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ヨーロッパの日本人・・今週も、高原から入りましょう(ハンブルク対ニュールンベルク、4-0)・・(2003年4月27日、日曜日)

今節(第30節)は、ハンブルガーSVが、降格リーグでサバイバルゲームを戦っているニュールンベルク(この時点でビリ二位)をホームに迎えました。

 一方は、来シーズンのヨーロッパ舞台を狙っているハンブルク。もう一方は、一部ブンデスリーガでの生き残りを懸けているニュールンベルク。たしかに、下位との対戦ということで一般生活者の興味はそんなに高くはなかったのでしょうが(ハンブルクのホームAOLアレーナも満杯にはならなかった・・)、少なくともグラウンド上には、十分に、勝負マッチの雰囲気が漂っていましたよ。

 チームの総合力ではハンブルクの方が上なのは誰もが認めるところ。それでもサバイバル心理パワーも存在感をアピールします。もちろん守備を固めるアウェーのニュールンベルク。前半にハンブルクが攻めこんでいたサイドのピッチ状態が最悪だったこともあるのですが、ハンブルガーSVは、ニュールンベルクの守備ブロックをうまく崩せない。対するニュールンベルクは、生き残りパワーを全開にして、攻守にわたってギリギリの勝負を挑んできます。彼らは、守っているばかりではなく、何度かチャンスを作り出すなど、攻撃でもしっかりと人数をかけてくるのです。もちろんハンブルク守備ブロックを崩し切るというのではなく、どこからでも、強引に最終勝負を挑んでいく・・。

 強引なラストクロス・・。強引な中距離シュート・・。これはハンブルクにとっては厳しいゲームになるかもしれない・・。立ち上がり20分間の素直な感想でした。

 そんな状況だから、ハンブルクがチャンスを作り出せるとしたら、やはりセットプレー・・(左サイドから駆け上がるホラーバッハが惜しいクロスやシュートを放ちましたがね・・)。彼らは、フリーキックから、またコーナーキックから、可能性を感じさせるヘディング勝負を仕掛けていくのです。もちろんゴール前勝負ゾーンの主役は、フーカルとウイファルジのチェコ代表コンビ。彼らのヘディングの強さは尋常ではありませんからね。ニュールンベルクのディフェンダーでは、彼らにヘディングで勝てそうな選手が見あたらないのです。だから、彼らが自由にヘディングできないように、ピタリと「身体を寄せて」必死のディフェンスを展開するしかないニュールンベルク守備陣。でも結局は・・。

 コトが起きたのは前半36分のこと。マハダビキアからの正確なフリーキックを、うまく相手からフリーになったフーカルが、次元を超えた高いジャンプから、ドカン!とヘディングシュートを決めたのです。いや、すごい迫力でしたよ。それまで、チャンスの芽は作り出すけれど、どうしても最後のところではね返されてしまうという展開でしたからね。そのフラストレーションを一点に集中させたヘディングシュート。

 その後、前半終了間際の44分には追加ゴールも決まってしまいます。ロメオ。中盤の高い位置で、アルゼンチン中盤コンビのカルドーソとレデスマ(守備的ハーフ)がパスを交換し、最後にレデスマがボールを持ってルックアップした瞬間、ロメオが、決定的スペースへ向けて「斜め」に爆発ダッシュをスタートしたというわけです。そこへレデスマから、ベストタイミングとコースのラスト浮き球が送り込まれたという次第(グラウンダーのラストパスでは、このグラウンド状況ではうまく通らない!)。

 そのシーンでロメオが魅せた爆発スタートに、彼の優れたストライカー感覚が凝縮されていました。このゴールに絡んだのは、カルドーソ、レデスマ、そしてロメオがフィニッシャーでしたから、まあアルゼンチン・トリオによるゴールということになります。

 ところで、この試合で先発だったレデスマ。今シーズン、アルゼンチンのリバ・プレートから移籍してきた25歳の守備的ハーフですが、中盤でのボール奪取テクニック(ディフェンスでの戦術的な発想)や、ボールを奪い返してからの確実な展開パスなど、能力の高さを見せつけました。マルトリッツを筆頭に、ベンジャミンやヴィッキーなど、下がり目ミッドフィールダーのオプションは増えているハンブルク。それでも、上がり目の中盤は・・。

 さて「2-0」とリードしたハンブルク。こうなったらもう彼らのもの。ニュールンベルクは、後半の立ち上がりから必死に攻め上がろうとはしますが、こんなゲーム展開ですから、すでに「心理ゲーム要素」の影響はほとんどなくなり、今度はより明確に「本来の実力の差」が見えはじめたというわけです。

 そこからは、ニュールンベルクが繰り出す前へのエネルギーを余裕をもって受け止め、必殺のカウンターを仕掛けていくハンブルク。そして後半10分、決定的な三点目が入ります。今度はマハダビキア。左サイドを駆け上がったホラーバッハから、ピタリのラストクロスが、マハダビキアのアタマに合わせられたのです。

 このシーンでは、スペースへ送り込まれるクロスではなく(クロスを呼び込む受け手の動きではなく)、味方のアタマに合わせる正確なクロスが主役(クロスの送り手が主役)だったというわけです。

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 さて高原直泰。彼が登場したのは後半20分でしたから、もう試合が決まってしまった後。残念だな・・もっと緊迫感のある状況でプレーして欲しかった・・なんて思っていた湯浅だったのです。

 たしかに、自身のブンデスリーガ三点目となる見事なヘディングシュートは決めましたが、それも、高原のアタマに正確に合わせた、マハダビキアからのクロスが主役だったし、だめ押しの四点目だっから、バイエルン・ミュンヘン戦での、スペースへ飛び込んで決めた劇的な同点ゴールというほどのインパクトはありませんでした。

 たしかに、例によっての攻守にわたる自分主体の全力プレーだけではなく、見事なヘディングゴール以外にももう一本、全力でゴール前へ走り込むことで決定的チャンスを得るなど、存在感はみせました。それでも、最終勝負につながるコンビネーションやドリブル勝負チャンスなど、彼が得意とする仕掛けシーンは、ほとんど演出することができませんでした。まあそれには、高原とのプレー連鎖レベルが高揚しているバルバレスとマハダビキアがベンチに退いたこともありましたがネ。

 まあ、「そんな」状況での登場だから仕方ない。

 さて、ハンブルガーSVが、再びヨーロッパ舞台(UEFAカップ)の圏内に浮上してきました(5位)。残りは4試合。降格リーグクラブとの対戦など、厳しい闘いがつづくことになります。高原にとっては、願ってもない「体感学習機会」。とにかく、どんなにギリギリの勝負状況でも、常に持てるチカラを存分に発揮して実効ある仕事ができるように、最高のイメージトレーニングを積んで欲しいと願っている湯浅です。

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 ちょっとお知らせ。

 この試合で、ハンブルガーSVのヘッドコーチ、アルミン・ロイタースハーンが、通算「200試合」目を勝利で飾りました。1997年からハンブルガーSVに在籍し、トップチームのコーチとして活躍しているアルミン。おめでとう!

 そのことについての記事は、ハンブルガーSVのHPのこちらまで。彼の顔写真入りの記事です。でもドイツ語ですが・・。

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 あっと・・。今節の結果で、バイエルン・ミュンヘンの優勝が決まったことにも触れておかなければ。二位のシュツットガルト、三位のドルトムントが、それぞれ引き分けたのに対し、バイエルンが、ヴォルフスブルクに「2-0」で勝ったというわけです。




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