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U22オリンピック代表・・前半は、自分たち主体でプレーを活性化できたのに・・ホンコン(フル)代表vsU22日本代表vs(0-1)・・(2003年10月30日、木曜日)

所用が重なったことで、どうもHPアップのペースが落ち気味。ホンコンとの日本オリンピック代表のフレンドリーマッチも、いくつかのビジネスミーティングをこなしてからのビデオ観戦ということになりました。ちょいと疲れ気味だったのですが、でも観察しはじめてすぐにゲームに引き込まれていく・・。

 私は、日本選手たちのボールがないところでのアクションを中心にゲームを観察していました。守備においても、攻撃においても。「そこ」に、選手たちのテンション(緊張感)、意志、インテリジェンス等、多くのファクターが「表現」されますからネ。現地カメラがボールばかりを追いかけるだけとか(彼らは、ボールがないところで勝負が決まるという本質を分かっていない!)、ホンコン制作の画像は低レベルなのですが、自分のイメージアンテナを一杯に広げていたというわけです。

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 さて試合。ホンコンは、フル代表とはいっても、明らかに日本よりも格下です。身体的にも、技術的にも、戦術的にも・・。だから私は、ゲーム全体として、その差をもっと「大きく感じさせられなかったこと」が残念で仕方ありませんでした。何といってもこの試合はフレンドリーマッチなのですからネ。要は、技術レベルや戦術イメージで格上の場合、ボールがないところでのプレー等を活性化させることで(意識の持ち方次第で!)、本当に「格段の」といえるくらいに相手を圧倒する内容のゲームを展開できるものだということです。

 そのことは、フットボールネーションでは不文律(≒コーチのメインタスク!)。身体的、技術的、戦術的に「僅差」を確保できていれば、その差を、自分たちの「意志」の持ち方次第でいくらでも「広げる」ことが可能だ・・ってネ。「意志」によるプレー内容の増幅分は、言うまでもなく、中盤でのダイナミック守備とか、攻撃でのボールがないところでのアクティブプレー(有効なコンビネーションの基盤としてのパスを呼び込む動きなど!)等々となってグラウンド上に現れてくるというわけです。そして僅差を、相手にサッカーをさせない程の差にまで拡大してしまうというわけです。逆に、忠実な戦術プレーを怠るなど、オレたちは強いんだと相手を甘く見たら、チーム力は地に落ちてしまう・・。だからこそ、本当に強いチームがフレンドリーマッチに臨んだ場合、相手との実力差を体感した瞬間から、その実力差を何倍にも増幅させることができるというわけです(それができるチームは、チカラが同等の相手に押し込まれてる状況を、攻守にわたる目立たない汗かきプレーを活性化することで押し返すことも容易にできるもの!)。

 前に何度か書いたように、1970年代の、美しく、強かった当時のドイツ代表が、トレーニングマッチでアマチュアチームと対戦し、20数点たたき込んでしまうといった容赦のないプレー姿勢を目撃したことがあります。相手との僅差があるからこそ、目立たないボールなしのクリエイティブ汗かきプレーにもより積極的にチャレンジできる。だからこそ彼らは、そのゲームを、自分たちにとって願ってもないトレーニング学習機会にまで価値を高めることができるというわけです。要は、互いに使い・使われるメカニズムの確認とか、積極的に仕事を探しつづけるプレー姿勢の再認識(高揚)の機会ということです。

 だから私も、ゲームがはじまって数分という立ち上がりの時点から、「もっと行け・・もっと行け!」と心のなかで叱咤していたというわけです。何せ、それほどの学習機会はめったにありませんからネ。相手は、曲がりなりにもホンコンのフル代表だし、それも相手のホームゲーム。だからこそ願ってもないイメージ充填(進展)機会だったというわけです。でもヤングジャパンは、立ち上がりから、どうも相手のペースに合わせがち。それなんですよ、私が心配しているの現象は。自分たちでは、どうしてもプレーを「チャレンジング・ペース」へシフトアップすることができない・・。

 とはいっても、前半も25分を過ぎたあたりから、彼らのプレー姿勢がどんどん活性化していったと感じました。右サイドで石川へパスが通りそうになる・・その状況で、石川へパスがわたる前のタイミングで、その大外を池田昇平が爆発フリーランニングでオーバーラップしていく(もちろん石川からパスが出た!)・・また松井と根本、田中達也が絡んだ大きなコンビネーションプレーが演出され、最後は田中達也が決定的スペースへズバッと抜け出す(松井スルーパスは相手にカットされてしまったけれど・・)等々、徐々に日本選手たちのボールがないところでのプレーに、強烈な意図と意志が表現されはじめたと感じたモノです。

 彼らの潜在的なチカラを知っているつもりだから、またまたこんな心の声が出てしまって・・。もっと早い段階で、自分たちが主体になってペースアップできるようにならなければダメだ・・相手が自分たちよりも実力的に格下なことは、最初の数分で体感できるはずじゃないか・・たしかに相手国の名前だけを見れば、最終予選の組み合わせはツイていたとも見えるけれど、相手を甘く見たら絶対に厳しい状況に陥るだろう・・自分たちで考えつづけられるような主体的なサッカーができなければ、肉を切らせて骨を断つという戦いになるオリンピック予選を勝ち抜くのは難しい・・だからこそ、一つひとつのトレーニングマッチで、自分たちが主体になった発展を目指さなければならないのだ!!・・。

 まあとにかく、前半の25分過ぎの時間帯に入ってからヤングジャパンのプレーが(ちょいと出遅れ感はあったけれど・・)攻守にわたって活気あるものに発展しはじめたことを喜んでいた湯浅だったのです。でもその数分後にコトが起こってしまって・・。鈴木啓太が二枚目イエローで退場処分。それは、明確なホームタウンディシジョン。あの「ぶつかり」は明らかに偶発でしたからネ。まあそれも体感の積み重ねとしての学習コンテンツということです。でもその後の試合内容は、まさに怪我の功名という展開になっていきます。

 私は、急に活発になった日本代表のプレーを見ていて、選手たちの「フザケルナよ!!」という怒りを感じていました。鈴木に対するアンフェアなイエロー退場が、選手たちにとっての「ポジティブな刺激」になったと感じたのです。ヤングジャパンのプレーが、怒りという「心理のダークサイドパワー」によって、目に見えて増幅したのです。守備においても、攻撃においても・・。

 残念だったのは、そんなチャレンジングペースが後半まで持続しなかったことです。15分間のハーフタイムは、それまでの出来事を「平滑化」してしまうのが常ですし、まあベンチからも攻撃的な(刺激的な)モティベーションがなかったということでしょう。後半のグラウンド上には、前半での盛り上がりとはまったく異質の「落ち着き」が支配し、例によって「セルフモティベート」がままならないオリンピック代表がいたというわけです。

 前でのディフェンス勝負や、人数をかけた組織的な仕掛けがままならず、受け身の守備からの単発攻撃に終始する日本代表。「相手はそんなに強くはないから、10人になってもリードを守り切れるだろう・・後半は落ち着いたプレーでしっかりと守り切るゲーム展開をテーマにしよう・・とにかく勝つことでチームの自信を深めることの方が大事だ・・」ってか??

 本当に、そうなんでしょうかね。「この状況」だからこそ得られる(心理的な)活性化ファクターの方が、結果なんかよりも余程大事だったのでは?? 何といっても「今」このチームに必要なのは、本物の勝負の場において逆境に陥ったときに、「攻守にわたる吹っ切れた勝負マインドを活性化させられること」なのですからネ。それに、落ち着いて勝ち切るという展開を目指したにしては、ゲームの流れをある程度「高い位置」でコントロールできていなかっただけではなく(相手の攻撃をうまく抑制できていなかった!)、実際にチャンスも作られていましたからね(守備ブロックを崩されていた・・)。

 落ち着いた展開をするための基盤は、選手たちの極限の集中力をベースにした局面での最高のアクティブプレーなのですよ。それが攻守にわたって「受け身プレー」の方が目立つようでは・・。

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 とにかく、高いモティベーションで観戦していた湯浅でしたから、前半36分に、攻守にわたって素晴らしい「リーダーシッププレー」を展開していた鈴木啓太が二枚目イエローで退場になってしまったときは本当にガッカリしてしまいましたよ。何せ、チームの物理的・心理的なコアと呼べるまで成長した鈴木啓太でしたからネ(オリンピックチームのキャプテンにまで指名された!)。たしかにその後の10分間は、心理のダークサイドパワーによって一時的にプレーが活性化したけれど(また決勝ゴールも決めたけれど)、後半は、彼の不在が目立ちに目立っていました。

 鈴木のブレイク(まあ彼の場合は、順調な発展といった方が正しい表現?!)は、オリンピックチームにとってラッキーな出来事でした。これで中盤の底に、心理的なドライバーとしてのリーダー(重心)が確立したわけですからネ。

 鈴木啓太の場合、自分が所属するクラブチームでの戦術サッカー(規制偏重サッカー)があったからこそ、(もちろん反面教師として!)自身のプレーイメージを「覚醒」させることができたと言えそうです。規制サッカーだからこそ、「アッ、あのスペースへ出ていけばチャンスになるかもしれない・・あっ、コイツを放り出してアイツで勝負をかければ高い位置でボールを奪い返せるかもしれない・・」なんていう感覚が、逆作用として「鋭敏」になっていった・・。自身のクリエイティブな意志を、戦術プランを優先するようにコントロールしなければならない戦術サッカーだからこそ、(次のディフェンスに対する高い意識をベースに=自身のクリエイティブで高質な守備意識に対する確信をベースに)飽くことなくリスクチャレンジのチャンスを狙いつづけるという積極マインドを高揚させていったと思うのです。どんな状況でも覚醒した積極マインドを維持しつづける鈴木啓太・・。

 要は、チーム戦術的に許されるリスクチャレンジを仕掛けていけるチャンスが少ないからこそ、それを狙いつづける感覚が鋭利になっていったと思うのです。

 とはいってもネ・・もちろんそれは、鈴木啓太という高い意識と強い意志を有したプレーヤーだからこその現象。普通だったら、その規制に逃げ込む(自分自身や外部に対する言い訳として活用する・・)ということになるのでしょうからネ。




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