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ナビスコカップ準々決勝・・内容では、まだまだのファーストステージチャンピオン・・マリノスvsジュビロ(0-1)・・(2003年8月13日、水曜日)

ナビスコカップ準々決勝。もちろん、ファーストステージを制したチームと二位チームとの対戦となったマリノス対ジュビロ戦を、ポイントを絞り込んで、短くレポートすることにします。

 後半がはじまってから、「このポイント」だけをコアにゲームを観察していました。マリノスが、流れのなかでジュビロ守備ブロックを振り回すような縦横のボールの動きを演出できるか・・そしてそれをベースにうまくスペース(決定的スペース)を突いていけるか・・。でも結局マリノスは、強引なドリブルでの切り崩しや、サイドからのアバウトクロスとセットプレーからしかチャンスの芽を演出できない・・。それは、(タイミングを見計らった・・また勇気をもった)ボールのないところでの「厚い動き」と素早いタイミングの仕掛けパスが(互いの仕掛けイメージが!)まだうまくシンクロしていないからに他ならない・・。

 今シーズンがはじまった当初、マリノスの「前への実効ある勢い」が目立ちに目立っていました。昨シーズンまでは、本来の目的とは少しずれたイメージで、ボールをキープすること自体(ボールポゼッション)に腐心していたマリノス。ポゼッションの本当の意味は、パス出し選手とレシーバーサイドの両方が、必殺の仕掛けタテパス(急激なテンポアップ!)を明確にイメージするところにあるのに(そのタイミングを計るためのチーム全体で演出するタメ・・とも言えそう)。それがなければ、相手にボールをキープさせられているということになってしまう・・。

 それが今シーズンの立ち上がりは、まさにイメチェンの「勢い」で、タテへ「早いタイミング」で仕掛けていくようになったのですよ。もちろん、最前線をサポートする、確信の勢いが込められた後方からのボールのない動きも含めてネ。だからこそ観る側に、「これは・・」と思わせるだけの内容があったのです。岡田監督のウデを感じたものです。でも試合が進むにつれて、どうも、そのタテへの勢いが小さく縮こまっていってしまった・・。

 たしかに最後はファーストステージを制したのですから大したものなのですが(ユー・サンチョルの加入によるところが大きかった?!)、彼らのサッカーに、まだまだ多くの課題が残されていることも確かな事実なのです。素早く、広いボールの動きをベースにした、仕掛けイメージの高質な「シンクロ」・・。

 そのポイントで、藤田が抜けたとはいえ、まだまだジュビロに、明らかに一日の長がありました。これはもう、選手たち全員が共有するプレーイメージの差としか表現しようがありません。シンクロした仕掛けイメージが深く浸透しているからこそ、自然とリスキープレーにもチャレンジしていける(動きのオートマティゼーション=拙著「闘うサッカー理論(三交社−1995年)」を参照)というわけです。

 この試合では、ユトレヒトへ移籍した藤田に代わって、ジヴコビッチが先発。そして、藤田にように攻守にわたって走り回り、藤田のように積極的な決定的フリーランニングを仕掛け、ボールを持っても藤田のように勝負に入っていったのです。もちろん、一つひとつのプレーには違いがあるにしても、全体的な「アクションタイプ」は酷似していた・・。それこそ「伝統」?! まあ、大したものだ。

 そのジヴコビッチが、中澤に対する報復行為でレッドカードを受け(後方から蹴り返してしまった・・前半15分ころ)、それ以降は10人で戦わなければならなくなったジュビロ。それでも、ジュビロ選手たちには、マリノスの「仕掛けコンテンツ」が明確に見えていたに違いないから、マリノスの強引なプレーを、最後まで余裕をもって守り通していしまったという次第。そのことは、観ているこちらにも明確に伝わってきたものです。何せ、タテへ仕掛けていくタイミングが常に遅れ気味ですからネ(まあ、ボールがないところでスペースへ押し上げていくタイミングが遅い・・とも言える)。ジュビロ守備ブロックには、仕掛けのリズムがミエミエだったに違いない。

 マリノスは、たしかに無為なポールポゼッションシーンは大幅に減った(改善された)・・それでも、まだ「組織的な仕掛けリズム」は、相手守備ブロックを混乱させるくらいの「危険レベル」にまでは達していない・・。

 「危険レベル」を言葉で表現するのは難しい作業なのですが、例えば・・: 中盤でボールをもった相手が、なにげない動作から、素早いタイミングで「タテパス」をスペースへ送り込む・・そこには、最前線からスッと戻った(相手マークからフリーになった)トップ選手や、後方からスッと押し上げた味方が入り込んでいる・・そして相手にボールを持たれて「振り向かれて」しまう・・守備ブロックが、「おっと・・」という感じの危急状態と「唐突」に向き合うことに・・決定的な仕掛けを繰り出していける領域で、ある程度フリーでボールを持たれてしまう=最終勝負の起点を作り出されてしまう!・・。

 これは「リズム」の問題ですから、表現は微妙になるのですが、とにかく「何気なく・・そして素早く」というのがキーワードです。相手の仕掛けタテパスが、何気なく、素早いから、どうしても守備ブロックはその状況を十分に予測できない(対処が遅れる・・慌てて対処せざるを得なくなる等)・・。

 ジュビロの仕掛けリズムのキーポイントは、何気ない素早さで決定的スペースを突いてくるところにある・・ということです。もちろん、ボールがないところでの「イメージがシンクロしたアクション」も含めてネ・・。だからこそ相手にとって怖いことこの上ないということです。

 ちょいと分かり難かったかもしれませんが、とにかく、組織的な仕掛けでは(もちろんそこに単独勝負ドリブルがミックスされたとしても)、味方同士のプレーイメージのシンクロレベルが、決定的な意味をもっているということです。

 その視点で、まだまだ多くの課題を抱えているマリノス。これからの発展ベクトル(監督による発展方向の意識付けコンテンツ)に注目しましょう。




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