北ドイツの気候は典型的。まあ、東京から比べればマイナス数度といったところですが、やはり湿度が高い。寒く、湿った空気。それが北ドイツの典型的な気候だということです。
高原がテストトレーニングに参加していたとき、日本では、「さすがにドイツ。寒い、寒い。雪が積もり、凍ったグラウンド上でプレーしている・・」なんて報道されていましたが、それは、一年に数回あるかないかという大寒波が来襲してきたからです。
面白いことにヨーロッパ大陸では、南へいくほど、大陸性の気候になって気温が下がっていきます。それに対し、メキシコ湾流という暖流に近い北ドイツは、比較的気温がマイルド(氷点下になることはそんなにありません)。高原がプレーしたときの雪や凍ったグラウンドは「普通ではなかった」ということです。それでも、周りが明るくなるのが8時過ぎというのは、ちと厳しいですがネ。
私は、親友の自宅に居候を決め込んでいるのですが、彼らはまだ真っ暗なうちから起きだして仕事や学校へ出掛けます。厳しいドイツの冬をもっとも切実に体感するのが朝の時間帯というわけです。たぶん高原直泰も同じように体感していることでしょう。午前中にトレーニングがあるときはネ・・。
というわけで、時差の関係で5時には目が覚めてしまった私は、そんな暗〜〜い雰囲気を「おはよう(グーテン・モルゲン)!」と元気よい声で明るくしようと務めるわけです。
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あっと、またまた前置きが長くなってしまって・・。さて高原がデビューしたブンデスリーガ後期開幕戦。ハノーファーでのアウェーゲームです。この試合については、他のメディアでもレポートしますから、ここでは、ファーストインプレッションだけを簡単に。
テレビでご覧になった方は、例外なく感じられたと思いますが、この試合でのハノーファー(ホームチーム)は、とにかく素晴らしいゲームを展開しました。ハンブルクが後半に同点に追いついた時間帯を除き、全体的にはゲームを完全に掌握していましたよ。
ハノーファーのコンセプトは、もちろん全員守備、全員攻撃。特に、互いのポジショニングバランスを巧みにとりながらの組織的な中盤ディフェンスが素晴らしい。試合後の記者会見で、監督のラルフ・ラングニックが、「今シーズンのなかでは最高の出来だった・・」と述べていました。
シュツットガルトの監督を務めたこともあるラルフ・ラングニックについては、これまでに何度も、私のHP、スポナビでの「湯浅健二の質実剛健コラム」などで取り上げました。プロ選手の経験はありませんが(いや、このことは、もう一度確かめてみなければ・・)、優れたインテリジェンスやパーソナリティー、はたまた勇気をベースにのし上がってきた優秀なプロコーチです。
記者会見の後、ラルフと、少し話をしました。彼の戦術的なコンセプトや、この試合での成功ポイント、はたまたシュツットガルトで彼が導入した「フラット・フォー」などについてですが、いかんせん時間が・・。ということで、彼のこれまでの歩みも含めて、「それじゃ、今度、長く対談することにしようよ。メディアはこちらで用意するから・・」と分かれた次第。とにかく優れたウデを持つコーチ。私が優秀だという根拠については、彼との対談も含めて、機会を見て・・。
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さて試合ですが、とにかくハノーファーのサッカーが素晴らしすぎるために、ハンブルクは、まったくといっていいほど攻め上がることができません。要は、中盤でのディフェンスに押され、組み立てがままならないということです。ハノーファーの中盤ディフェンスは感動的でしたからね。ボールホルダー(次のバスレシーバー)に対する忠実なチェックを基盤に、次、その次と、まさに一糸乱れぬ組織イメージで、ハンブルクの攻めを、ことごとく潰してしまうのです。
この「最初の忠実なチェック」が重要。それが、ハンブルクのボールの動きを鈍くするだけではなく、押し上げの勢いをも殺いでしまうというわけです。
そんな状況だから、タテパスのタイミングは、完全に相手に読まれてしまうのも道理。いくら高原が爆発ダッシュでパスを受けようにも、ボールに触った瞬間に少なくとも二人のディフェンダーにアタックを仕掛けられてしまって・・。
前半のハンブルクは、まったく良いところなく、シュートは高原の一本だけという体たらくでした。対するハノーファーは、カウンター気味の、鋭く直線的なコンビネーションで、3本、4本と、決定的チャンスを作り出します。そして、2本のポスト直撃シュートを放った後の前半40分。完全にハンブルク守備ブロックを振り回し、ボビッチが先制ゴールを決めたのです。それにしてもハノーファー選手たちがボールがないところで魅せる決定的なフリーランニングは見事でした。
後半も同じような展開ではじまり、いきなりハノーファーが追加ゴールを奪ってしまいます。後半5分のこと。これは、ハンブルクの守備的ハーフ、マルトリッツのミスがキッカケでした。タテパスを簡単にカットされ、そのまま出されたタテパスに、鋭くイドゥリソーが反応し、ベストタイミングで抜け出したというわけです。
でもそのゴールから、ゲームに大きな転機が訪れます。しゃにむに「行くしかなくなった」ハンブルクのプレーダイナミズムが倍増したのです。
ダイナミズムの倍増とは、それまで注意深かった選手たちの押し上げの勢いが何倍にも高まったということです。こうでなくっちゃ。そして「やっと」高原が活かされるようになる・・。
高原は、「コンビネーションイメージ」を最終勝負のスタートラインにしていますからね。シンプルにはたき、次の動きでリターンパスをもらって勝負を仕掛けていく・・というのが基本的なアイデアだということです。それには、もちろん味方の厚いサポートが必要になります。そう、ジュビロのようにネ。それが前半では、まさに最前線に「孤立」してしまい、後方からの一発ロングパスを相手ディフェンダーと一緒に追いかける・・というシーンが続出してしまって・・。ところが、2点をリードされてからの、失うモノがなくなったからこその分厚い押し上げによって、やっとイメージ通りのプレーができるようになってきたというわけです。
そして、積極的な押し上げがあったからこそ得ることができたフリーキックから、最終ラインのウイファルジーが、同点となるヘディングシュートを決めます。こうなったら、ハンブルクの勢いが増幅するのは当然の流れ。逆に、受け身に立ったハノーファー選手たちの足が止まり気味になる・・。やはりサッカーは相対ゲームであり、本物の真理ゲームなのです。またそれは、2-0という状況が「悪魔のワナ」だという事実を如実に物語る現象でもありました。
そして迎えた後半32分。右サイドでの素早いコンビネーション(高原がスルー?!)からマハダビキアが抜け出し、ニアポストに入り込んだマイヤーが、そのままダイレクトでシュートを放ち、それが同点ゴールとなってゲームが振り出しに戻ったというわけです。
試合はそのまま終了。ハノーファーにとっては、悔やまれる引き分けとなりました。「とにかく内容的には我々のものだった。・・タラとか、・・レバというのは、サッカーでは禁句だけれど、前半の2本のポスト直撃シュートは決めなければならなかった・・」と、ハノーファー監督のラルフ・ラングニックが悔しがっていましたよ。
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高原は、後半の同点に追いつくまでの時間帯に魅せたコンビネーションプレーなど、何度か、優れたセンスを披露しました。また、最前線からの積極ディフェンスをベースにゲームに入っていくというプレー姿勢も、地元のメディアから好意的に見られていました。逆に、ミスパスや、簡単に相手にボールを奪われてしまうシーンも多いなど、全体的な出来は、彼自身がコメントしていた通り満足できるものではありませんでした。とはいっても、彼がブンデスリーガで「十分に通用するキャパを秘めている」ことだけは認識されたに違いありません。とにかく、これからです。
それしてもハンブルクは、イスラエルのスターチャンスメーカー、レビーボの獲得に失敗したのが痛かった(高原と同時に獲得交渉が進み、後一歩というところまでいっていたのに・・)。この試合では、エースのカルドーゾがケガで出場できなくなってしまったのですが、そのカルドーゾにしても、プレーが遅くなっていますからネ。これでは、高原が描く、最終勝負の「ファウンデーション」としてのコンビネーションイメージを実現するのは難しい。
それでも私は、別なポジティブな見方をしています。要は、このチームが、まだ「オープン」だということです。目立つエースがいる場合は、その選手のプレーイメージに周りが合わせなければならないわけですが、ハンブルクでの攻撃イメージの主導権争いは、まだまだ「流動的」なのです。ということは、高原が、チームメイトたちをイメージ的に引っ張っていける可能性も大きいということです。さて・・。
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次週の相手は強豪のブレーメン(ホーム)、その次はバイエルン・ミュンヘン(アウェー)。厳しいゲームがつづきますが、とにかく高原には、この試合のように、まず積極ディフェンスからゲームへ入り、それを基盤にどんどんと動きまわることで、チーム全体の、シンプルプレー(組織プレー)とリスクチャレンジの勝負プレー(個人プレー)のバランスレベルを引き上げていって欲しい・・。
(様々な意味で)慣れてくれば、確実に目立った活躍が出来るようになると確信でき、ちょっと胸をなで下ろしている湯浅でした。
残念ながら、来週の試合(ホームでのヴェルダー・ブレーメン戦)は、小野伸二のフェイエノールトを観戦するために観られません(曜日と時間が重なってしまうのですよ)。帰国したら、ビデオをベースにレポートしますので・・。
とにかく眠い・・。乱筆、失礼しました。