわたるボールなしのアクションが出てこなければ内容的に相手を凌駕できるはずがないということを徐々に体感しはじめたに違いありません。「オレたちが負けるはずがない・・」なんていう思い上がりで足を止めてしまうなど、総合力で上のチームが陥るワナにはまっていたレッズというわけです。そうなったらパフォーマンスがガタ落ちになるのは当然。スタンディングサッカーでも相手を凌駕できたのはひと昔前のハナシ。当時は、テクニックや戦術能力(アイデアの質)に、それくらい大きな差があったということです。でも今では、これもまた情報化の恩恵なのですが、プロからユースまで、テクニックや戦術レベルに「雲泥の差」はなくなった・・だからこそ、レベルが高くなればなるほど、ボールがないところのプレー(=それこそ戦術的なアイデア!)で相手を凌駕しなければならないということです。言葉を換えれば、相手を、戦術的なアイデアコンテンツと、ボールと人の動きの量と質で凌駕しなければならないということです。

 そのメカニズムに対する理解が不足しているから、走らなくても、汗をかかなくても、楽して勝てる・・なんていうイージーなワナにはまってしまうということです。

 たしかに、後半8分にベルマーレが挙げた同点ゴールによって、レッズ選手たちも「これは必死にならなかったらやられてしまうかも・・」という危機感が少しは高まったけれど(プレー自体も少しは活性化したけれど)、全体的には、どうしても甘さの方が目立ってしまう・・。要は、例によって、ボールのないところでの動きが本当に緩慢なのですよ(コンビネーションで仕掛けていくというイメージが希薄!)。これでは、ベルマーレ守備ブロックを揺さぶれるはずがない。まあ、はじめからトレーニングされていないのだから(前後分断で、常に最後は個のドリブル勝負というイメージだから)仕方ないですがネ。

 対するベルマーレ守備ブロックは、レッズのボールがないところでの仕掛けが緩慢だから、余裕をもって組織ディフェンスを展開できています。もちろん守備ブロックの安定は、次の攻撃での自信レベルのアップのベースになる・・。ということで、ベルマーレの攻撃にも、徐々に吹っ切れた勢いが感じられるようになり、レッズ守備ブロックのウラを突くような鋭い仕掛けも出てくるようになったのです。

 その後の展開は、ベルマーレのゴールデンゴール(延長後半のVゴール)が決まるまでほとんど変化なしでした。レッズがより多くボールを支配して攻め上がるけれど、どうしてもベルマーレ守備ブロックの決定的スペースを突いていけない・・そして結局は、力ずくのドリブル突破チャレンジに終始してしまう・・対するベルマーレは、落ち着いた展開からのカウンター攻撃を仕掛けていく・・秀逸だったのは、単純にアバウトロングボールを前線へ放り込むのではなく、ボールを奪い返してからまずしっかりと「つないで」フリーな起点へパスを回し、そこから余裕をもった正確なタテパスやサイドチェンジパスを送り込むという落ち着いた展開&カウンターイメージを徹底していたということ・・だから、数は少ないけれど、とにかくベルマーレのカウンター気味の攻撃は効果的だった・・そしてそれが、最後の最後にゴールデンゴールとなって結実した・・。

 私は、ベルマーレのゴールデンゴールが決まった瞬間、「ウソだろ・・」とつぶやきながらフリーズしていましたよ。たしかにゲーム内容には不満タラタラだったのですが、まさか本当に負けてしまうとは・・。これで、天皇杯の大きな楽しみの一つが霧散してしまった。ラジオ文化放送で天皇杯の決勝を解説する予定なのですが、そこでレッズのゲームを解説できたらなんて心から期待していたもので・・。ホント、残念で仕方ありません。

 それにしてもオフト・レッズ。結局は、最後の最後までブレイクすることはなかった・・。オフト体制になってから、二度ほど「選手たち主体のブレイクチャンス」はあったけれど、結局は・・。まあ「次」に期待しましょう。

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 さてトヨタカップ。

 ミランもボカも、とにかく「堅いメンバー構成」でスタートしました。特にミランは、ルイ・コスタとインザーギの代わりに、カカーとトマソンですからネ。まあ、一発勝負に対応するように選手タイプのバランスを意識した先発メンバーということです。

 とはいっても、相手のボカは堅守速攻を信条としていますし、総合力で上のミランが全体的には押し込むという展開になるに違いないということで、相手のカウンターをケアーしながら自分たちでゲームペースをコントロールしなければならないミランにとっては難しいゲームになるに違いありません。

 試合の立ち上がりは、両チームともに、極端ともいえるくらい「戦術サッカー」に徹しています。まあ一発勝負だし、チカラがハイレベルに拮抗している両チームの対戦だから、極端に注意深くなるのも自然な流れなんでしょうがネ・・。とにかく、仕掛けていった方が(次の守備でのバランスを崩した方が)やられるという雰囲気が充満しているのです。最高レベルの緊張状態がつづく・・。

 そんな展開がつづいていた前半20分あたりでしたかね、ボカが、セットプレー(フリーキック)からシュートという絶好のチャンスを作り出したのは。またその後にも一本のチャンスを演出します。そして、一連のボカのチャンスの流れが終わった直後には、今度はミランが攻め上がる。シェフチェンコが、直線的ドリブルで「ガ〜ンッ!!」と攻め上がっていったのです。もちろんトマソンやセードルフも、ボールのないところで全力で上がっていきました。まさにイタリアのツボと呼べるカウンターシーン。両チームともにチャンスを作り出したのです。それは、この試合ではじめて「ゲームが動いた」時間帯でした。そしてその直後に(前半23分)、ミランが先制ゴールをたたき込んでしまうのです。ゴールゲッターはトマソン・・。

 仕掛け人は、中盤の高い位置で勝負を仕掛けてボールを奪い返したピルロ。このシーンでは、ボールを奪い返す直前から、(ボールを奪い返せると確信した)最前線のシェフチェンコとトマソンが動きはじめていました。特にシェフチェンコのスタートがよかった。そのタイミングのよい動きでボカのディフェンダー引きつけられ、その後ろでトマソンがまったくフリーになったというわけです。そしてピルロから、トマソンがフリーになることを見越したラストパスが通されたという次第。まさにイタリアのツボが炸裂した、見事な先制ゴールでした。

 この試合でのミランは、カフー、コスタクルタ、マルディーニ、パンカロのフォーバックの前に、守備的ハーフとゲームメイカーを兼任するピルロが入ります(まさにセンターハーフという呼称がふさわしい中盤の底のコアプレイヤー!)。その両サイドに、セードルフとガットゥーゾ、二列目センターにカカー、そしてシェフチェンコとトマソンのツートップコンビが控えるといった布陣です。

 まあ基本的には、ピルロ、セードルフ、ガットゥーゾのトリオによる「トリプルボランチ」と考えるのが自然・・なんてことを書いていた前半28分、ボカに同点ゴールをたたき込まれてしまいます。左サイドのバレシュケロットからのクロスに鋭く反応したイアルレイが足を伸ばしてボールに触り、それをミランGKジーダが弾いたところを、逆サイドに詰めていたドネ左足で蹴り込んだのです。これもまた見事な同点ゴールでした。

 ここから、本当の意味でゲームが動きはじめたと感じました。ミランが、ガンガンと前へ仕掛けはじめた(前線へ人数をかけはじめた)のですよ。もちろんそんな展開は、(カウンターチャンスが膨らむということで)ボカの思うつぼともいえるわけですが、そこはミラン、とにかく積極的に攻め上がっても前後のバランスが崩れないのです。両サイド、中央の「コンビ」が素晴らしい・・だからこそ、両サイドが後ろ髪を引かれることなく、相手ゴール前まで攻めあがっていける・・。

 要は、右サイドではカフーとガットゥーゾ、左サイドではパンカロとセードルフがコンビを組んで、積極的にタテにポジションチェンジを演出しつづけるということです。まあ中央のピルロとカカーは、あまりポジションをチェンジしませんがネ(カカーの守備能力が不安・・)。

 そんなダイナミックなコンビネーションもあって、ボカが同点ゴールを挙げて以降は、完全にミランがゲームを支配しはじめるのですよ。ボカの同点ゴールの二分後には、カカーが右足ボレーで、バーを直撃するシュートを放ちます。またそれ以外でも、何度か、惜しいチャンスメイクシーンを目撃しました。そんなゲームの流れを観ながら、「完全にミランのペースだ・・前半も20分過ぎからゲームが大幅に活性化してきた・・たしかにミランの方が確実にチーム力は上だ・・」なんてことを思っていたものです。

 それに対しボカも、持ち味を存分に発揮します。前半もロスタイムに入った時間帯のことです。組織的な追い込み(協力プレス)でコスタクルタまでボールを「戻させた」ボカの選手たちが、そのボールの動きを予測していたかのように、コスタクルタの両サイドからプレッシャーをかけることで、10メートルほど前方にいるピルロへパスを出させてしまったのです。もちろんピルロには、そのパスを完璧にイメージしていた、ボカの二人の選手が協力プレスをかけてボールを奪い返してしまう。それこそ組織的なプレスの輪と呼ぶにふさわしい組織ディフェンスでしたよ。そしてボール奪取後の、まさにバクハツという表現がふさわしいカウンター攻撃。そこでは、四人のボカ選手たちが、爆発ダッシュで仕掛けの流れに乗ってきていましたよ。それこそボカが狙いつづけている仕掛けシーン。いや、素晴らしい。

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 「前半は、20分過ぎから面白くなったよね・・これは後半も期待できそうだ・・近年まれにみる面白いゲームになるかもしれないネ・・」。ハーフタイムに、ジャーナリスト仲間とそんなハナシをしたモノです。でも結局は・・。後半のゲーム内容が、後ろ向きの拮抗状態という展開に落ち込んでいったのです。

 両チームともに、人数をかけた仕掛けをしてこない・・ミランにしても、(ボカのカウンターを恐れて?!)人数をかけない単発の攻めをくり返すだけ・・対するボカは、守備に人数をかけて確実に守りながら、たまに必殺のカウンターを仕掛けていく・・その吹っ切れたカウンターの勢いはレベルを超えているから、相手は守りにくいことこの上ない・・。

 たしかに、両チームともに何度かチャンスを作りかけはしましたが、結局は、決定的なシーンを演出することはままならずに「1-1」の引き分けでPK戦に突入したという次第。それにしても、後半のスタートからは、まったく力無い(リスクチャレンジが感じられない)サッカーに終始していた両チームでした。

 ここまで書いてきて、まさに「コクリ・・コクリ・・」というウトウト状態になってしまいました。もしまだ他に気付いたポイントがあれば、明日また書き足しますので・・。スミマセン・・オヤスミなさい・・。




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