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ヨーロッパの日本人・・今週は、中田英寿と小野伸二だけ・・(2003年12月22日、月曜日)

何故パスを回さないんだ・・。そんなフラストレーションがたまる、たまる。

 パルマ対レッジーナ。後半から守備的ハーフとして登場した中田英寿でしたが、どうも組み立てプロセスへの絡み方がスムーズに発展していかないんですよ。それは、後方のチームメイトたちが「そこを仕掛けの起点にする」というイメージが希薄だから、中田にボールを預けないから・・。ボールをもった後方選手たちは、前気味のハーフや最前線へいかに正確にパスを出すかということばかりに意識を集中させているということです。

 もちろん中田が止まった状態(無為な様子見)でパスを要求しているのならば問題ですが、彼の場合は、常にスペースへのパスレシーブアクションを起こしながらですから、そこを経由することは、ボールを素早く動かしながら仕掛けの起点を作り出すという視点でも意義がある(中田は、自分へのパスをダイレクトで仕掛けパスにすることも常にイメージしている!)。

 まあ私が、中田にボールを渡せ!という根拠のもっとも大きなところは、彼にボールを回した方が(彼が後方のゲームメイカーとして機能した方が!)、よりクリエイティブで実効ある仕掛けを演出できることなのですがネ・・。とにかく、彼にボールを回すべきシチュエーションで、逆にボールをこねくり回してしまうというシーンが重なっていたことで、ボールを持った後方のヤツらはまず中田を探すべきだ・・なんてい怒りつづけていたというわけです。

 たしかに「ひいき目」での過剰フラストレーションという面もあったのでしょうが、私の目には、中田がボールをもった方が、確実に仕掛けの「質」が向上すると映っていましたから・・。何といっても彼の場合は、次の「パス&ムーブアクション」も仕掛けイメージに包含されていますからネ。もちろんそのベースは、自分がコアになったコンビネーションを演出してやる!という強烈な自己主張マインド。それに彼の場合は、「行きっぱなし」にはならない(次の守備アクションも意識した)本物のサポートアクションだから、限りなくポジティブだというわけです。何度中田が、中途半端なカタチでボールを奪われた後の相手のカウンターを身を挺(てい)して止めたことか・・。

 前線の味方を追い越していくフリーランニング(タテのポジションチェンジの演出!)・・ワンツーを駆使した効果的な仕掛けフローの演出・・また守備では、優れた「守備意識」をベースにした、抜群に素早く実効ある「攻撃から守備への切り換え」・・ボールがないところでの素晴らしい守備アクション・・等々。だからこそ味方も彼に信頼を置くというわけです。ということで、時間の経過とともに、徐々に中田にボールが集まり、そこを起点に、前線の味方との効果的コンビネーションも出はじめるというポジティブな展開になっていったのですが・・。

 後半になって中田が登場したときは、期待に胸がふくらみましたよ。何せ、私にとって初めての「中田ディフェンシブハーフ」の観戦ですからネ(まあ以前も「らしきポジション」はあったのですが・・)。先日のイタリアカップでは、そのポジションで90分間よいプレーを展開したとのこと。そのこともあって期待が高まったというわけです。

 もう何度も書いているように、私は、中田の理想ポジションは中盤の底(センターハーフ)だと思っているし、そこで彼は、最終勝負をもコントロールする「本物のボランチ」にまで成長できると確信してますからネ。まあそのことについては、以前のコラムを参照してください。

 この試合でのパルマは、ホームであるにもかかわらず痛い敗戦を喫しました(逆にレッジーナはギリギリの闘う姿勢を貫きとおした・・同点にされた後のロスタイムでの勝ち越しゴールは、彼らが展開した積極サッカーからすれば、まさに正当な報酬!)。それでも私の目には、中田の「センターハーフ」は、攻守にわたって優れた(実効ある)機能性を魅せていたと映っていました。だからこそ、そのポジション(チーム内タスク!)における可能性の大きさを再び体感していた・・。本物の守備意識をベースにプレーする中田だったら、どんなポジションでも十二分にこなしてしまうのでしょうが・・。

 中田英寿について、ボローニャへのレンタル移籍というハナシが持ち上がっているそうな。まあ彼のことだから、どんな状況でも、それを自分主体で「何らかの発展機会」にしてしまうことでしょう。それにボローニャでは、彼が攻撃のコアになるでしょうしね・・。

 変化こそ常態(=諸行無常)。脅威と機会は表裏一体。中田英寿は、変化を楽しみ、それを発展の機会として存分に活用してしまえるだけのインテリジェンスと物理的実力を備えていますから、逆に楽しみで仕方ない・・。

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 さて小野伸二。

 今シーズンのフェイエノールトは、何人もの主力を放出したということもあって、相手がどんなチームでも厳しいゲームをになるという状況がつづいています。だからこそ通常のリーグ戦が、小野にとってより有意義な学習機会になるだけではなく、観ている方にとっても有効な評価オブジェクトになる・・。要は、昨シーズンは、使われる安全プレー(=ミスの危険性が低い安全プレー)に徹していればいいというシーンが多かったのに対し、今シーズンは、攻守にわたって、常に自分主体でリスクにチャレンジしていかなければならない(そのことが評価基準になる!)ということです。

 エールディビジ(オランダ一部リーグ)は、ドイツのブンデスリーガ同様、今節をもって一ヶ月の「冬休み」に入ります。ということで、良いイメージでウインターブレイクに入るという意味でも、この試合は(その内容が)大事になってきます。

 でも、どうもフェイエノールトがピリッとしない。相手は現在14位のRKCですからね、いくらアウェーとはいえ、あまりにも相手にペースを握られすぎです。前後半ともに、40分くらいまでは、まったくサッカーになっていなかったのですよ。

 原因は明らかです。RKCに中盤を制されていたから。要は、中盤ディフェンスで相手に凌駕されていたということです。ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェイス&チェック、ボールがないところでの実効あるマーキング、ボール絡みの競り合い等々、すべてのディフェンスシーンでRKCがフェイエを圧倒していたのです。

 中盤守備?! フェイエノールトで、その指揮権を握っているのは小野伸二ではありませんか(この試合では、パルドとの守備的ハーフコンビ)。まあ、そういうことです。彼のリーダーシップが機能しなかったから、フェイエノールト中盤のディフェンス機能性が、まったくといっていいほど活性化されなかったということです。もちろん小野だけに責任を転嫁するのはフェアじゃありませんが、前述したように逆風だからこその学習機会ですから、そこで、リーダーシップも含む「リスク・チャレンジ姿勢」を前面に押し出して欲しかったのですよ。でも結局は・・。

 それにしてもこの試合でのフェイエノールトのパフォーマンスはひど過ぎた。前半と後半の残り10分で魅せた活発なダイナミックサッカーが彼ら本来のパフォーマンスレベルでしょうから、あまりに大きなギャップだったというわけです。チーム全体のプレーイメージをうまくシンクロさせられないという体質的な課題が白日の下にさらされた?! リーダーシップの欠如・・だから選手たちのイメージが統一されない・・だから攻守にわたるプレーが有機的に連鎖しない・・だから中盤守備が活性化せずに、互いにアナタ任せというプレー姿勢になってしまう・・等々。

 このゲームでの小野のプレー内容ですが、決して褒められたものじゃありませんでした。もちろん、あれほどチームの出来が悪くては、彼だけが良いプレーを魅せられるはずがないのもたしかなことなのですが・・。どはいっても、前述したように、全体的なゲームペースがうまく上がっていかないことは選手たち全員が感じていたことだろうから、中盤のコアとしてプレーした小野には、そのフラストレーションを統合し、良い方向へドライブするという明確なチャンスがありました(もちろん中盤ディフェンスを活性化させるような檄を飛ばしつづける等のリーダーシップのことですよ!)。彼の目の前には、本当の意味でチームリーダーになれるチャンスが転がっていたのです。でも結局は、自らもネガティブな流れ(心理的な悪魔のサイクル)に陥ってしまうことで、そのチャンスをみすみす逃してしまった・・。

 また攻守にわたる個々のプレーでも明確な課題が見え隠れてしていた・・。例えば前半13分に起きたボールのないところでの決定的なマークミス。そんなプレーを見せられたら、やはり「ここぞのボールなし守備プレー」に大きな不安が残ります。たしかに全体的にはポジショニングも良く、忠実に修正しつづけてはいるのですが、いかんせん、ここぞの勝負スポットへの寄りが遅れ気味だから、最終勝負でのマークがうまく機能しないとか、ボールをうまく奪い返せないという結果につながってしまう。また競り合い場面でも勝てない・・。また攻撃でも、ミスばかりが目立っていました。要は、ディフェンスが安定しないから(全体的なプレーの確信レベルをアップさせられないから・・)、ボールを持ったときのプレーも中途半端になってしまうということです。やはり守備がすべてのスタートライン・・。

 たしかに最終ラインの出来も良くなかったわけですが、でも、あれほど簡単に中盤でボールを失ったり、あれほどフリーで中盤からタテパスが送り込まれたり、あれほど頻繁に相手の二列目選手がフリーで走り上がってきたりするのでは、彼らの守備プレーが安定しないのも当然ですよ。何せ、次の勝負所に対する確固たるイメージを描けないのですからネ。やはりすべては中盤守備にあり・・ということです。

 小野も含め、とにかく引き分けられてよかった・・という無様なプレー内容のフェイエノールトでした。




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