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A3- マツダチャンピオンズカップ2003第一日目・・ジュビロ対城南一和(0-2)・・アントラーズ対大連(3-1)・・(2003年2月16日、日曜日)

あ〜あっ、やられてしまった。後半11分に、キム・デイの見事な中距離シュートが決まったとき、そんな溜息が出たものです。サッカーの内容では、確実に上回っているのに、相手の「研究し尽くしたディフェンス」を崩せず、逆に個人能力を前面に押し出すカウンターからの攻撃に沈んでしまう・・。

 試合の立ち上がり10分を見て感じていました。これは、城南一和は、ジュビロの相手ではないな・・。何といっても、フォーバックが中途半端なんですよ。互いにクロスして決定的スペースへ抜け出したり、戻って「ポスト」としてタテパスを受けたりするジュビロの中山ゴンと西を捉えきれない城南ディフェンスライン。それに城南のミッドフィールドも、例によっての美しいハーモニーで上がってくる名波や藤田、はたまた福西や河村たちを掴みきれていない。決定的チャンスこそ作り出せないものの、全体的な「流れ」は完全にジュビロのものでした。

 それが、15分を過ぎたあたりから・・要は、押し込んでも、押し込んでも、うまく決定的チャンスを作り出せないという事実を自覚しはじめたあたりから(?!)、また徐々に城南が「波状攻撃」をみせるようになってから、ジュビロのリズムに不協和音が感じられるようになっていきます。

 とはいっても、ジュビロ守備ブロックも強いですから、そうそうは「崩される」ということはないのですがね。それでも、とにかく攻撃が・・。

 ジュビロが展開するボールの動きは健在です。ベースは、選手たち相互のイメージシンクロ。もちろん「足許パス」ではなく、あくまでも「スペースへ走り込んだ者」へパスを付けるという原則を守ります。要は、なるべくフリーでボールを持つ(仕掛けの起点)という攻撃での目標イメージが、チーム全体に徹底しているということです。たまには、「美しい!」なんていう声さえ出てしまいます。それでも「ひと味」足りなくなったことは確かな事実。

 各ステーションでの、自信にあふれる「エスプリ・プレー」が少なくなっていると感じられるのですよ。それは、攻撃の変化を付けるのに重要なファクター。軽快にトラップし、当たろうとする相手の逆を取って瞬間的に置き去りにしてしまうとか・・。この「瞬間的な置き去りプレー」が大事なのです。ボールを持っている方は、瞬間的に「大きな余裕」を持てることになりますからネ。それが、うまくいかない。もちろんそれには、城南チームの中盤守備が、時間を追うにしたがって厳しくなっていったという事実もありますがネ。だから、ボールは支配しているけれど、決定的チャンスを演出するところまではいけない。

 私は思っていました。決定的チャンスの演出(最後の仕掛けプロセス)が、あまりにもパスばかりに偏りすぎている・・。昨シーズンだったら、鋭いパス回しに、タイミング良く「個のドリブル勝負」がミックスされることで変化を演出できたから、最後の仕掛けも、より危険なものになっていたと思うのです。それがこの試合でのジュビロは、全員が、「早いタイミングでパスを回さなければ・・」という抑圧された心理状態になっていた?! もちろん名波や藤田、服部などは、ちょっとリズムに変化をつけてはいましたが・・。

 要は、最前線での変化の演出家、高原直泰の不在が明確に見えていたということです。このことは、観戦した皆さんが感じていたに違いない・・。左右からクロスを上げたり、サイドからコンビネーションを仕掛けていく場面では鋭さを感じました。それでも、ひと味足りない。フムフム・・。

 対する城南は、首尾一貫して一つのゲームイメージを徹底していました。中盤から最終ラインにかけての分厚いディフェンスから、ロングフィード、大きめのパス交換をベースに、キム・ドフン、サーシャ、キム・デイらの個の勝負に賭ける・・。ほとんどはね返されたとはいえ、そのうち何本かはチャンスにつながっていました。そう、追加ゴールのようにネ。

 「我々は、ジュビロのハイレベルなサッカーをしっかりと研究し、はやいパス回しに振り回されないで受け止め、素早く攻めるなどの対策を練ってきた・・」。城南のチャ・ギョンボク監督が記者会見で述べていたのですが、まさに彼らは、そのイメージ通りの試合を展開できていたということです。

 このゲームは、勝負のみをターゲットに一発勝負に臨んだ城南のツボにはまったということでしょう。その試合を良い刺激として、ジュビロが復調することを望んで止みません。

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 さて、アントラーズ。彼らについては、一言、サスガの勝負強さ(ゲーム内容に応じた勝負所に対する鋭いイメージ構築)・・ってなところでしょうかね。

 アントラーズの内容は、まさに質実剛健。忠実に、そして積極的にしっかりと守り、フリーキックも含め、そんなに多くはないチャンスを確実にシュートへ(ゴールへ)つなげていく。もちろん大連の重心が前へかかっていることを明確にイメージした「次」のカウンター攻撃を強く意識してね。

 対する大連は、試合の立ち上がりから積極的に攻め上がってきました。個人的なテクニックレベルも十分。でも、チーム戦術(選手たちのプレーイメージ)は、ちょいと低レベル。ボールコントロールはいいのですが、ボールがないところでのプレー(スペースに対する意識)のレベルが、あまり高くないということです。まあ、あれだけヘディングの強いトップ選手を抱えていたら、そうなるのも(監督が、それを前面に押し出したチーム戦術を意識させるのも)道理か・・。

 要は、大連が、ロングボールやアーリークロス、はたまたロングボールが通ったところでのドリブル突破など、「力づく」の攻撃をくり返しているということです。中盤でのパス回しにしても、次の仕掛けではなく、ロングボールを送り込むステーション演出の方を意識しているようで・・。

 特筆なのは、アントラーズ選手たちが、はじまって10分くらいで、(もちろん事前の情報はあったにせよ)体感レベルで、大連の攻撃を余裕をもって抑えはじめたことです。もちろん「次のカウンター」を明確に意識してね。だから、効果的なカウンター攻撃がどんどん飛び出してくる。実際には2点目だけでしたが、実質的にはもう2-3点は入れてもおかしくないという試合内容でした。

 この試合では、柳沢とエウレルのプレーが冴えていました。柳沢については、イタリア、キエーボからスカウトが来ているということもありそうです。でも私は、だからこそ、もっと彼に「エゴイスティック・プレー」へのチャレンジをして欲しいと思っているんですよ。彼がクレバーな選手だということは、もう証明済みじゃありませんか。ここらで一つ、柳沢の新しい側面をアピールしてみては・・。

 フリーランニングが高質だから、繰り返し「良いカタチ」でボールを持つことができるのに、そこで「タメ」ることばかりを意識している。要は、相手の視線と意識を引きつけることで、ボールなしで走り込む味方が、そのまま決定的カタチに入れることの方を強く意識しているということです。もちろんそれも良い選手としての重要なファクター。それでも、特に彼の場合は、「個」をもっと主張しなければ・・なんて思っている湯浅なのです。何といってもサッカーは、(もちろん個人レベルでも!)組織プレーと個人勝負プレーの優れたバランスが、もっとも重要なコンセプトですからね。あれほどの才能を秘めた柳沢だからこそ、もっと、もっとと思うのです。

 あっと・・もう一人。新加入のフェルナンド。まあまあの出来でした。もちろん、レベルを超えたフリーキックを別にしてネ。「アレ」はスゴイ! ホント、ビックリです。もちろん、もっと組み立て段階での組織プレーリズムを意識したり、守備参加を効果的なものにしなければいけませんが、「アレ」は売れます。リーグで見てみたくなりましたよ。

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 さてこれで、水曜日の試合は、二試合ともに「敗者vs勝者」ということになりました(ジュビロ対アントラーズ、城南vs大連)。胸が高鳴るじゃありませんか。

 大連も、いくら戦術が単調だとはいえ、基本的にはチカラのあるチーム。ここで一発、城南を敗ってもらいましょう。ジュビロ対アントラーズについてはコメントの必要はありませんよネ。そうなれば、土曜日の最終日は、ものすごく盛り上がるに違いない。

 水曜日を楽しみに、今日はこれにて失礼。

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 さてこれから、録画しておいた小野伸二のビデオ、中田英寿と中村俊輔のゲームを見ます。内容に応じてコメントしますので。




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