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CL準々決勝(3)・・これぞイタリアのツボ!!・・バルセロナ対ユーヴェントス(1-2)・・(2003年4月23日、水曜日)

いや、凄い。これぞイタリアサッカー。観ていて疲れ切っていた湯浅でした。

 アウェーゲームの妙というか、とにかくユーヴェントスのゲーム運びは巧みの極みでした。どのように表現しましょうかね、あくまでも、次のディフェンスでのバランスをイメージしながらの仕掛け・・そして、逆境で増幅しつづけるディフェンスの集中力と、カウンター(それがはじまりそうになる状況)に対する、これ以上ないという鋭い感覚・・。

 一言では片づけられない「イタリアのツボというコンテンツ」。それがユーヴェントスを準決勝へ押し進めた・・。

 この試合、とにかくユーヴェは、一ゴールは奪わなければなりません。第一戦のホームゲームが「1-1」だったことで、この第二戦が「0-0」の場合(勝ち点、得失点差が同じ場合)アウェーゴールが二倍に換算され、バルセロナが準決勝に進出するということになってしまうのです。キックオフ直後から、「ゲームの心理的な流れ」に対する鋭い感覚を魅せるユーヴェントス。

 それもまたイタリアの「イメージ的なツボ」?! 彼らは、立ち上がりの、「まだ」選手たちの集中力が最高レベルまで高揚していない時間帯を狙って、バルセロナの心理的なスキを突いていこうとするのですよ。やはり、ヤツらは凄いな・・。そんなことを感じたものです。

 まず立ち上がりの3分、一発のタテパスと、最前線に張るディ・ヴァイオの決定的フリーランニングが見事に「シンクロ」します。たぶんヤツらは、「立ち上がりは、とにかく一発のタテパスで仕掛けるぞ!」というイメージでグラウンド上に出てきたに違いない。そしてその3分後(前半6分)には、右から持ち込んだネドビェドが、ドカン!と、ギリギリの中距離シュートを放つ。これもまた、ゲームの流れに対する「イメージ的なツボ」というわけです。

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 ちょっと脱線して、ユーヴェントスの攻めの戦術的イメージについて・・。

 カウンター状況は除き、彼らの、組み立てからの仕掛けプロセス(イメージ)は、バルセロナとはちょっと違います。

 素早く、広くボールを動かしながら、相手守備の薄い部分で「起点」を演出し、そこから、タテのポジションチェンジもミックスしながら最終勝負を仕掛けていくというイメージのバルセロナ。最終勝負イメージは、ドリブル勝負(そこからのタメやスルーバス)、ワンツーなどのコンビネーション(三人目の動きを駆使するワンツー&スリーというリズム!)、様々なバリエーションのクロス攻撃などなど、変化に富んでいます。

 それに対しユーヴェントスの組み立てプロセスイメージは(ボールを動かすことの目的イメージは)、相手守備を振り回すというのではなく、あくまでも、「タテへの」最終勝負を仕掛けていくタイミングを計る「キープ」という意味合いの方が強い。要は、常に、次の守備でのバランスまでも明確に意識した(なるべく守備のバランスを崩さないことを意識した)仕掛け準備というわけです。だから攻撃の「イメージ・バリエーション」は、そんなに広くない。

 決定的スペースへの「パスを呼び込む」爆発フリーランニングへ向け、一点に集中した正確な中距離タテパスを飛ばす(そこから直接シュートへいったり、ラストクロス&ラスト横パスなどの最終勝負が展開される)・・。最前線で、ちょっとでもフリーになった味方の足許へ鋭いタテパスをつけ、その選手がしゃにむに単独ドリブルシュートにチャレンジしていく(ネドビェドの先制ゴール!)・・。中盤でのタメのキープから、空いた前方スペースへ後方から飛び出していく味方へのスルーパスを決める・・。中盤である程度フリーになった選手が、直線的なドリブルで相手ゴールに迫ってミドルシュートにチャレンジする(ダーヴィッツが得意!)・・。例によってのセットプレーからワンチャンスを決める・・等々・・。

 まあ、こう書くと、ユーヴェの攻撃だって変化に富んでいるじゃないか・・と言われそうですがネ・・。要は、ユーヴェの攻撃では、「横パス・横パスのキープ」と「タテへの勝負アクション」が、より明確に分けられているということです。もちろん、タテへ仕掛けていくタイミングを計る「横パス・横パスのキープ」のときに、既に次のディフェンスでの組織作りがイメージされていることは言うまでもありません。

 その意味では、彼らの組み立てからの仕掛けと、強固な組織ディフェンスをベースにしたカウンター攻撃は、基本的には「同じリズム」と言えるのかもしれません。相手の攻撃を、ある程度コントロールしてしまうくらいの堅牢な組織ディフェンスがあれば、守備の段階で既に「次のタテへの仕掛け」までも描けてしまう・・というわけです。

 私は、「イタリアのツボ・サッカー」を、そのようなイメージで観察していると言いたかった湯浅でした。

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 またまた余談が・・。さてゲームです。

 たしかにホームのバルセロナが、全体的にはゲームを支配しています。それでも、常に「蜂の一刺し」の恐怖を与えつづけられるユーヴェントスも、抜群の存在感を誇示しつづけている・・。

 前述した立ち上がりでのチャンスの後、やっとバルセロナにもチャンスがめぐってきます。サビオラ。例によっての気迫あるプレーを展開するルイス・エンリケのタテパスを受けたサビオラが、まさに天賦の才!というボールコントロールで相手の背後にスルリと入り込んでシュートを打ったのです(でもGKの正面・・)。

 でもその後は、またまたユーヴェのデル・ピエーロがチャンスを迎えます。右サイドでボールを持ち、中央ゾーンへドリブルで進むネドビェドから、逆サイドでフリーになり、ベストタイミングでタテへ走り抜けたデル・ピエーロにラストパスが通ったのです(バルサ右サイドのプジョールが上がっていた関係で、デル・ピエーロをケアーしなければならなかったパトリック・アンデションでしたが、ネドビェドのプレーに意識が吸い寄せられてしまって・・)。そして、これまた才能を感じさせる「独特のリズム」で決定的シュートを放つデル・ピエーロ(バルサGKが、ギリギリのところで伸ばした左足先に当ててクリア!)。

 その後も、変化ある仕掛けからチャンスの芽は作り出すものの、どうしても決定的シュートを放てないバルセロナに対し(左からの崩しで打ったクライファートのシュート一本くらい)、これまた決定的スペースへ抜け出すダーヴィッツの爆発フリーランニングへ向けて、最後尾から一発のタテパスを通してしまうユーヴェ(ダーヴィッツの決定的フリーシュートはバルサGKの正面へ!)。

 前半の展開は、まさにゲーム内容と実質的シュートチャンスの(理想と現実の?!)の相克ってな具合でしたかネ。

 そして後半から延長にかけては、まさに、ドラマ、ドラマのオンパレードになります。

 まずは後半立ち上がりの2分。左サイドをフリーランニングしたルイス・エンリケへ、ベストタイミングのタテパスが出る。ユーヴェ最終ラインの重鎮モンテーロとの一対一。迷わず勝負を仕掛けたルイス・エンリケは、モンテーロをフェイントで翻弄し、完璧なフリーシュート体勢に入る。ゴールまでは僅かに8メートル。ユーヴェGKブッフォンも飛び出してくるがノーチャンス。ただ狙いすまして放たれたルイス・エンリケのシュートは、数センチ、本当に数ミリ、右ポストを外れてしまう・・。

 その瞬間、「あっ、これはもうユーヴェのものだな・・」なんて思ったものです。押してチャンスは作り出すけれど、どうしても決定的シュートを放てないバルセロナ。それに対し、ボールポゼッションとチャンスメイクの微妙な関係を、自分たちのペースに持ち込んでいくユーヴェ。これぞイタリア的なゲーム展開?!

 そして、その6分後の後半8分、ユーヴェが先制ゴールを挙げてしまうのですよ。中盤でうまく相手をかわしたデル・ピエーロからの正確な足許タテパスを受けたネドビェドが(最初のボールタッチでパトリック・アンデションの逆をとってしまう!)、そのまま中央へ持ち込んで、ドカン!と右足を振り抜いたというわけです。「あ〜あ、これでゲームは決まってしまったな・・」なんて思った瞬間でした。でもここからドラマが・・。

 その後も、惜しい中距離シュートを放つネドビェド(確実にこの試合でのMVP!!)。もちろん確実な組織ディフェンスをベースにしたカウンター気味の攻撃ですよ。もう誰が考えてもイタリアのツボですよ。一点をリードしたユーヴェに、前へ重心が移動しつづけるバルセロナ・・ですからネ。

 それでもやってくれました。バルセロナが同点ゴールをたたき込んだのです。後半21分。それも、バルサらしいコンビプレーをベースに・・。右サイドでのメンディエータのドリブル&タテパスが起点になります。そのタテパスを受けたサビオラがまたサイドへ開き、そこにいたルイス・エンリケから、正確なクロスが、クライファートの頭に合わされます。でもマークしていたテュラムが競り勝ち、ヘディングでクリア。そのこぼれ球を拾ったのが、バルサ中盤の重鎮シャビ。そして、素早く正確なワントラップからのキャノン中距離シュートが、ユーヴェントスゴールの右隅へ飛び込んでいったというわけです。

 「こぼれ球がうまくシャビにわたったとはいえ、よく同点ゴールを奪ったな・・」なんて感嘆しきりの湯浅でした。さて仕切直し。これで状況は五分と五分。でもそこはバルサのホームですからネ・・。それに、その後にはサビオラが惜しい中距離シュートを放ったり、後半34分には、二枚目のイエローを受けたユーヴェントス中盤のダイナモ(発電器)ダーヴィッツが退場処分になってしまいましたから、「これはもう、バルセロナのものかもしれない・・」なんて思いはじめたものです。とはいっても、心の奥では、「でも、こんな状況だからこそ、イタリアのツボが威力を発揮するぞ・・」なんて思ったりもしていましたよ。

 そして実際に、ユーヴェントスのディフェンスが、よりソリッドにまとまっていくのです。攻め込んではいくけれど、どうしても最後のシュートまでいけないバルセロナ。美しい崩しにチャレンジするばかりではなく、もっと強引なロングシュートやクロスボールにもトライしなければ・・。そんなことを思ったものです。まあ、交代したリケルメがこぼれ球をダイレクトでロングシュートを放ったり、シャビからの上手いロビングラストパスから、クライファートがフリーシュートを放ったりしましたが、それもユーヴェGKブッフォンが、彼のイメージ通りに防いでしまいましたからね。

 そして延長後半9分。まさにワンチャンスのクロスを、交代出場したサラジェタに決められて勝負あり(サラジェッタから、右サイドを押し上げたビリンデッリへパスが回り、そこからのピンポイントクロスが見事にサラジェタの頭に合った!・・これぞイタリアのツボゴール!!)。この時点でのバルセロナには、あと2点を奪って逆転するチカラは残されていませんでした。

 それにしても手に汗握るドラマチックな勝負マッチでした。見終わってすぐに書きはじめるつもりだったのですが、どうも睡魔が・・。ということで、ちょっと寝てからにしたためアップが遅れ気味になってしまった次第(また推敲もせずにアップするから誤字・脱字・乱文のオンパレード!)。ご容赦アレ・・。

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 同日に行われたバレンシア対インテルでも、イタリアのツボの威力を存分に感じさせた(?!)インテルが勝ち進んだとのこと(インテルのヴィエリが先制ゴールを入れ、その後バレンシアの反撃を2点に抑えた・・2-1でインテルが負け、勝ち点、得失点差でも並んだが、アウェーゴール二倍ルールのためにインテルが準決勝へ進出!)。

 今シーズンのチャンピオンズリーグは、イタリア旋風(イタリアのツボ旋風!)ということになってしまうのでしょうか。さて・・。




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