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2003オールスター・・ちょいと視点を「個人」に絞り込んでみました・・WESTvsEAST(1-3)・・(2003年8月9日、土曜日)

ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するチェックにギリギリの勢いがないし、勝負の競り合いシーンでも肉弾戦というところまでいかない等、ケガをしないような注意深いディフェンス(まあ、中西vs松井など、新旧対決では、旧が意地の競り合いを仕掛けていきますがネ)。攻めでのコンビネーションイメージも、やはり「三人目」までは連鎖しない(最終勝負シーンでも、単純なフリーランニングにラストパスやクロスを合わせるというシーンがメイン)。ということで、例によって制限なく、全員が自由に、積極的に攻めあがるなかでも「個の勝負が中心になった仕掛け」が目立つ展開ということになりました。だから観ている方にとって楽しいことこの上ない・・。要は、いつもの「これぞオールスター」という展開ということです。

 期待の大久保。何度か惜しいシュートシーンはありました。でもドリブル勝負からではなく、そのほとんどがボールがないところでの勝負のフリーランニングをベースにしたチャンスメイク。まあ、最後の時間帯には、相手バックパス(ミスパス)から抜け出してドリブルシュートを決められる場面もあったのですが・・。

 それでも、局面を打開するドリブルチャレンジでは、やはりレベルを超えた可能性を感じさせてくれました。でも逆にそんなシーンでは、前述したような「旧(&中堅)の意地パワー」にねじ伏せられてしまうことも・・。まあ全体的には、順調なプログレッション(発展)を感じさせてくれる内容だったから、まずまずだったとすることができそうです。

 とにかく彼には、どんな状況でも「個の勝負」にチャレンジしていくという積極マインドを高揚させつづけて欲しいものです。もちろんやり過ぎは「百害あって一利なし」ですから、とにかく早く「大久保なりの組織と個のプレーバランス」を高水準にキープできるようになることが先決だというわけですがネ。セレッソ西村監督のウデにも期待しましょう。

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 結局ゲームは、「EAST」が、最終勝負シーンでの「個の能力の差」で勝ち切ったという結果に落ち着きました(4点のうち3点がセットプレーからのゴールではありましたが、決定機の演出コンテンツでは、明らかにEASTが上だった)。

 ところで、その個の勝負能力・・。目立っていたのは、エムボマ、チェ・ヨンス、アマラオたちでしょう。特にエムボマ。彼は、やはりレベルを超えていました。もちろんダイナミズム(無酸素状態アクション=乳酸が貯まる運動)は長続きしませんが・・。前半に何度か魅せた(瞬間的に爆発した)個人勝負からのシュートや、試合終了直前でのジャンピングボレー等は、確実に「世界」でした。そんなシーンを魅せられるたびに、例によって「オ〜〜!」というため息が出たものです。

 ヴェルディー復活プロセスでは、新任のオジー・アルディレス監督の優れたお仕事はもちろんのこと、復調しているエムボマの貢献度も大きい?!

 物理的なパフォーマンスアップだけではなく、彼の調子が上向いてきたことが(それを体感できるようになってきたことが)味方の心理・精神的な支えになっているのは確かなことだと思うのですよ。

 最前線での頼りになる「ステーション」。私は、当初、エムボマのことを甘く見ていました。あの(欧州時代の)パフォーマンスじゃ、ヴェルディーでもお荷物になるに違いない・・とにかく運動量が少なすぎるし、個人で勝負しようとし過ぎることで、自チームの組織プレーリズムをボロボロにしてしまう・・なんてネ。でもフタを開けてみたら(ケガが癒えたら)、ビックリするほどのストライカーぶり(もちろん点を取ることに徹したプレーだからこそのパフォーマンスとも言えますがネ・・別な見方をすれば、彼の復活はオジーの功績?!)。

 とにかく彼は、まだまだ出来る。もちろんその背景には、「Jの守備レベル」が、まだまだフットボールネーション追いついていないからという事実はあるわけですが・・。

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 さて、MIPプライズ(モースト・インプレッシブ・プレーヤー=もっとも印象に残った選手賞)に輝いたカズ〜(三浦知良)。

 1対1の正対ドリブル勝負シーンでの衰えなど、フィジカルパフォーマンスダウンによる限界は仕方ないにしても、逆に「それ故」こそのクレバープレー(仕掛けプレーのイメージ描写力)は相変わらずでした。まあ、「年輪」ということです。

 それにしても、彼独特の「またぎフェイント」。それを日本全国、津津浦々まで浸透させた(イメージトレーニングした!)功績は、筆舌に尽くしがたい・・ということを再認識していました。

 またこのゲームでは、言わずと知れた、優れた「ゴール生産マインド」もアピールした(この試合でも、ウエスト唯一のゴールを決めた!)。そのゴールを見ながら、カズの、重要な場面での「重要なゴール」の決定力について思いをめぐらせていました。

 それは、シュートへの(ボールを相手ゴールへたたき込むことへの)飽くなきチャレンジ姿勢という表現に置き換えられるでしょうか。日本人は、絶対的なチャンスにならなければシュートを打たない傾向が強いのに対し、カズは、針の穴・・でも積極的にリスクにチャレンジしていく・・。いつも書いているように、攻撃の目的は「シュートを打つこと」であり、ゴールは結果にしか過ぎないのです。

 そのことは「数字」にも見ることができます。私のHPのJデータ分析(ちょいと古いですが、傾向を探るのには十分!)。その「93-99年までの総合ゴールゲッター分析」を見てください。そこでは、1999年シーズンまでの「総合ゴール数ランキング」「一試合平均ゴール数ランキング」「ゴール決定率ランキング」を載せました。

 その最後の「ゴール決定率ランキング」のベースになった、一試合平均シュート数ランキング。そこで三浦知良は、名だたる外国人ストライカーのなかに、7位の呂比須=日本人トップ=に次いで、堂々の日本人二位として割り込んだのです(それでも20位・・ちなみに、その時点での中山は、日本人三位で総合33位!!)。

 たくさんシュートは打つけれど、それに比べてゴール量産は叶わなかったから、グラフ上での「ゴール決定率ランキング」ではランク外。それでも、ゴールを生み出すことへの飽くなきチャレンジ姿勢には、全ての日本人選手が見習うべき「マインド」が秘められていたというわけです。それにカズの場合は、数字には現れてこない「重要ゴール決定率」ではダントツのトップでしょうから・・。

 このゴールゲッターランキングですが、ここでは、93年から99年までで「49試合以上」を戦ったストライカーに限ってランキングしました(48試合以下は足切り!)。ちなみに、その「足切り」をしなかったときの「一試合平均ゴール数ランキング」と「一試合平均シュート数ランキング」の両方でトップに輝いたのは誰だったと思いますか??

 答えは・・・・・・・なんてことはしません・・あははっ。

 さて、まったく足切りしなかったときの(もちろん1ゴールも挙げていない選手や、シュートを一本も打ったことのない選手は除きますが)、一試合平均ゴール数と平均シュート数のトップは・・。

 ジャジャ〜〜ン!! そうです、エムボマ。ちなみに、トップのエムボマは「平均ゴール数=0.85」、二位のマグロンは「0.83(あくまでも99年までの記録ですよ!)」、そして三位がエジウソンの「0.81」というわけです(ちなみに平均シュート数の二位は、あの、ストイチコフでした!)。

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 オールスターマッチの場合、組織パスプレーのリズムが、各ステーションでスピードダウン気味(ゲームの性格から、停滞という言葉は使いたくない・・)になってしまいますから、コンビネーションを基盤とした組み立てという見所は多くはありません。だから、どうしても攻守における「個の勝負シーン」に注目せざるを得なくなる。

 その視点では、攻守にわたって、もっともっと多くの見所(注目選手)はあったわけですが、まあ今回はこんなところで・・。




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