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ジーコジャパン(21)・・やはり今回の欧州遠征を現場で観察することにしたのは大正解・・本当によかった・・(ルーマニア対日本、1-1)・・(2003年10月11日、土曜日、もちろん現地時間)

この時点でルーマニアは、2004年ヨーロッパ選手権へ向けた地域予選突破の実質的な可能性は「ゼロ」ということになっています。もちろん「理論的な可能性」は残されていますが、もしこの状況で(その状況はスミマセンがご自分でお調べ下さい)予選通過ということになれば、まさにそれはサッカーの神様の・・ということになります。ということで、この対戦は「次のドイツワールドカップ」へ向けた新チームの「キックオフ・ゲーム」という位置づけですかネ。監督も、それまでのヨルダネスクがつづけることになっていますからネ。

 とにかく私は、来年のヨーロッパ選手権へ向けた地域予選で、ノルウェーやデンマーク、はたまたボスニア・ヘルツェゴビナという強豪国に対等にわたりあった「強い」ルーマニアに、高いモティベーションで試合に臨んでもらいたかったというわけです。それがあってはじめて、日本代表にとって、かけがえのない学習機会になる。とはいっても、やっぱり状況的には難しいのかな(今日の夜に、予選リーグの最終戦があって決まる・・ルーマニアは既に全試合を消化済み)・・。

 余談ですが、それにしてもルーマニアではドイツ語や英語が通じにくい。「でも英語はポピュラーになってきていますよ・・それに対してドイツ語はね・・私たちドイツのことあまり好きじゃないし、ドイツ語は文法も難しいから誰も勉強したがらないしネ・・それよりも、フランス語とかイタリア語とか、私たちの親戚に当たる言葉の方がポピュラーよね・・」。まあ、そういうことですかネ。

 そのことは、ドイツの友人たちにも言われていましたよ。「ルーマニアは、オレたちにとっちゃ東欧じゃないんだよ・・そうじゃなくて、ラテンの国・・」。ナルホド・・。

 あっと・・そんなことを考えているうちにゲームがはじまってしまいました。

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 「抜けろ! 抜けろ!」。そのとき思わず声を出していました。決定的な仕掛けの「起点」ができた状況で、最前線の高原と柳沢に対してかけた声。

 キックオフ後8分くらいでしかネ。ここでいう起点は中田英寿。そこから例によっての素早いタイミングで決定的スルーパスが飛んだ・・でも高原が反応していなかった(事後的に反応!)・・というわけです。

 でもその数分後のシーンでは、起点の中村(?!)からのタテパスが、ピタリのタイミングで決定的スペースへ抜け出した高原に合ってチャンスにつながりました。もちろんそこでは、「それだよ!」なんて声が出ていましたけれどネ。

 同じようなケースで、前半では何度か、中田ヒデと高原の間での意志の疎通に問題が見えた・・中田は決定的スペースへのスルーパスをイメージし、高原は、足許パスからのドリブル勝負をイメージした・・。まあ、そんな「イメージ・コンビネーション」の精緻化はこれからということなんでしょうが・・。最終勝負でのイメージシンクロをテーマにしたトレーニングに、より多くの時間をかける必要があるのかも・・。

 最終勝負の仕掛けプロセスについてですが、日本の場合はやはり、鋭くボールを動かす(パス)コンビネーションが基調でしょう。もちろんそのなかに、アレックスや山田の直線的なドリブル突破チャレンジや、中田英寿、中村俊輔たちが繰り出す突破ドリブルやタメのドリブルなど「個の勝負」がミックスされてくれば理想的というわけです。そこで、個の勝負と組織パスプレーでの最終勝負が、互いに補完しあうようになればいいということです。個の勝負が足りなければ、組織での仕掛けにも勢いが乗ってこない(相手も分かっているから怖くない)・・また組織パスコンビネーションでの崩しプレーが少なすぎても同じ・・要は、その両者がバランスよく現出するのが理想的ということ・・。そのバランスがあるからこそ、守備が、相手の仕掛けプロセスに対する狙い(予測)を絞りきれずに苦労する(どちらかの仕掛けに的を絞ることで、守備イメージも引っ張られ過ぎてしまうケースが多くなるということです。

 ここでまた普遍的な概念をもう一度。攻撃においてもっとも重要なキーワードは「変化」・・というわけです。

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 さて試合。日本は、まあ、例によって立ち上がりはちょっと不安定ではありましたが、その後は攻守にわたって立派な内容のゲームを展開しています。

 中盤ディフェンスでビビることがなく、こちらがイメージする状況で(相手を追い込んで)しっかりとボールを奪い返せているし、そこからの攻めの展開でも、「逃げの横パス」はかなり減っていると感じたのです。また仕掛けにしても、前述した「変化」を演出するためのリスクチャレンジプレーが発展していると感じる。フムフム・・。

 それでも先制ゴールは、ルーマニアに奪われてしまいます。前半15分の、まさにワンチャンスを決められた!

 中盤での、ムトゥーと坪井によるヘディングの競り合い・・そこでこぼれたボールがルーマニアチームにわたる・・それを予測していたムトゥーが、タテへの決定的フリーランニングをスタートする・・右サイドに広がる決定的スペースへ向けて・・案の定、そこへタテパスが出てくる・・でもムトゥーは、完璧に坪井にマンマークされていた・・スピードでも負けていないし、寄せのポジショニングもいい・・競り合い状況で、完全にディフェンダーが有利なカタチでボールに間に合っていた坪井・・「もう大丈夫、坪井がクリアしてくれる」・・こちらはそう確信していた・・それなのに・・結局は、ものすごく上手い手や身体の使い方で(ほとんどファール?!)坪井を抑えたムトゥーに先制ゴールを決められてしまう・・上手くて強いムトゥー・・。

 チーム戦術的に少なくとも同じレベル同士が対戦した場合、最後は「個のチカラ差」で勝負が決まってしまう・・。そんな現代サッカーのセオリーそのままの展開になってしまったということです。

 それにしても坪井。先制ゴールの前にも、ムトゥーをマークしていてひじ打ちを食らったり、手で引っ張られたりバシッと張られたりと、かなりやられていました(まあもちろん坪井のマークもかなりハードでしたが・・)。でも先制ゴールのシーンで完全に「やられた」後は、逆に、坪井もやりかえすシーンが増えましたよ。彼にとってこの試合は、願ってもない学習機会になった?! 世界の勝負では、「やられる」ことが当たり前。そのことを前提にプレーイメージを構築しなければ確実に敗北してしまうのですよ。例えば、1998年フランスワールドカップ、日本対クロアチアでの唯一のゴール。それは、中西に「目つぶし」を食らわせてフリーになったシューケルが決めたというシーンでした。

 それでも日本代表も「立派」に押し返します。何度か惜しいチャンスを作り出した後の前半31分。小野がドリブル勝負を仕掛け、そこで完璧に相手を振り回して決定的クロスを返したのです。いや久しぶりに、小野が秘める「天賦の才」を目の当たりにしました。「そうだよ! やれば出来るんだよ!! だから、失敗してもいいから、もっともっとチャレンジしていかなければならないんだ!!」。そんな思いがアタマを駆けめぐったものです。もちろんそのプレーは、彼自身をも強烈に刺激したに違いない・・。そこからの彼のプレー姿勢が、目に見えて積極的になっていったのです。もちろん攻守にわたるリスクチャレンジ・・。そんな積極的で実効ある小野のプレーも(チュニジア戦も含め)私の観戦姿勢を「前のめり」にしていった大きな背景要因でした。

 まあもちろん「前のめり」の主因は、日本代表のプレー内容が、全体的にも素晴らしかったことです。私は、アタマのなかで叫びつづけていました。「とにかく何でもいいから同点にしろ! 素晴らしいゲーム内容だし、ルーマニアだってかなりやる気でプレーしているのだから、世界へ向けたホンモノの自信を深めるために(世界トップゾーンへのブレイクスルーを果たすために!)、とにかく何が何でも結果をもたらすことが大事なんだ・・。とにかく今がその時だ!!」。

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 さて後半。やってくれました。日本代表が同点に追いついたのです。

 後半12分。中田英寿のタテパスに、例によって、サイド方向への動きから一気にタテへ抜け出した柳沢のフリーランニングがピタリとシンクロした・・そこからの柳沢の落ち着いたシュートも、まさに本物のストライカーの雰囲気を振りまいていた・・素晴らしい・・このシーンでは、同時に逆サイドにいた高原も、柳沢と同じくウェーブの動きでオトリとなり、相手守備を混乱させていた・・この瞬間、中田ヒデには二つのラストパスの可能性があった・・素晴らしいチャンスメイク・・素晴らしい同点ゴール・・これで日本代表にとって、この試合コンテンツがかけがえのない価値をもった・・。

 よし、ここまできたら勝ち切るゾ!・・こんなチャンスはめったにない・・基本的なレベルが高く、ある程度以上にやる気が乗りはじめたルーマニア代表に対し、彼らのホームで、それも内容的が伴ったプレーで勝利をおさめる・・それは、昨年ウッジで対戦したポーランド代表との試合を彷彿させる・・あの試合は、当時の日本代表にとってものすごく重要なステップだった・・あの試合が、ワールドカップ本大会へ向けたチームに、ホンモノの自信ベースを与えたのかもしれない・・また表面的には不調をかこっていた中田ヒデにとっても、復活をアピールする最大の機会になった・・その再現だ・・。

 私は、そんなことを一気に考えていました。そしてそこからの日本代表は、何度も、ホンモノの(必然要素テンコ盛りの)シュートチャンスを作り出していくのですよ。個と組織がうまくバランスした仕掛けを基盤にして・・。

 後半22分・・中田から中村へ・・そこからダイレクトで左へ流れた高原へ・・またそこから早いタイミングのクロスが、斜めにニアポストスペース走り込んでくる柳沢へ・・そして相手マークを背負いながら(相手を身体で押さえ込みながら)強烈なシュートを見舞った柳沢・・相手GKにギリギリのセービングで防がれてしまったとはいえ、目の覚めるようなチャンスメイク、素晴らしいシュート・・とにかく、よくシュートまでいった!!・・なんてネ。

 また後半39分・・右サイドで山田から中田ヒデへとタテパスが通る・・そしてフリーで正確なタテパスを受けたヒデから、ニアポスト勝負で飛び込んできた味方へのラストパスが送り込まれる・・最終勝負に飛び込んできたのは、言わずと知れた柳沢・・決定的フリーランニングが冴えまくる・・結局ゴールには結びつかなかったけれど、彼もまた、ストライカーとして、本物のブレイクスルーのキッカケを掴んだ?!

 同点になってからの日本代表のプレーリズムは、攻守にわたって落ち着いたものでした。しゃにむに中盤でボールを奪いにいくというアップテンポのリズムではないけれど、ボール奪取をイメージした、ココゾ!のテンポアップが目立つ・・また攻撃でも、落ち着いたボールの動きのなかから、急激なスピードアップをベースにした「ズバッ」という仕掛けが繰り出される・・。

 ここで用いた「落ち着いた・・」という表現ですが、例えば攻撃では、以前に使った「逃げの横パス」とは基本的に違うのですよ。そこには、明確に「次の爆発的な仕掛けのための準備・・そのイメージ構築のための時間的余裕・・」という雰囲気が感じられるのです。もちろんそれは、試合内容が良く、特にボールホルダーが余裕をもってプレーできたからに他なりません。だから余裕の「準備プレー」を演出できたというわけです。もちろん内容的にアップ、アップ状態での横パスだったら、それには「逃げ」という意味合いしか込められないだろうし、確実に「次の仕掛け」にはつながらないでしょうがネ・・。

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 日本の守備ブロックですが、本当にうまく機能していたと思いますよ。もちろん何度かミスがあったことでクロスを上げられてピンチを迎えはしました。それでも、全体的な出来は本当によかった。

 もちろんそれは、中盤ブロックと最終ラインの守備イメージがうまくシンクロしはじめているから。中盤ディフェンスを締める稲本潤一と、ボール絡みだけではなく、ボールなしシーンでもパフォーマンスが高みで安定してきた小野伸二の守備的ハーフコンビばかりではなく、中村俊輔、中田英寿もまた「実効ある中盤ディフェンス」を魅せるのです。それも、目立たないところでの実効ディフェンス。中田英寿については、いつものハイパフォーマンスということですが、中村俊輔については、どんどんと良くなっているということで特筆モノということにしなければ。

 もちろん中村俊輔にしても小野伸二にしても、守備におけるギリギリの競り合いでは、まだまだ課題山積み・・というか、不安要素山積みといったところですが、この試合では、その不安要素が「組織的」にカバーされていたと感じます。要は、弱いところをカバーするという意識がチーム内に浸透してきているということでしょう。

 まあ攻撃では、中村にしても小野にしても、存分に持ち味を出していましたからネ。それもこれも、彼らの守備が安定したからに他ならない・・。やはりサッカーでは、守備がすべてのベースなのだ・・。

 とにかく、上手いだけの選手から、本物の良い選手へと発展をつづけている彼らに対する期待が、私のなかで具体的なイメージをもちはじめた・・と感じた今日の試合でした。

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 その他では、何といっても中澤。もう彼を最終ラインから外すことは出来なくなった・・?! とにかくこの二試合で彼が示したパフォーマンスは、レベルを超えていたと思っている湯浅なのです。

 これで、最終ラインだけではなく中盤でも、具体的な「競争関係の陣容」が見えてきた・・?! ジーコは、これからどのようにチームの「健全な緊張関係」を高みで維持していくのだろうか・・たまには選手の弱さに対する怒りのリーダー(≒真のモティベーター)にも変身しながら(?!)・・。興味が尽きません。

 ちょいと舌っ足らずの部分や確認しなければならないところもあるので、この試合もまたビデオで見直さなければ・・また、やはり今回の欧州遠征を現場で観察することにしたのは大正解・・本当によかった・・なんて思っている湯浅です。

 私は明日ドイツへ移動し、火曜日には帰国する予定。ではまた・・




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