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ヨーロッパの日本人・・今週のレポートは小野伸二と稲本潤一から・・(2003年12月1日、月曜日)

ではまず小野伸二から・・のはずだったのですが・・。とにかくいまは、彼に降りかかったアクシデントが大事に至らないことを祈るだけです。彼の状態に関する情報を収集しなければ・・。

 そのアクシデントは、前半40分、彼の上半身のどこか(たぶん脇腹?!)を、ファン・ペルジーのシュートが直撃したというもの。そのとき小野は、最前線の決定的スペースまで、まさに「影」のように上がっていたというわけです。ファン・ベルジーがボールを持ったとき、私は、心のなかで「よしっ、今だ!・・小野へパスを出せ!!」なんて叫んでいました。でもファン・ペルジーは、そのままシュートしてしまった・・それも、相手ディフェンダーがいたから小野にはシュートのコースがまったく見えなかった・・。そして小野が、脇腹を(?!)押さえてうずくまる・・。本当にアンラッキーなアクシデントでした。

 ここでは、そのアクシデントが起こるまでの小野のプレーについて書いた文章メモも残しておくことにします・・

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 今節は、アヤックスとのアウェー戦。そして小野は、下がり気味のポジション(限りなくスフリューデルとの守備的ハーフコンビに近い基本タスク)でスタートします。その前に、ルアリンク、ファン・ペルジー、ブッフェルが二列目トリオを構成しているというわけです。

 相手は強いアヤックスだし、場所もアムステルダムの巨大アリーナということで(プレッシャーは十分ということで!)、観ているこちらも、「これだけの条件がそろったのだから、小野が本当の意味で発展していることを体感できるはずだ・・」なんて気合が入ったものです。とはいっても、ゲームは開始早々に動いてしまいます。立ち上がり3分、アヤックスのファン・デル・ファールトにアクロバティックなシュートを決められてしまったのです。右サイドから、ファーサイドスペースへのサイドチェンジクロス・・それを折り返したところに飛び込んだファン・デル・ファールトが、前へダイビングしながら、後ろに振り上げた右足のカカトで、チョンッと、ボールをフェイエゴールへ流し込んでしまったというゴールでした。たぶんそれは瞬間的な判断。自分の正面でクロスボールを受けられないと感じたファン・デル・ファールトが、瞬間的に前へダイビングしたのですよ。もちろんヒールでボールに触るためにネ。やはり才能・・。それにしても素晴らしいゴールでした。

 でも私は、そのゴールを見ながら、「よし・・これでフェイエも吹っ切れた積極サッカーを展開できるだろう・・」なんて、逆に、小野伸二のパフォーマンスに対する期待が高まったものです。実際、そこからの小野伸二のプレーは、攻守にわたって格段に活発になりました(活発にならざるを得なかった!)。

 攻撃でのプレーも、後方でのゲームメイクと、三列目からの「影武者の飛び出し」がうまいバランスを魅せるという高質なものへと発展しました。このバランスがいい。要は、彼が「コア」になった仕掛けが、より頻繁に出てきているということです。展開パスを基盤に、パス&ムーブを重ねていく・・また、たまにはドリブルやタメキープなども織り交ぜる・・そして最後のシュートにつながるコンビネーションを主導する・・ってな具合です。

 以前は、あまりにも(アイデアのない)無為な様子見シーンが目立ちすぎていた小野伸二。だから、仕掛けの流れにまったく乗れず、単に味方に「使われる選手」という存在でした。でも今は違う。「様子見状態」にしても、次の爆発勝負のための「イメージ的なタメ」だと明確に感じさせてくれますからね。

 ここのところの好調のそのままのクリエイティブプレーを展開する小野伸二。そしてフェイエノールトの攻撃も活性化してくる。でも、そんなフェイエノールトにとってのポジティブな流れが、守備とGKの「お見合い」でこぼれたボールを、再びファン・デル・ファールトに決められたことで断ち切られてしまう。これで、アヤックスの「2-0」リードということになりました。前半11分あたりだったでしょうか、フ〜〜。まあ、ここまできたら吹っ切れたリスクチャレンジプレーを展開するしかないから、もっとダイナミックな小野伸二のプレーを見られるかもしれない・・・・なんて書いていたところで「例のアクシデント」が起きてしまったというわけです。

 そして、「とにかくアクシデントが大事に至らないことを祈っています・・」と、締めの文章を書いていたとき、この試合のテレビ実況を担当した「カリスマ倉敷」アナウンサーが、小野伸二の状態について、「いまスタジアムの医務室で診察を受けている・・大事には至っていないようだ・・念のため試合後に病院で精密検査が行われる予定・・」という情報を流してくれました・・。小野伸二の「自覚症状」が好転したというこてなんでしょう。それでも、とにかくなるべく早く精密検査を・・。

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 さて次は稲本潤一。相手は、現在絶好調のアーセナルです。数日前のチャンピオンズリーグでは、「あの」インテルを相手に、それも敵地で、「1-5」という信じられない破壊力を発揮しました。さてこの試合では・・。

 稲本は、先発90分のフル出場。右の(前気味の)サイドハーフです。そして最後まで、ゲーム戦術に即した「タクティカル・プレー」に徹していた。何せアーセナルの左サイドには、アシュレイ・コール、ピレス、そしてアンリといった天才連中がいますからね。そんなに強者たちが左サイドを崩しにかかってくる・・。だからこの試合での稲本のタスクは、右サイドバックのフォルツと協力して、天才の突破を阻止することだったというわけです。

 稲本は実効あるプレーを展開していました。相手のパスを読んだ必殺タックルを何度も決めたし、ボールのないところで走り込むアシュレイ・コールをピタリとマークしつづけたり、ドリブル勝負するピレスやアンリを、仲間のフォルツと止めたり・・。でも逆に、ボールのないところでのマークで置き去りにされてしまったり(アシュレイ・コールやピレスに走り込まれて決定的ピンチを演出される!)、ドリブルで抜き去られたり、カバーリングが間に合わなかったりと、何度も「やられたシーン」を目撃させられてしまいました。まあ、相手が相手だから仕方ない・・。稲本にとっても、よい学習機会になったことでしょう。

 これもまた「ビデオでの学習教材」です。そこで、相手の動き(ボールとの絡みやタイミング、はたまた素振りなど)を詳細に観察するのです。もちろんそこでの自分人の視線やイメージ(読みの内容)も同時にしっかりと思い出し、そこに重ね合わせる。そんな深いイメージ作業によって、予測(読み)能力は着実にアップするはずです。

 何せ、稲本にとっての守備的ハーフライバルは本当に多いですからね。レグヴァンスキーだけではなく、復帰してきたショーン・デイヴィス、ペンブリッジ等々。でも相手にとって不足なしじゃありませんか。この試合で守備的ハーフトリオを組んだレグヴァンスキー、クラーク、デイヴィスにしても、何度もアーセナルの「才能ミッドフィールド」にキリキリ舞いされられるなどのバッドシーンがありましたしね。決してノーチャンスじゃない。だからこそ稲本は、攻守にわたって、鋭い「イメージ描写能力」をベースにした積極プレーを心がけなければならないのです。だからこそ大事な「イメージトレーニング」というわけです。

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 試合の全体的な印象ですが、とにかくアーセナルは強かった。あれほど守備を固められているのに、ほんとうに手を替え品を替えて攻撃の変化を演出し、フルアム最終ラインのウラスペースを突いてくるのですよ。

 ベルカンプがボールをもってタメを演出した瞬間、最前線でアンリが動いて相手を引きつけ、その間隙をリュンベリが爆発ダッシュで抜け出していく・・そこへ、ベルカンプからピタリのスルーパスが合わせられる(前半の決定的チャンス・・フルアムGKに、ギリギリのところではじき出される!)。また後半には、こんなスーパーチャンスもありました。左サイドの最後方でボールを持ったアシュレイ・コールから、60メートルはあろうかという「ラスト・サイドチェンジ・ロングパス」が、右サイドの決定的スペースへ抜け出したベルカンプにピタリと合う・・天才的とラップから決定的シュートを放つベルカンプ(1998年フランスワールドカップ、アルゼンチン戦のスーパーゴールを思い出す!)・・でも、そのシュートもフラムGKに止められる・・また、そこでこぼれたボールを拾ったリュンベリが放ったシュートも、フラムGKにギリギリでセーブされる・・。それ以外にも、アンリやリュンベリが何本か決定的シュートを放ったし、交代したカヌーも何本か決定機を迎えたけれど・・。

 私は、「これだ、これだ、アーセナルが負けるパターンは・・」なんて思っていましたよ。まさに、ツキに見放されたゲーム。フルアムGKのファン・デル・サールは鬼神のセービングを連続していたし、例えばマールブランクのヘディングシュートシーンなど、後半に何本か飛び出したフルアムのカウンターチャンスにしても、まさに決定的といえるシーンもありましたからネ。アレが入っていたらアーセナルは負けていた・・。サッカーでは、こんなゲームもあるということです。そして結局はドロー・・。まあ、稲本のパフォーマンスも含め、様々な視点で見所が豊富なゲームでした。




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