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ナビスコカップAグループ第5節・・ヴェルディvsレッズ(1-1)・・また、ジーコジャパンの守備ブロックについてもちょっとだけ・・(2003年7月3日、木曜日)

ライン(守備)のヴェルディーとストリクト・マンマークのレッズだから守備のやり方を視点の中心におけば面白い「対比」になるかもしれない・・なんてことを、ゲームがはじまってすぐに考えていました。

 そんなコントラストが楽しみになった背景には、久しぶりの「スタジアム観戦」ということもありました。やはりスタジアムで観た場合は、俯瞰(ふかん)イメージを描きやすいですからネ。ボールがプレーされている最前線ゾーンを視野の端っこに置き、実際には、攻めているチームの最終ラインが、次のディフェンスに対してどのような「イメージ的な備え」をしているのか・・とか、一方のサイドでの仕掛けアクションが佳境にはいっているときに、逆サイドや中央ゾーンでの、ボールのないところでのだまし合いドラマに舌鼓を打つなんてネ・・。

 とはいっても、両チームともに、簡単には相手の守備ブロックを振り回す(最終勝負を仕掛けていく)ところまでいけないから(両ディフェンスブロックともに余裕をもって相手攻撃を抑えられているから)、どうも両チームの守備システムの機能性を分析するモティベーションが高揚してこない・・どちからといえば、両チームともにリスクチャレンジが少ない退屈なゲーム展開に、内容に対する興味が徐々に薄れていってしまう・・。

 最終ラインと中盤ラインを「四人x四人」で組むというオーソドックスな「チーム戦術」で建て直し作業をスタートしたヴェルディーのアルディレス監督。中盤の林健太郎と三浦淳宏を最終ラインに下げました。まあ林については、まだケガが癒えていない米山の代わりということでしょうが、三浦については、「やはりヤツには、最終ラインからの押し上げの方が合っている・・」という判断なのでしょう。

 これまで中盤でプレーしていた三浦は、ミッドフィールドでダイナミズムを生み出すという視点では物足りないことこの上ありませんでしたからね・・。ボール扱いは上手いし、ドリブル勝負でも抜群のパフォーマンスを発揮する三浦淳宏。ただ、攻守にわたって、ボールがないところでしっかりと仕事をさがしつづけるという姿勢が停滞したままだから(クリエイティブなムダ走りという発想が深化しないから!?)、ボールのタッチ頻度が低いまま・・だから、単独ドリブル勝負だけではなく、彼がコアになった仕掛けコンビネーションも出てこない。たしかにボールはしっかりとキープできます。それでも、二人、三人と、相手ディフェンダーを抜き去って決定的な勝負を仕掛けていけるわけではないし・・。

 以前わたしは(シドニーオリンピックの頃でしたかネ)、三浦淳宏をテーマにして「天才よ・・覚醒せよ!」というコラムを書いたことがあります。とにかく、才能あふれる若者が

伸び悩むことほど(ときには消えていってしまうことほど)心痛む現象はありませんからネ。私も、フットボールネーションも含め、もう本当に数100人単位で「そのこと」を体感していますから、「悪循環の気配」を明確に感じられるというわけです。とにかく三浦には、アルディレスによって完全復活を果たして欲しいと心から願っています。

 アルディレスがイメージしている攻撃プロセスの本筋は、何といっても、中盤での「素早く、広いボールの動き」。もちろんそのためにも、ボールがないところての動きを活性化しなければならないわけですが、平野にしても、小林慶行にしもて、ボールがないところでのアクションとシンプルプレーに対する意識が高まってきていると感じます。最初の段階としては、アルディレスの「意識付け作業」が、うまく機能しているようです。

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 さて、レッズ。やはり、山瀬の不在が目立っていました。ハンス・オフトから、(実質的な!!)「追い越禁止令」が出ていることは、もう誰もが認知していることですが、前にも書いた「山瀬効果」は、そんな「後ろ向きの戦術指示」を自分たち主体で超越するための心理・物理的バックボーンでしたからね。「山瀬は、オレが上がっても、次の守備でもしっかりと機能してくれる・・」。そんな心理バックボーンが不在だから、再び、明確な「前後分断サッカー」に陥ってしまったという構図なのです。

 「山瀬効果」のもっとも大きな部分は、何といっても、彼自身の高い守備意識に対して周りの味方が信頼を置いていることで、後方からのサポートの動きが活性化し、仕掛けに絡む人数も増えた(だから攻撃の変化をよりうまく演出できるようになった!)ということです。だから山瀬は、「タテのポジションチェンジの演出家」とも呼べそうな・・。

 でもこの試合では山瀬がいない・・。もちろん長谷部もいい選手ですが、まだまだ山瀬ほどは信頼されていないから、後方からの押し上げも「より慎重」になったと感じます(まあそれには、内舘の不在、山田がケガ気味ということもあったのでしょうが・・)。ということで、ハンス・オフトのチーム戦術を「超越していく」ための心理的バックボーンが脆弱なレッズということになってしまったというわけです。

 それでも、永井のクロスから、ファーサイドに詰めた長谷部がスライディングシュートを決めた先制ゴールは素晴らしかったですよ。完全に、ヴェルディーが作る「ラインのウラ」を突きましたからネ。それも二度もつづけて・・。最初は、左サイドの永井のウラ取り・・そして逆サイドでシュートを決めた長谷部のウラ取り。こうなったらもうレッズの「ツボ」です。そこからは、例によっての「ストリクト・マンマーク守備」を強化することでリードを守りつづけるのです。そう、誰もが、もうこれで決まったと確信するところまで。でも結局ロスタイムに、小林慶行の「才能ゴール」で引き分けに持ち込まれてしまって・・。

 これでは、レッズファンが納得できないのも当然でしょう。試合後には、挨拶にきた選手たちに対し、しっかりと「愛のムチ」であるブーイングを浴びせていました。本当に頼もしい限りじゃありませんか(レッズ選手たちは本当に幸せ者だ・・)。そのブーイングは、まさに正当なものでした。何といってもヴェルディーは、ロペスの退場で、残りの30分間を一人足りない状態で戦わなければなりませんでしたからネ。にもかかわらずレッズは、パッシブに(受け身に)守るばかり。ゲームをしっかりとコントロールできなかっただけではなく、何度も決定的ピンチを迎えてしまい、そして最後は・・ってな具合だったのです。

 もちろんそれには、以前は中央へ「個の勝負」で攻め込んでいくというごり押しの仕掛けをくり返していたヴェルディーの「攻撃の質」が向上しているという背景もありました(ボールの動きがエネルギー源=ヴェルディーの、ボールがないところでの動きを基盤にしたボールの動きは活性化している!)。まあ「あの」アルディレスが監督に就任したことだし、基本的な「個の能力」は高いヴェルディー選手たちですからネ、そのうちに、「組織プレーと個の勝負プレー」が、うまく有機連鎖を魅せるようになることでしょう。だから彼らの発展プロセスにも興味がつのるというわけです。特に、才能あふれる小林慶行に、ホンモノの「プレー発想ブレイク」の兆しが見えてきた?! まあ、彼も含めて、ヴェルディーの今後に注目することにしましょう。

 さて、レッズ。ディフェンスの安定度は本当に向上しています(≒実効ある、ホンモノの守備意識の向上!)。ところが、それが「次」につながらない・・。(いつも書いていることですが・・)ディフェンスの安定度が、次の、創造的なリスクチャレンジ溢れる攻撃のベースになっていないという不満が残るということです。もちろん、「山瀬効果」が効力を発揮していたときは、そんな、攻撃に「タテの変化」が加味されてくる傾向は見えてきていましたがネ・・。

 まあ、レッズについては、「J」の再開ゲーム(対大分戦)を観戦しますし、その後テレビ埼玉の討論番組(レッズナビ)にも出演する予定です。そこで、うまくポイントを押さえることができればと思っているのですが、さて・・。

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 昨日スタジアム観戦し、その後帰宅して日本代表のビデオを観はじめたことで考え込んでしまったのですよ。それでアップが遅れてしまったという次第。

 そこで考えはじめていたテーマは、日本代表の最終ラインの基本的な発想。つまり、ラインを積極的に上げるなど、ラインをコントロールしていこうとする(決してオフサイドトラップをかけるのではなく、あくまでもラインコントロール!)発想と、ラインを積極的に上げず、従来型の、はじめから「人」を見る(最初から、相手トップ選手に対する基本マークポジションを取る)という発想の違いです。

 もちろん、最初から人をケアーするタイプの守備戦術でも、ある程度はラインをコントロールしますから(ある程度はラインを上げながらマークを受けわたすから)明確な比較は難しいのですが、それでも、積極ラインコントロールを標榜する守備ブロックの意図は、コンパクト守備ブロックから、なるべく高い位置でボールを奪い返し、できる限り「人数をかけて」攻め上がるという攻守にわたる「一連の流れ」に対するイメージが基盤になっているなど、明確に見えてきますからね・・。

 まあ、対戦相手との「チカラ関係」も含め、最終ラインの積極的な押し上げをベースにしたコンパクト守備ブロックの形成による効果と、最終ラインの押し上げが不十分なときの中盤守備ブロックが陥る困難の程度の比較(そこでのボール奪取イメージの比較と、次の攻撃イメージの比較など)・・なんてことになりますかネ。ちょっと難しいテーマですが、それをいま比較分析しているというわけです。もちろんそこはサッカーですから、数学的なロジックフローを基盤にしよとすればするほどワケが分からなくなってしまいますから、なるべく「簡単・シンプルな表現・考え方」をベースにしなけけばいけませんがネ・・。

 またそこでは、ジーコのいう「リスク・マネージメント」という考え方も考慮しなければいけません。最終ラインが「安全に、確実に・・」という発想でプレーする場合、リスキーなラインのコントロール(もちろんタイミングの良いラインブレイクも含む)は確実に「アンチ」ですからね。また次の攻めでも、確実なパスばかりを標榜していたら(リスクチャレンジパスがなければ)確実に「遅く・停滞」したものになってしまいます。

 まあとにかく、ビデオを観ながら、詳細に分析している最中です。大変な作業なのですが、とにかく自分自身のためにも・・と継続している次第。そのなかで、発見したいくつかの「ロジック・フロー」を、機会をみて暫時発表していくつもりです。




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