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ジーコジャパン(12)・・さてコンフェデ初戦・・内容は低調でしたが、とにかく勝ってよかった・・日本代表対ニュージーランド代表(3-0)・・(2003年6月19日、木曜日)

コンフェデに向けて、中田英寿の気合いが乗っている?! 彼が、トレーニングのレギュラー時間の後に、全力でのシュート練習をしたとか。それも、他の選手たちがクールダウンしている目の前で。

 私は、それには三つの背景があるのかも・・なんて思っていました。まず、ニュージーランドが守備を固めてくることは自明の理ですから、とにかく中距離シュートで活路を見出そう・・その牽引役はオレだ・・という決意。次は、チームメイトたちへの心理的なデモンストレーション。やるぞ! 気合いを入れるぞ! そして三つ目が、(まあこのことが全てのベースなんでしょうが・・)今回の大会を自分自身の市場価値を上げるための絶好の機会と捉えていること。

 要は、いまのパルマでの微妙な立場を意識しているということです。移籍をするにしても、(移籍金が巨額ということで)今のところフランスリーグのマルセイユからしかオファーがない状況ですからね。とはいっても、良いプレーをするためには自分だけが頑張ってもどうしようもない。だからチームメイトたちへも気合いを注入しなければならないと強烈に意識しているということです。

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 さて試合。

 両チームともに慎重な立ち上がりです。ニュージーランドは、攻守にわたって基本的なポジショニングバランスを極力崩さないというイメージ。また日本も、最終ラインと守備的ハーフコンビがきっちりとブロックを維持しつづけ、それを基盤に、確実にパスをつないで攻め上がっていくというイメージ。

 ニュージーランドの守備は、ちょっとオールドファッションの(古いタイプの)コンベンショナル(常套的)ゾーンディフェンスです。要は、互いのポジショニングバランス維持を最優先にイメージにしているということです。そのこともあって、次のパスレシーバーへのチェックが遅いだけではなく、ボールがないところで走り込んだ日本選手に対するマークが甘くなる傾向が強い。だから、日本の選手たちは比較的イージーにボールを扱えるし、パスを受けてから簡単に振り向ける・・またしっかりとパス&ムーブで決定的スペースへ走りつづければ、比較的フリーになりやすい・・。

 それでも、どうも日本代表の全体的なボールの動きだけではなく、次の仕掛けパスが鈍い・・だから、決定的フリーランニングを仕掛けても、それをうまく活かせない・・そして徐々にボールがないところでの選手たちの動きも鈍くなっていく・・また、一対一ではニュージーランド守備も弱くないからドリブル突破もままならない・・。これでは、日本代表が、ニュージーランド守備ブロックを振り回すようなチャンスメイクができないのも道理です。

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 ニュージーランドは、選手個々の単純総計力だけではなく、戦術的な発想レベルでも明確に日本よりも劣ります。それなのに、たしかにボールをキープしている時間は長いにもかかわらず、相手守備ブロックを崩すというシーンがあまりにも少なすぎる。横パスが多すぎる・・タテへの仕掛けパスと連動する「複数」のフリーランニングをベースにした危険なコンビネーションが出てこない・・だから、どうしても「単発な仕掛け」という印象をぬぐえない・・そして(仕方なく?!)無理な状況での単独ドリブル勝負を仕掛けていって潰されてしまう・・。そんな、稚拙オフェンスの繰り返しなんですよ。

 要は、ボールをキープする組み立てばかりを意識し過ぎている日本代表ということです。ポゼッションサッカー?! たしかに自チームでボールをキープすることは大事ですが、それに対する意識が強すぎると、周りの見方のボールがないところでの動きが沈滞し、次のタテへの仕掛けが鈍くなってしまう。もちろんその間に、相手守備もしっかりとブロックを組織してしまう。

 タテに変化の少ない仕掛け・・。これではニュージーランド守備ブロックは、常に前を向いて読みディフェンスを仕掛けられますからね。もっと、タテへのボールの動きを活性化させることでニュージーランド守備ブロックを「タテ」にも振り回さなければ、ウラや逆サイドのスペースを使えない・・。

 それには、ボール支配に対する意識が強すぎるからイージーな横パスが増え、仕掛けパスへのマインドが沈滞してしまう(比較的楽にパスをつなぐことができるから!)という攻めの視点だけではなく、高い位置でボールを奪い返せないという、守備を主体にした分析もできます。中盤でのディフェンス勝負が甘く、よいカタチでのボール奪取がうまくいかなかったということです。そのことで、次の攻撃での勢いも殺がれ気味になっていく。

 何度、声が出そうになったことか。「オイ! ボールがないところで狙ってないぞ!」ってね。とにかく、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するチェック&マークが甘いのですよ。だから、高い位置でのボール奪取がままならないし、ボールを奪い返してからの攻めのリズムも上がらない。

 やはり、ゲームペースを決めるのはディフェンスなのです。それが活性化しさえすれば、次の攻撃における「タテへの」仕掛けマインドも自然と積極的になっていくということです。

 だから先制ゴールの場面が目立っていた・・。高い位置でのボール奪取が、完璧なカウンターにつながりましたからね。中盤で稲本が仕掛けたボール奪取から、トン・トンというリズムでタテパスと勝負の横パスがつながり、ラッキーな状況で中村俊輔へボールがこぼれたことで生まれたゴール。相手が攻め上がろうと重心を前へかけた次の瞬間に(高い位置で)ボールを奪い返し、そこから素早くタテへ攻め上がったからこそ生まれたゴールだったというわけです(そこでの中村俊輔のシュートタイミング&コースに拍手!!)。

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 オフィシャル国際大会初戦での重要な勝利を飾ったのに、どうもネガティブな短評になってしまう・・。あれ程のチカラの差がありながら、勝負所の時間帯において、自分たちが主体になって(もちろんダイナミック守備をベースに!)ペースをアップさせていけない等、日本代表が展開したサッカーの内容に納得がいかないのです。要は、彼らが展開したサッカーに、次のステップアップの可能性(方向性)が明確に感じられなかったということです。

 もちろん、自主トレの甲斐あっての(?!)中田英寿の中距離キャノンシュートや(この二点目は、アレックスからのタテパスをキッカケに、そこから素早く直線的にタテへ突っかけていったからこそ生まれた!)、中田英寿の泥臭いキープ(タメキープ!)からのスーパースルーパス(高原の、巧みなポジショニングとトラップからの素早いシュートにつながった!)といった優れた最終勝負シーンだけではなく、徐々に代表チームに慣れてきた山田のパフォーマンスアップ(三点目につながった、うまくフリーでゴール前ゾーンに走り込んだ中村俊輔へのラストクロスは絶妙!)など、部分的にはポジティブな発見もあったわけですが・・。

 まあ大会初戦ですし、相手がニュージーランドですから・・。とにかく次のフランス戦では、日本代表が、何らかの「発展の可能性」を感じさせてくれることに期待しましょう。

 あっと、いまフランス対コロンビアのゲームがはじまりました。それに、私のアタマも回転しなくなりましたから、この試合についてはこんなところで・・。




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