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A3- マツダチャンピオンズカップ二日目・・城南一和vs大連(2-3)・・アントラーズ対ジュビロ(2-0)・・(2003年2月19日、水曜日)

まず城南vs大連の勝負マッチから。

 国立競技場へ向かう直前に、昨日再開したチャンピオンズリーグのバルセロナ対インテル戦をビデオで確認していました。そのこともあって、このゲームでの韓国と中国チームのボールがないところでの動きの緩慢さや、パススピードの低さ、はたまたボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックの遅さばかりが目立ってしまって・・。これでは、相手守備ブロックを振り回すというファウンデーション(クリエイティブな組み立て)や、高い位置での組織的なボール奪取など、望むべくもない。

 アジアサッカーは、やはり世界トップのサッカーとは、まだまだ比べられない・・ということを実感していた湯浅だったのです。まあ、程度に差があるとはいえ、そのことは、日本チームにも言えますけれど・・。

 組み立て段階では、自らが主体になって相手守備ブロックに「穴を空けていくゾ!」という意識ではなく、まさに相手守備のミス(=チャンス)をうかがう・・というプレー姿勢だということです。だから「仕掛けのタテパス」も少なく、味方の足許への横パスを回すシーンが目立ちに目立つ。もちろんチャンスとなったら、ワンツーやドリブル勝負など、爆発的なスピードアップからの仕掛けはみせるのですが、そのプロセスに、自分主体の強烈な意志が感じられないのです。

 この試合での城南(韓国)は、ジュビロ戦とは違い、中盤でボールを動かそうという意識が高いと感じました。そして最後はサイドへ。先制ゴールも含め、何度か、サイドからのクロスからチャンスを作り出していました。ボールを動かすとはいっても、足許パスのオンパレードですけれどネ・・。

 両チームともに、意図的な崩しの組み立てがうまく機能しないから、シュートチャンスを作り出すことがままならない。チャンスらしい雰囲気が出てくるのは、やはり、相手守備ブロックの組織と人数バランスが整っていないカウンター気味の攻撃シーンだけというわけです(そのほとんどが、ミスの結果として生じたアンバランス!)。

 それでも試合展開自体は、ものすごく面白かったですよ。大連ディフェンダーのクリアミスでこぼれたボールを奪ったサーシャが、城南の先制ゴールを奪う。それに対し、GKのキャッチミスから同点に追いつく大連(結局このゴールは、シュートしたハオ・ハイドンのゴールに訂正!)。そして、高い位置でのボール奪取から、これぞカウンターというタテパスが通り、またハオ・ハイドンが、ドカン!と逆転ゴールを決めてしまう。

 後半8分。今度は城南が、ソン・テヨンのフリーキックから同点に追いつく。でも、その2分後に、またまたハオ・ハイドンが、一発カウンターのロングパスに追いつき、うまいコントロールで一人を外して勝ち越しゴールを挙げてしまう。フ〜〜。

 そこからです。城南が攻撃をパワーアップしてきたのは。ボールを動かす作業はほどほどに、中盤でのワンツーやドリブル勝負など、どんどんとリスクにチャレンジしてきたのです。そして最後は、力づくのクロス攻撃やドリブルシュート。何度ビッグチャンスを迎えたことか。

 それこそが韓国チームのツボ。ここが勝負となったら、攻守にわたる全員の活動量が何倍にもふくれ上がり、個々のプレーも不思議と連鎖するようになる。全員が、「オレが行ってやる! オレも攻めの流れに絡んで仕事をしてやる!」という攻撃的なマインドが一致団結し、チーム力が倍増するのですよ。それは、すごい迫力でした。

 それでも結局は、大連の忠実ディフェンスに守りきられてしまって・・。シュート数は、城南の「20本」に対し、大連は「8本」でした。

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 さてアントラーズ対ジュビロ。

 この試合を観はじめてすぐに感じたことがあります。それは、「前の試合とレベルが一回り違う・・」。そう、ジュビロとアントラーズが展開したサッカーは、大連vs城南のそれよりも、戦術的な発想レベルで一回りも二回りもハイレベルだと感じたのです。

 私は、何故そう感じたのか、その理由を探していました。まず展開がスピーディーであること(大連vs城南の最後の15分は除いて)。選手たちの技術レベルも高いこと。そして何といっても、グラウンドで展開されるサッカーが「組織」として連動しているということです。もちろん攻撃でも、守備でも。前の試合では、個人個人のプレーが「単体」としてぶつ切りだったような印象を受けましたからね。

 その背景は、やはり何といっても組織プレーの発想レベル。ボールのないところでの動きをベースにしてパスが流れるようによく回るし、次の次まで意図されたコンビネーションプレーもある。もちろん最後の個人勝負シーンでは、大連vs城南も遜色ありませんでしたがネ。

 そんな印象から入ったゲームでしたが、時間が経つにつれて、こんなことを考えはじめていました。「やはりジュビロは、名波や服部、藤田や中山のチームなんだな・・」。

 この試合では、藤田だけがグラウンドに姿をみせました。そしてジュビロの真骨頂ともいえる、組織プレーでのウラ取りが姿を消してしまう・・。

 キーワードは、やはりボールがないところでのダイナミズム。それが大幅に低落したと感じたのです。中盤でボールが動いているとき、最前線の二人(西とグラウ)は、ほとんどのケースで様子見。もちろん左右には動きますが、仕掛けのキッカケとなる「前後の動き」が出てこない。だから二列目ゾーンが詰まってしまう。だからアントラーズ守備ブロックに、次のボールの動きを読まれてしまう。

 こんなシーンがありました。ワンツーで抜け出した藤田が、前に空いたスペースをドリブルで進んでいく。それでもグラウは、秋田を背にして足許でパスを受けようとするだけ。そんな状況では、三人目もアクションを起こせるはずがありません(まあこの試合では、その三人目の動きが出てきたかどうかは疑問ですが・・)。そこに、戦術的な発想の澱みを明確に感じていた湯浅でした。

 中山だったら、迷わず、一度横へ動いてからのタテへの抜けだし(まあ擬似ウェーブ)にチャレンジしていたことでしょう。そんな爆発的な動きがあるからこそ、相手守備ブロックのバランスを崩していけるのだし、新しく空いたスペースを、他の二列目の選手が使えるものなのです。そんな「変化」のキッカケさえ掴むことができれば、コンビネーションプレーで、動きつづける中山へラストパスが戻されてくるかもしれませんしね。でもこの日のジュビロのサッカーからは、そんな仕掛けコンビネーションは、まったくといっていいほど見られませんでした。

 私は、そんなジュビロを見ていて、「走り抜ける全力フリーランニング」がいかに大事かということを再認識したものです。クリエイティブなムダ走り。その動きによって、他のチームメイトたちが得る可能性は格段に広がるものなのです。だからこそ「クリエイティブ(創造的)」。

 ジュビロサッカーの真髄は、ボールがないところでの「パスを呼び込む動き」の集積だといっても過言ではありません。ところがこの試合では、その動きが中途半端の極み。そして、そんな中途半端ヴィールスがチームに蔓延してしまったというわけです。

 パスを呼び込むフリーランニングを継続するには、膨大な意志のチカラが必要になります。何せ、まったく何も起きていないところに、自ら「何か」を作り出していく作業ですからね。もちろん、ボールを持つ味方との「イメージの連鎖」も重要なファクターになります。「感じて」いない味方。それほど落胆させられることはありません。逆に、パスが出なくても、「スマン!」という小さなジェスチャー一つが、次のクリエイティブなムダ走りのエネルギーになるものです。

 さて、アントラーズ。昨シーズンから比べれば、まだ発展途上だと言わざるを得ません。それでも、攻守にわたるキッチリとした組織プレーは相変わらず(特に守備ブロックは相変わらず堅牢!)。それが、先日の「質実剛健」という表現になったわけです。

 それでも攻撃力は、ちょっと落ちている感じがします。トップに張るエウレルは本来のチカラを発揮しはじめたとは思うのですが・・。

 新加入のフェルナンドですが、アントラーズに貢献できるかどうかは、まだ未知数。私が観た範囲では、単なる中継プレーヤーという印象です。彼のところでタメができたり彼自身がドリブル勝負を仕掛けるわけでもないし、彼のところから仕掛けコンビネーションがはじまるわけでもない。もちろんフリーキックには素晴らしいものはありますが・・。

 まあアントラーズについては、最終日に、存分にレポートするつもりですので・・。

 この試合では、ジュビロのサッカーが気になって仕方なかった湯浅でした。




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