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チャンピオンズリーグ・・二次リーグ第4節・・まずは最初の二試合から・・(2003年2月27日、木曜日の昼間)

さて、チャンピオンズリーグも佳境に入ってきました。ここではまず、ユーヴェントス対マンチェスター・ユナイテッド、ドルトムント対レアル・マドリーをショートレポート。

 まず、ユーヴェントス対マンU。

 アウェーを戦うマンUが、素晴らしくクレバーなゲームを展開しました。ファーガソン監督には見えていたんでしょうね。イタリアチームの場合、自らがペースを握ってゴールを奪いにいくというゲーム展開を苦手としていることを・・。

 この試合でのマンUは、明確に、守備を固めてカウンターを狙うというゲーム戦術で臨みました。そしてそれが見事にツボにはまる・・。

 もちろんどんなチームにとっても、強化した守備ブロックをうち破っていくのは難しい作業なのですが、タテのポジションチェンジに対する発想が「比較的」希薄なイタリアチームの場合、それがより難しくなる・・。何といってもイタリアチームは、守備ブロックを強固に組織し、なるべく高い位置でボールを奪い返してカウンター気味の(直線的な)攻撃を仕掛けていくという基本的なイメージをもっていますからね。

 まあ、先発のフォルランが早々とケガで退場し、代わりに入ったギグスが大活躍したとか、前半15分にフェラーラが放った決定的なヘディングシュートをポストに救われるといった「幸運」もありましたが、全体的なゲーム内容は、イタリアのツボを逆手に取り、効率的にゴールを重ねていったマンチェスターという見方が正解でしょう。

 まず、右サイドで、相手のミスもあってラッキーに抜け出したヴェーロンから、ギグスへの落ち着いたラストパスが決まる(前半15分)。次は、自らボールをインターセプトしたギグスが、これぞギグス!という単独ドリブル突破で追加ゴール(41分)。これで、全体的にもっと攻め上がらざるを得なくなったユーヴェが、守備のバランス(人数的、相互ポジショニング的)を崩し気味になったスキを突いて上げられたロングボールを(最終ラインの重鎮フェラーラがケガで治療中だったこともある!)、トゥドールが胸でバックパス。それがポストに当たってファン・ニステルローイの足許へ・・ってな具合。フ〜〜。

 この試合でのポイントは、何といってもヴェーロンの復帰。これで、組み立てでの指揮系統が明確になります。ボールの動きは、例外なくヴェーロンを経由する。もちろんその流れにベッカムも絡んでくる。この二人が演出するボールの動きは本当に見応えがありました。

 それにしても、ヴェーロン。やはり素晴らしい才能(インテリジェンス)を備えています。勝負所を心得ている・・というか、攻守にわたってタイミングよく繰り出す「ボールがないところでの全力ダッシュ」が、ことごとく実効あるプレーにつながるのです。そんな高質なプレーを展開するヴェーロンだから、チームメイトたちからの絶対的な信頼が明確に感じられるのも道理。

 この試合では、ロイ・キーンが、ブラウンに代わって最終ラインに入り、ファーディナンドと中央コンビを組みます。もちろん中盤のフィリップ・ネヴィルが、前気味のリベロとして、忠実な「汗かきディフェンス」を魅せつづけたことは言うまでもありません。まあユーヴェの場合は、中盤の二列目、三列目が最前線を「追い越していく」というプレー(勝負所でのタテのポジションチェンジ!)は比較的「希」なので守りやすかったということもありますが、この試合でのフィリップ・ネヴィルは、守備的ハーフとしてコンビを組んだニッキー・バットと共に、隠れたヒーローでした。

 久しぶりに見た、美しさと勝負強さが高質にバランスしたマンチェスター・ユナイテッド。戦術という規制から、「バランスよく」解放された彼らのサッカーに期待が高まります。

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 さて次は、ドルトムント対レアル・マドリー。

 本当にガッカリしてしまいました。ツキも味方しているから守りきれるだろう・・なんて思っていたゲーム終了直前のロスタイム、交代出場した若手のポルティージョに同点ゴールを決められてしまったんですからね。あっと・・。このコラムは、ドルトムントを主体にして書きます。ご容赦アレ。

 ゲームの立ち上がり。ホームのドルトムントが、鬼神の勢いで攻勢をかけました。もちろんベースは、中盤での、忠実でダイナミックな守備。前節の試合(アウェーでのレアル・マドリー戦)では、ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックが遅れ気味でした。でもこの試合の前半は、中盤で、魔法使いたちに余裕を与えないというディフェンスが素晴らしく機能していたのです。とにかく勢いだけは、ドルトムントがレアルを圧倒していました。これぞ、ヴェストファーレン・シュタディオンでのホームゲーム!

 ドルトムントの攻撃は、エヴェルトンのドリブル突破、コレルのポストプレーと脅威のヘディング、メッツェルダーの迫力あるオーバーラップ等、ダイナミックそのものです。とはいっても何かが欠けている。そう、中盤のクリエイティブリーダー、ロシツキー。彼がケガで欠場したことが、攻撃の変化という視点で、物足りなさを感じさせたのです。

 それでも勢いだけはレベルを超えている・・。まずエヴェルトンが強烈な中距離シュートを見舞います。そして、「まあ、ゴリ押しだけれど、あの迫力だから、いつかはゴールを決められるかも・・」なんて思っていた前半23分。やってくれましたよ、コレルが。攻め上がっていたケールからの浮き球のタテパスに、ギリギリのところで飛び出したコレルが右足一閃。いや、興奮しました。

 この試合でのコレルは、持ち味を十二分に発揮していました。とにかく前線でボールを持ったら、大きな身体をうまく活かし(もちろんボールコントロールも上手い!)、常にしっかりとキープして次へ展開してしまうのです。これぞポストプレー! また、とにかくヘディングが強い。タイミングとコースが良いクロスが上がってくれば、もうレアル守備はファール気味に「身体を寄せて」いくしか防ぎようがない。また十分な体勢でヘディングできなくても、少なくともボールが流されてくるんですからね。周りの味方も、そこでこぼれたセカンドボールを明確に意識している・・だから放り込みのクロスでも大きなチャンスになる・・。

 さて一点をリードされたレアル・マドリー。実をいうと、最初の決定的チャンスは、押されていたレアルが作り出しました。最前線でボールをキープするロナウドから、右サイドで飛び出したラウールへ、これぞラストパス!という浮き球のスルーパスが通されたのです。ドルトムントGKレーマンと1対1になるラウール。でもレーマンは、やはり超一流のGKでした。飛び出しのタイミング、飛び込んでいく勇気。ラウールのシュートをギリギリのところでセーブしてしまったのです。

 その後もレーマンは、何度も素晴らしいプレーでドルトムントゴールを守りました。やはりドイツは、GKだけは、常に世界最高レベルの人材を送り出してくる。このことは、世界サッカー界の統一した評価です。

 さてレアル。後半はもう一方的なマドリーペースになっていきます。ドルトムントが前半にみせた、中盤ディフェンスの勢いが大きく減退したのです。そして今度は、守備ブロックの奮闘ばかりが目に付くようになってくる。

 特にキャプテンのシュテファン・ロイターとヴェルンスの気合いが目に付きます。とはいっても、ロイターも既に36歳ですからね。仲間に「ターボ・シュテファン」というあだ名をつけられるほどレベルを超えていた以前のスピードは、もう見る影もない。それでも、経験を基盤にしたクレバーなポジショニングや狡猾な競り合いでカバーする。またヴェルンスも、身体全体をつかったファールギリギリのディフェンスで盛り上げます。

 対するレアル。徐々にボールが、活発に動きはじめます。とはいっても、ドルトムントも、そんな彼らのパスリズムをしっかりと把握していますから、振り回されるのは希。まあそれには、レアルの真骨頂ともいえる縦横のボールの動きに(特にタテのボールの動きに)、以前のような鋭さが欠けているからということもあります。もちろん、最前線で、足を止め気味にパスを待つ傾向の強いロナウドが、「まだ」最前線のフタになっているということです。

 それでも、振り向きざまのシュートや、ドリブルシュートなど、彼の単独アクションが徐々にパワーアップしているとは感じました。だからこそ、仕掛けでの組織プレー「も」イメージすれば、もっと彼の才能が活かされるのに・・。

 そんななか、ドルトムントも絶対的なチャンスを作り出します。まあ、作り出したと言うよりも、ロベカルのスリップ転倒が原因だったから、天から降ってわいたチャンスだったといった方が正確な表現ではありますが・・。

 そのシーン。ロベカルのスリップでこぼれたボールを拾ったコレルから、正確なラストパス(浮き球の折り返し)が、エヴェルトンのアタマにピタリと合ったのです。でも得う゛えるトンのヘディングシュートは、弱々しくバーを越えてしまって・・。そして最後は・・。

 とにかく、ものすごくエキサイティングな勝負マッチでした。後で、この「Cグループ」の勝ち点状況をインターネットなどで確認して欲しいのですが(4連勝のミランがグループトップを決めた!)、残り試合を考えても、レアルとドルトムントの勝ち残りチャンスは、まだ五分五分といったところですかね。もちろん勝ち点で「1」リードしたレアルの方が有利であることは確かなのですが・・。

 さて残り2試合が、ものすごく楽しみになってきた。

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 今日の早朝におこなわれた「アヤックス対アーセナル」「インテル対バルセロナ」については、後でレポートする予定。




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