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ヨーロッパの日本人・・今週は「四人」のレポート・・興味深いコンテンツがありましたよ・・(2003年9月1日、月曜日)

一昨日カシマへ行ったとき(もちろん単車で!)、体内で培養していたヴィールスが何らかの刺激で活性化されたようで、帰った早々に身体がダルくなり(スタジアムでも、ちょっと寒気は感じていたのですが・・)、アントラーズ対トリニータ戦のレポートを仕上げた次の日曜日には39度以上の熱が出してしまったのですよ。たぶん鹿島地方の、日中と夜(試合中)の気温差が大きかったからかも・・。

 どうして「日中」かというと、たまには鹿島周辺も散策しなければと、佐原市内から霞ヶ浦へ、そして鹿島神宮を経由してスタジアムへとツーリングと蕎麦を楽しんだというわけです。心が洗われるような美しい(水のある)風景、美味しい食事(蕎麦)・・。でも、どうもそのあたりで体内異変がはじまっていたようです。

 あまり風邪には引っかからないから、ちょっとビックリ。たしか前回は、昨年のワールドカップの最中(止まらずに仕事をつづけていたら治った!)。そしてその前は、その数年前でしたかネ。とにかく、予期せぬことで日曜日は仕事にならず、やっと月曜日にゴソゴソと起きだしてビデオを見はじめたという次第。何かこう、全体的な雰囲気(身体を取り巻くオーラ!)が貧相だから、レポートまで貧弱になってしまいそうな・・。やはり、「自らの内側からわき出るエネルギー(元気≒セルフモティベーション能力)」こそが良い仕事(やはりここでも、結果と内容のバランス!)の絶対的なリソースなんだと実感している湯浅なのです。

 それでも、(ブンデスリーガは休みだから・・なんて、ちょいとメゲながらも)一応は「ヨーロッパの外国人シリーズ」は継続しておかなければ・・稲本は三試合連続のスタメンだし、セリエもスタートしたし・・ということでキーボードに向かいました。

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 稲本ですが、全体的な出来は良かったと思います。守備的ハーフとして、ものすごく安定したプレーを展開していました。ボールのないところでの危険ファクターの抑制(ボールがないところでの確実なマーキング!)・・予測(読み)ベースのアタック・・しっかりとした守備テクニックに裏打ちされたボール奪取アクション・・イーブンな競り合いでの「現実的な抑え合いテクニック(互いのファール合戦でも、ホイッスルを吹かれずに競り勝てる状況も増えた!)」の向上・・そしてボールを奪い返してからの確実なパス・・。フムフム・・。

 この試合では、例によって、レグヴァンスキー、クラーク、稲本の三人が守備的ハーフトリオを組みました・・というか、クラークは、ちょっと前気味で、後方からのゲームメイカーといった趣。その前の両サイドにポジションニングするマールブランクとモアボルチが、サイドアタッカー(限りなく、以前のウイングのイメージ)として仕掛けていく・・というイメージです。

 この試合は、トットナムとのアウェーゲーム。だから、攻めを「より戦術的に徹底させよう(≒次の守備へのイメージをより強いものにしよう)」というコールマン監督の意図だったのでしょう。「厚さ」で安定させた守備ブロックをベースに、攻めは、(守備意識も高い)クラーク、両サイドハーフのマールブランクとモアボルチ、そしてワントップのヘイルズが仕掛けていく・・。そしてそれが完璧にツボにはまった「0-3」というアウェー勝利。まあ見事な結果です。

 さて稲本。この試合では、二度ほど、彼のパートナーであるレグヴァンスキーが最前線へ突っかけていきました。コールマン監督は、この試合はアウェーゲームだから、より守備イメージを強化しよう・・チャンスがあれば行ってもいい・・それでも行くならば、常に中盤の(人数とポジショニング)バランスを考えて攻め上がれ・・と指示していたのでしょう。ということで稲本も、チャンスを「見つけるチャンス」はあったわけです。それでも、この試合では、最前線へ絡んでいくシーンはほとんど皆無。

 コールマン監督は、中盤の底は、この三人(レグヴァンスキー、クラーク、稲本)で固めようという腹づもりでしょう。だから、彼らのプレーイメージがシンクロしてくれば、より攻め上がりに「見慣れない顔」という変化を入れることができるかもしれません(要は、三人が交代に攻め上がっていくということ)・・。より「バランス」のとれたカタチでの攻め上がり・・。

 リーグ初戦。稲本は、ガンガンと攻め上がりました。何度もシュートを放ち、弾丸ゴールまで決めてしまいました。でも二戦目は、中盤で、攻守にわたって中途半端なプレーに終始し途中で交代させられてしまう・・。私は、その出来の悪さは、初戦の後、彼のプレー内容について「もっとバランスを・・」という話し合いが持たれた結果だと思っています。たぶん、監督も交え、クラークやレグヴァンスキー等との話し合い。そこでの「言葉でのプレーイメージ表現」が曖昧だったから、二戦目での彼の実際のプレーに「迷い」が生じ、それが中途半端に迷ってしまった・・と思っているのです。そして三戦目は(アウェーということもあるから)よりディフェンスに重点を置いた?! とにかく迷ったら、まずディフェンスからゲームに入っていく・・。 

 とにかく、一試合、一試合で、稲本の「プレー志向(イメージ)」に変化があるのは興味深い現象です。二試合目を除いて、それなりの高いパフォーマンスを示しましたしネ。まあ、これからの中盤の底を基本ポジションにする稲本の「イメージ・バランシング・プロセス」に注目しましょう。

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 さて、レッジーナ対サンプドリア。最初から、中村俊輔と柳沢敦のぶつかり合いが観られるかと期待していたのですが、結局両人ともに途中出場ということになりました。そして、残念ながら、レギュラーポジションを奪い取るという、この時点でもっとも重要なポイントで、両人の間に差が見えてしまう・・。

 柳沢は、例よっての「ボールがないところでの鋭い動き」が冴えました。まあ、先日の日本代表対ナイジェリア戦ほどではありませんでしたが、とにかく、ボールがないところでスペースを狙うという感覚は、フットボールネーションでも十分に通用するレベルにあるのです。もちろん仲間も、そのことは十分に意識していますから(トレーニングで培ったイメージシンクロ!)、中盤の高い位置で「起点(フリーのボールホルダー=決定的パスが飛ぶ状況)」が出来たとき、そこから決定的なパスが飛ぶ。その頻度は(仲間のヤナギを狙うというイメージの強さは)、トレーニングでの柳沢のアピールが効いていると感じさせてくれるものでした。

 二度、素晴らしいシュートシーンを迎えた柳沢。最初のチャンスはオフサイドでしたが、二度目は、完璧な最終ライン破りになりました(レッジーナ最終守備ラインのウラに広がる決定的スペースを完璧に突いた!)。素晴らしいシュートでしたが、横っ飛びのレッジーナGKに触られ、最後は右ポストに阻まれてしまいました。この試合では、そんなフリーランニング&スルーパスによる崩しは、このシーン以外にはほとんどなかった。ということで、この柳沢のシュートシーンは、エキスパートも含め、人々の印象に深く刻まれたことでしょう。

 それに対し、試合のこり10分弱というところで登場した中村俊輔。2-2の状況ですし、レッジーナのホームゲームですから、彼には、勝ち越しのチャンスメイクが期待されていた・・でも結局は・・。

 まあ、状況的に難しいことは分かりますが、それでも「全力でプレーしていない」という印象が残ってしまうようなプレーコンテンツは問題があります。

 ディフェンスにもよく絡み、しっかりと動いてボールの動きのステーションになろうという意図は見える。それでも、ここぞ!の全力ダッシュがないから、どうしても動きが緩慢に見えてしまうし、自分から仕掛けていく(パスを呼び込むフリーラン)という印象が希薄になってしまう。

 ここでの中村俊輔に対する評価の基準は、コンフェデレーションズカップのフランス戦における彼のプレーコンテンツです。これから中村俊輔を見るときは、そこでの素晴らしいパフォーマンスがすべての基準ということになります。だからこそフラストレーションがたまる。

 ディフェンスにしても、一度ハズされたら、戻ることは戻るけれど、お座なり。全力ダッシュで追いかければ、少なくとも相手にプレッシャーを掛けられるのに・・。またパスレシーバーへの「寄りの動き」にしても、まさに怠慢・緩慢。まったくプレッシャーになっていないから、相手も余裕を持って次のパスを打てる(味方は、次のターゲットを絞れない・・次の守備イメージを描けない!)。そこに「いるだけ」のディフェンスだったらやらない方がいい・・。

 残り10分しかない・・これじゃ何もできやしない・・仲間もオレにボールを集めようとしていないし、ボールを持っても周りが動かない・・これじゃ・・。そんな中村のマインドが透けて見えるようなプレー姿勢なのです(実際のマインドは違ったかもしれないけれど、グラウンド上の現象では・・)。せっかく、ジーコの「積極的な期待」が中村のプレーを活性化させたのに、一番大事なクラブでのプレーに活かされてこないのでは・・。

 彼は、ゲーム全体での運動量で、レッジーナでプレーするときと日本代表では大きな差があることや(もちろん日本代表の方が格段に多い!)、走りの内容にも大きな違いがある(全力ダッシュ頻度の違い!)という事実を、もっと真摯に考えなければなりません。

 ホンモノのプロは、どんな逆境に陥ってもメゲずに自己主張できるものですし、それぞれの状況において「最善のプロセス」を探し出すことができるものです(今のチームの戦術方針でも、中村が最高のパフォーマンスを発揮できる方法は必ずある!)。そうではなく、それまでの「成功体感」ばかりに思いを馳せ、それを基準に「・・だったらうまくいくのに・・」とか「これじゃオレのチカラは発揮できないよ・・」とかいうネガティブで後ろ向きの発想に陥り、言い訳ばかりに逃げ込んでしまうようでは・・。

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 さて、中田英寿。

 パルマの素晴らしいサッカーを観ていてすぐに感じました。「やっぱりプランデッリ(パルマ監督)も、目指すべき理想サッカーイメージは同じだ・・」。

 とにかくパルマが展開する「組織と個がハイレベルにバランス」したサッカーの爽快なこと。選手全員に、相手守備ブロックを振り回すような素早く、広いボールの動きに対する強い意識を感じるのです。サッカーの内容で、ホームのボローニャを上回りつづけるパルマ(だから、結果としての引き分けは残念・・)。そのなかで中田英寿も、攻守にわたり、ハイモティベーションの高質プレーで輝きつづけます。何せ、彼の理想イメージへ向かう「プレーリズム」なのですからネ。

 それには、ムトゥーがチェルシーへ移籍したこと、アドリアーノの行動半径が広くなったことと「組織プレーイメージ」が格段に発展したこと、そしてインテルから移籍してきた、個の能力に長けた優れたチームプレーヤー、モルフェオの存在が大きい・・。ムトゥーの移籍については、最終の仕掛けプロセスにおける「個のドリブル能力の低下」によって、逆にパルマ前線の「組織と個のイメージバランス」が向上したと感じられるのです。アドリアーノとムトゥー・・。この二つの才能によってプランデッリ監督は、彼の理想とするチーム戦術イメージから外れたサッカーをやらざるを得なかった?! まあこの試合でのサッカー内容を見れば、そう表現してもまったく問題ないと思います。それほど、選手たちのイメージが好転していると感じるのです。

 (プランデッリのマインドに対する理解も含めて?!)そんなチームの変化が自分のためになる(心理的にもプレー的にも健康な状態を維持できる)と判断したことも、中田英寿の移籍がなくなった背景の一部にはあったに違いない?! もちろん彼の場合は、とにかく移籍金が高すぎるというのが最大のネックではあったのでしょうが・・。

 中田英寿も、大きく変化したチーム戦術を心底楽しんでいると感じます。これだったら守備への積極参加も苦にならないに違いない・・何せ、次に「気持ちの良い攻撃」が待っているのだから・・。

 基本的な布陣は、アドリアーノをトップに、その後方を、ブレシアーノ、モルフェオ、中田英寿が埋めるというものですが、この四人は、積極的に(縦横無尽に)ポジションチェンジをくり返しています(中田も右サイドに張り付くことなく、どんどんと中央や左サイドまで進出していく・・多分プランデッリも、今シーズンは、そんなクリエイティブプレーを奨励している?!)。それも、互いの組織パスプレーと「高い守備意識」に対する相互信頼があるからに他ならない・・。また、攻撃的ハーフの高い守備意識は、両サイドバックと守備的ハーフの「機を見た攻撃参加」も助長します。そうなれば、パルマ攻撃に、もっともっと大きな変化が加味されてくる。これからの発展が楽しみなパルマじゃありませんか。




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