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ヨーロッパの日本人・・今週は、中村俊輔、中田英寿から・・(2003年5月18日、日曜日)

やっぱり「こういう」ゲームになってしまうんだな・・。

 セリエ第33節、ギリギリの「降格リーグ」を戦うホームのレッジーナが、優勝を決め、二軍でゲームに臨んできたユーヴェントスと対戦しました。まあ、ユーヴェがメンバーを「落とした」のは、数日前にチャンピオンズリーグを戦ったから仕方ないにしても、この締まりのないプレー姿勢は、ちょっと行き過ぎ・・。気温が25度まで上がったこともあったのでしょうが、それにしてもね。優勝を決めた直後のゲームということでモティベーションを高められるはずないし、こんな雰囲気のなかで一人だけ頑張っても良いプレーができるはずがない。ここでもまた、サッカーが本物の心理ゲームということが証明された?!

 ユーヴェ選手たちのアクションは、まさに「局所的なボール絡みプレー」だけなのですよ。攻撃においても、守備においても。

 守備・・。レッジーナのボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェック&マークが甘い・・ボール奪取チャンスがあってもアタックに気合いが入らない・・ボールなしのアクションに対するマークも緩慢・・もちろん勝負ゾーンでは、しっかりと対応しますが・・。

 攻撃・・。まったくの「足許パス」のオンパレード。ボールのないところでのアクションがほとんどないから、ボールは動かない。だからボールホルダーは、こねくり回しからの逃げパスを出すばかり。もちろんドリブル突破にチャレンジする選手も皆無。これでは、レッジーナゴールへ迫れないのも道理。

 対するレッジーナは、サッカーにとってはかなり暑い気候にもかかわらず(まあ、最高の状態からすれば少しはペースダウンですが)、攻守にわたってしっかりとしたアクティブサッカーを展開します。まあ、状況が状況だから当たり前ではありますが・・。そして先制ゴールを決めただけではなく、ディ・ミケーレやボナッツォーリ等が、どんどんと惜しいシュートを放つのです。それでも、レッジーナGKのクリアキックが、直接サラジェッタへわたってしまって同点ゴールを奪われてしまう・・。フ〜〜。

 前半は、完全にゲームを支配したレッジーナがチャンスを作りつづけたという試合展開。そして後半の立ち上がりに決勝ゴールを入れたレッジーナが、ほとんどユーヴェの反撃がないままリードを守りきって勝ち点「3」を獲得したというゲームでした。

 さて、久しぶりにトップ下で先発メンバーに名を連ねた中村俊輔。全体的なパフォーマンスは、二列目センターに入り(攻守にわたって限りない自由を与えられ)ボールタッチ回数もアップしたことで、まあまあのプレー内容といったところ。もちろんユーヴェ選手たちが、前述したようなマインドでゲームに臨んでいたこともありましたがネ・・。

 どうも、ドリブル突破トライや、タメからのスルーパストライ、はたまたシュートトライなど、攻撃のリーダーとして、リスクチャレンジへの積極姿勢がまだまだだと感じます。彼に対してネガティブなコメントになってしまうのは、才能レベルに見合った活躍ができないことを本当に残念だと思っているからに他なりません。ボールをもって「1対1」になっても、積極的に勝負を仕掛けていかずに展開パスを回すシーンばかりが目立ってしまう。二度ほどあった勝負シーンでは、巧妙なボールコントロールでマーク相手を翻弄して危険なパスを出すなど、才能を感じさせてくれたのに・・。だからこそ、「もっと・・もっと・・」と思ってしまうのですよ。

 また、パスを出した後の「パス&ムーブ」も緩慢。そこでのダッシュさえあれば、自分がコアになった勝負コンビネーションを演出できるはずだし、ドリブル勝負を仕掛けられる状況にも、より頻繁に入っていけるのに・・。

 正確なパスを出すまではいいのですが、そこで止まってしまうから(まあ彼自身は、ボールを戻して欲しいのでしょうがネ・・)、次の勝負の流れに乗り遅れて置き去りになってしまう・・。

 それでも、局所的なボールコントロールはさすがだし、正確なロングパスも健在。うまく決まればほれぼれさせられてしまう。2-3本はありましたかね、最前線への素早いロング勝負パスが。それはそれで見応え十分でした。またこの試合では、セットプレーでも魅せました。前半では、ボナッツォーリの頭を「オトリ」に、その背後スペースへ入り込んだディ・ミケーレにピタリと合うボールを送り込みましたし(ディ・ミケーレのヘディングシュートはバー直撃!)、後半の立ち上がりの決勝ゴールは、彼のコーナーキックからでした(ニアポストスペースへの正確なボール・・走り込んだボナッツォーリがヘディング一閃!)。

 後半15分を過ぎたあたりで、「守備固め」のために交代退場した中村俊輔。どうも、まだまだ評価がネガティブ方向へ振れてしまう・・。とにかく、彼ほどの才能の持ち主なのだから、動きまわることで(パスを呼び込み、要求する動き!)もっと多くボールに触り、そしてリスクにチャレンジしていかなければ・・。

 さてイタリアの降格リーグ。聞くところによると、レッジーナと「最後のイス」を争っているアタランタも、一人退場になった状況で、それも前半で1点リードされていた状況から、後半に大逆転劇を完成させたとか(最後は2-1で勝利!)。これで、最後のイスをめぐる降格争いは最終節まで持ち込まれた・・。凄いね・・。

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 さてパルマ対ピアチェンツァ。両チームともに勝たなければならない試合です。一方は「UEFAカップ」というヨーロッパ舞台を目指し、一方は、ほとんど無くなった残留の可能性に懸ける。

 ということで、レッジーナ対ユーヴェントス戦とはまったく「別物」のエキサイティングマッチになります。攻守にわたるギリギリの仕掛け合い。中田英寿も、例によって右サイドで先発です。

 実は、この試合での中田が、「トップ下(二列目センター)」で、攻守にわたって自由なタスクを与えられる・・という予想がありました。だから、ものすごく楽しみにしていたわけですが、フタを開けてみたら・・。

 中田のパフォーマンスは、攻守にわたり、例によって高みで安定しています。それでも、どうも右サイドからの仕掛けや崩しを演出できない・・そこからクロスを上げられない・・。それも、相手ディフェンスが「中田潰し」をイメージしているだけではなく、遅いタイミングで、詰まった状況にしかボールが回されてこないから。また、相手に取り囲まれた状況でボールが回されてきても、誰も寄ってこないから仕掛けコンビネーションをイメージすることさえできない。そして、仕方のない安全バックパス・・。

 それでも、中央ゾーンへ進出していったシーンでは、大きな可能性を感じさせてくれました。味方との素早いコンビネーションで抜け出し、二列目のセンターゾーンで「タメ」を演出した中田から、フィリッピーニへの決定的スルーパスが出されたり、逆サイドでフリーになっていたアドリアーノへの決定的ラストクロスが飛んだり。惜しくもゴールにはつながらなかったとはいえ、この二つのシーンは、中田の戦術的発想のレベルの高さを如実に証明していました。

 また中盤ディフェンスでも、競り合いからボールを奪い返したり、忠実で鋭いチェックを決めたり(味方の次のボール奪取の起点!)、はたまたインターセプトを決めたりと、例によっての実効あるハイパフォーマンスでした。

 それでも、結局中田は、前半だけで交代ということになってしまいます。見事なカウンターから二つのゴールを決められ、前半を終わって「2-0」とリードを奪われてしまったパルマ。とにかくすべてを賭して・・という総攻撃を仕掛けるための選手交代だったのでしょうが・・。

 後半のパルマの攻撃エネルギーが増幅し、相手を押し込みつづけたのは、試合の流れからすれば当然の展開でした。何せ、二点をリードするピアチェンツァは、前半にも増して守りにエネルギーを割いていた(選手たちのプレーイメージがそこに集中していた)のですからね。だから、カウンターの芽さえも生み出せないピアチェンツァ。それに対し、完全に相手をゴール前に釘付けにしてしまうパルマ。そして遂に逆転してしまうのです。ジラルディーノ、アドリアーノ、そして最後が、「右サイド」を、見事にタテに突破したフィリッピーニからのクロスをアタマで合わせたムトゥー・・。

 まあ、前回も書いたように、今シーズンのパルマは、ムトゥー&アドリアーノの「わたしゴールを決める人」と、その周りで、ひたすら彼らにボールを供給する人という攻撃イメージを徹底していたということです。この試合でも、後半立ち上がりからの選手交代には「徹底度のアップ」というアイデアがあったに違いない(たしかに、中央へボールを供給するというイメージを徹底する、サイドからの勝負ドリブルが増えた!)。

 「組織と個の高質なバランス」という、普遍的な(?!)サッカーの理想型からすれば、たしかにムトゥーとアドリアーノは「諸刃の剣」。それでも、チーム戦術として、選手全員が「実利的に徹底」すれば、成果(結果)を挙げられる可能性も高まるのかも・・(この表現ニュアンスが難しい!)。この試合での采配も含め、プランデッリ監督の「方針」が確実に実を結んでいることだけは確かな事実ですしネ・・。

 難しいテーマですが、もちろん「このこと」の底流に流れているコンセプトが「イタリアのツボ」であることは言うまでもありません。

 世界規模の視点で、それぞれの文化背景など(数限りなくある要素)で様々な方向へ「枝分かれ」していくプロサッカーの目的・目標イメージ(理想型イメージ)?! さて・・。




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