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2003「J2」・・今シーズンは大混戦の予感・・横浜FCvsアルビレックス新潟(1-0)・・(2003年3月29日、土曜日)

「前半は、まったくスライディングしていなかったじゃネ〜か・・このタコ!!・・ってなことですかネ・・」。

 久しぶりに、J2を観てきました。横浜FC対アルビレックス新潟。横浜FCのホームです。観客は6000人くらい(そのなかにも1000人くらいの新潟サポーターの方々もいましたかネ)。スタンドの盛り上がりは相当なものでした。それに、観客の皆さんが沸くポイントも、ちょっと玄人好み。グラウンド上の現象よりも、そちらの方に注意を奪われてしまったりして・・。特に横浜ファンの方々は、後半も、残り2-3分というタイミングで決勝ゴールを奪ったサポートチームの勝利に、心から熱狂していたことでしょう。

 さてこの試合は、ホームの横浜FCが「1-0」の勝利をおさめたわけですが、試合後の記者会見で、「反町監督は、前半はひどいゲーム内容だった言われましたが、そのヒドイ内容とは具体的には・・」という質問に対し、負けたアルビレックスの反町監督が、冒頭の発言をしたというわけです。

 腹の底から押し出すような元気のある声。そんなよく通る声で話す内容も、非常にロジックで分かりやすく、納得のいくものでした。「前半の我々は、一人ひとりが消極的に過ぎた・・たしかにプレスにはいくのだが、タマ際の勝負が淡泊・・二人もプレスにいっているのに簡単に抜け出されて置き去りにされる・・」。そんな内容に、冒頭の「感情を込めた発言」がつづいたというわけです。躍進する新潟の「秘密」を見た思いがしたモノです。やはり、チーム総合力と呼ばれる「モノ」のなかに占める「監督のウデ」の比重は大きい・・。

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 さて試合ですが、前半は、反町監督が指摘したように、攻守にわたって中途半端な展開に終始します。まあ両チームともですがネ。

 基本的なポジショニングバランスは、横浜、新潟ともに、フォーバック、フォーミッドフィールド、そしてツートップという布陣です。

 両チームともに、最終ラインと中盤ラインをコンパクトに保つことも含め、中盤ディフェンスはうまく機能していいました。まあ逆の視点からすれば、両チームともに攻撃が遅く、稚拙だったから、うまくポジショニングバランスを維持できていた(ボールを奪われた後のディフェンス組織の再構築!)ということですがネ・・。

 とにかくボールの動きが緩慢なんですよ。一つひとつのステーション(ボールホルダー)のプレーが遅い・・周りの味方(=次のパスレシーバー)の動きも鈍い・・。グラウンドコンディションがあまり良くなかったという背景もありますが、私が評価するのは、選手たちの「仕掛けの発想」ですから、その意味では・・。

 そんなだから、両チームの守備ブロックにとって、次の「ボール奪取ポイント」が明確に見えるのも道理。両チームともに、たまにフリーマンにボールが回ったときに「個の勝負」で仕掛けていくという退屈な展開がつづいた前半でした。

 そんなゲーム内容を観ていて、やはりボールのないところでの動きの質が、攻撃全体のクオリティーを決めてしまう・・という普遍的なテーマに思いをめぐらせていた次第。

 もし彼らが「世界クラス」のチームと対戦したら、グラウンド全体で、自分が意識的にケアーしていた相手が「消えて」しまい、あっと思ったら、ソイツが決定的なスペースでパスを受けていた・・という現象を、繰り返し体感させられたことでしょう。

 要は、どのスペースでパスを受けたいのか・・というイメージが希薄だということです。だから、ボールがないところでの動きにも意図が感じられず、意志が満載した爆発ダッシュも、まったくといっていいほど出てこない。イメージさえあれば(互いのイメージが連鎖すれば!)、組み立て段階でのボールがないところの動きも活発になっただろうし、マークする相手ディフェンスの視線を「盗んで」爆発フリーランニングのスタートを切るなどいったシーンも続出したはずですからね。でも彼らは、ボールをこねくり回した末に(やっとこキープした末に)、逃げの横パスを出すというプレーに終始してしまって・・。

 パスを受ける前から、次のプレーの可能性に対するイメージを持つ(次にボールを動かしたいスペースをイメージし、そこを使える味方とアイコンタクトをとっておく等)という発想が見えてこない両チーム。

 それでも後半は、両チームともに、ちょっと内容が好転します。新潟では、主に山口素弘から最前線へ向けたタテパスが出はじめ(ボールが横ばかりではなく、タテにも動きはじめたことで、攻撃の変化を演出!)、横浜では、サイドチェンジを意識した組み立てをベースに、サイドをうまく突けるようになった。

 私は、攻めの「内容」では、新潟の方が良かったと思っています。最前線へのタテパスに、後方からのサポートがうまく噛み合いはじめ、コンビネーションもうまく機能しはじめていましたからね。要は、ボールの動きに変化が出はじめたということです。それでも、決定的なチャンスという視点では、サイドからのクロスに徹した横浜に軍配が上がる・・。

 「ニアポストゾーンばかりではなく、ファーポストゾーンにもクロスを送り込め・・」。リトバルスキー監督が、ハーフタイムでそう指示したということです。まあ彼は、「守備ブロックのアタマを超すようなクロス・・」という表現を使っていましたが、それが功を奏しはじめたというわけです。

 シュート数では互角だった両チームですが、「徹底」というポイントで少しだけ上回っていた横浜に軍配が上がったというゲームでした。

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 第3節が終了して、水戸ホーリーホックが三連勝でトップに立っています。今シーズンも大混戦が予想されるJ2。機会があるたびに観戦することにしましょう・・。

 混戦については反町監督も認めていましたよ。「今のJ2のクラブには、まったく差がない・・」。まあ、ここでいう「差」の意味は、選手個々の能力を単純総計した「ロジックベースの総合力」という意味でしょうね。だからこそ、それぞれの監督のウデ(チーム戦術やその機能性など)によってチームの「実効力」に大きな差が出てくる・・。そんなポイントでも観察すれば、リーグ観戦が何倍にも楽しいものになること請け合いです。




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