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両チームともに攻撃のアクセントを演出できなくて・・ゼロックススーパーサッカー・・エスパルス対アントラーズ(1−1、PK戦5-4でエスパルスに軍配!)(2002年2月23日、土曜日)

一体なにやっているんだ・・なんて、ため息が出てしまって。両チームの攻撃についてですよ。とにかく、まったくといっていいほど攻撃でのアクセントを演出できていない・・。

 アクセントとは、要は「仕掛け(リスクチャレンジ)」のこと。また、攻撃での「効果的な変化」なんていう表現ができるかもしれません。まあたしかに、(一発勝負だから!)両チームともに中盤から最終ラインにかけてのディフェンス(意識!)を強化したということで、マークが厳しく、仕掛けの「起点」を作り出すことがままならなかったということなんですが・・それにしてもネ・・。

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 両チームともに、中盤のコアがいない・・、だからタイミングのよいタテパスが出ないし攻撃に「変化」をつけられない・・、とにかくボールを、相手に完璧に読まれてしまうような単純レベルで「回すだけ」という退屈なサッカーなんですよ。

 最前線から、スッともどってきた柳沢。素晴らしいタイミングの「戻りフリーランニング」。彼の足許にタテパスが通されればチャンスになる・・。でも結局、ボールをもっていた本山は、ボールをこねくり回し、相手ディフェンスに詰められてしまった状態で、エスパルスのゴール前へ「放り込み」・・。

 同じようなシーンは、両チームにてんこ盛りでした。とにかくこのシーンが、このゲームの「状態」を象徴していたと思います。要は、中盤のリーダーが不在だということです。

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 攻撃でのイメージ的な目標は、スペースで、ある程度フリーでボールをもつこと。そのスペースの位置によって、それが直接シュートシーンになったり、最終勝負を仕掛けていく「起点」になったりするというわけです。

 とにかく、両チームともに「仕掛け」ていく意識が低すぎるんですよ。自信がないんでしょうネ。お互いに「オイ、オマエ行けよ・・」なんていう消極マインドがミエミエ。もちろん「互いのポジションバランスを考えたクレバーな組み立て」なんてことを意識しているんでしょうが、そればかりでは、「変化」を演出するコトなんて出来やしない。

 韓国代表のヒディンク監督が、「選手たちは、組織プレーという意味では格段に進歩している。でも、互いのポジショニングバランスや、タスクバランスを考えるあまり、今度は、自分で『行かなければならない』場面でも、パスをしてしまったりする・・。もちろん、後ろの選手が行きすぎるのも問題なんだけれど・・」なんていう発言をしていたとか。

 まさに、そこなんです。サッカーでは、組み立てにおけるバランスや、ロジックなボールの動き(もちろん目標は、相手守備ブロックの薄い部分を突いていくこと!)とはまったく次元を異にする、「自分主体の仕掛け(リスクチャレンジ)」も、もの凄く重要なんですよ。互いのポジショニングバランスが崩れるとか、またボールの奪われ方が悪ければ、「その後の」守備ブロックが薄くなるなどの「後ろ髪引かれる要素」を気にしすぎるのは、確実に「後ろ向きサッカー」への転落を意味するということです。

 だからこそコーチは、「優れたバランス感覚」を有していなければならない・・。まあこのテーマについては、また別の機会で・・。

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 さて試合ですが、展開は、まさに「伸びきったゴム」ってな具合。慎重に、慎重に・・。そして、思い切った仕掛けをベースにした変化をまったく演出ことができない攻撃に終始する・・。

 アントラーズでは、右の名良橋、左のアウグスト、はたまた守備的ハーフの中田浩二、熊谷などが、前線の選手を追い越して飛び出していくシーンは、本当に数えるほど。そのことは、エスパルスも同じです。前半17分に飛び出した、アレックスのドリブル勝負には、鳥肌が立ちましたがネ(名良橋を翻弄して抜き去り、逆サイドのバロンへピタリと合うセンタリングを決めたシーン!)。

 とにかく両チームともに「前後のポジションチェンジ(二列目、三列目プレーヤーたちの決定的スペースへの飛び出し等!)」に対する意志が、まったくといっていいほど見えてこないんですよ。これでは、エキサイティングな「崩しシーン」を演出できないのも道理。そして両チームともに、中盤でボールを動かすことだけに四苦八苦する。これでは・・

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 それでも、後半に入って、エスパルスのプレーからは、少し変化の兆候が見られるようになってきます。その演出者は、両サイド。市川とアレックスです。でも、「よし、やっとゲームに動きが出てきたな・・」なんて思っていた後半22分。やってくれましたヨ、エスパルスGKの黒河が・・。「奇妙な先制ゴール」のシーンです。

 アウグストから送り込まれた、ペナルティーエリアの決定的スペースへのタテパスに合わせた本山。そこに、ケガの森岡に代わって最終ラインの真ん中に入った大榎と、エスパルスGKの黒河が「集合」し、交錯して倒れ込んでしまいます。そして最終的に、黒河がボールを掴んだのです。そこで黒河は、「これはファールだろう・・」と勘違いし、フリーキックを蹴るためにボールを置いてしまうんですヨ。レフェリーがまったくホイッスルを吹いていなかったにもかかわらずネ・・。

 そのボールを、立ち上がった本山が「かっさらい」、そのまま無人のエスパルスゴールへ転がしたっていう次第。まあ、あまり見ることができない奇妙なシーンではありました。

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 ところで、ゴールした後、自分のアタマを指でさし、「クレバーなプレーだよ!」なんて得意げの本山。たしかに、すぐに発想を転換した本山に「拍手!」ではあるんですが、でも、全体的には良くなかったですよ、彼の出来は・・。まあ本山ファンの方々からはブーイングを浴びるんでしょうが、とにかく「事実」ですからネ。

 レッズの「アリソン」もそうですが、とにかく「能力のあるプレーヤー」が、持てるチカラを「出し切る発想の」プレー姿勢に対しては、強烈な批評をすべきだと心に決めている湯浅なのです。

 アントラーズ首脳陣は、本山をビスマルクの後継者だと考えているようですが、今のパフォーマンスでは、調子が悪いときのビスマルクよりも低レベル。チーム力アップにはつながらないことは、誰の目にも明らかなことだと思います。

 たしかに昨年のチャンピオンシップでは、ビスマルクに代わった本山は大活躍しました。それでも状況は「交代選手」。ゲームが動き、相手チームの守備も、かなり流動的になっている状況での登場ですから、自由奔放にプレーできるのも道理・・ということです。

 でも、最初から攻撃の演出者になる・・という使われ方では、まったくといっていいほど、チカラ(持ち味)を発揮できない・・。

 ここがポイント。スターティングラインアップに名を連ねた瞬間から、ゲーム全体を通した「ペース配分」を考えてしまう・・!? それで、全体的に「流されるプレー」に終始してしまう・・!?

 まあ、彼のプレーが低調だったのは、エスパルス中盤守備が堅牢だったこともあるんでしょうが、「中盤でのつなぎパス」に終始する本山の姿には、本当にフラストレーションがたまってしまいました。

 ボールを持っても、フリーな味方へ「展開パス」を回すだけ。そして、例外なくその場に立ち尽くしてしまう・・。たまには「一発フリーランニング」は魅せますが、その流れが途切れたら、またまたその場に止まってしまう・・。すぐにでも、次の展開を自分が中心になって構成するゾ!という意識で、ディフェンスをスタートしなければならないのに・・。

 前線の柳沢、鈴木、小笠原の出来については、まあまあ・・という評価なんですが、本山が「前線の鈍重なカベ」になってしまっていたことで、彼らのコンビネーションも途切れがちでしたし、両サイドや守備的ハーフの「追い越しオーバーラップの勢い」も殺がれてしまった!?

 まあ、低調なアントラーズ攻撃の非を、彼一人に負わせるのは酷だとは思いますが、期待が大きい分、逆に怒りも限りなく高まってしまったとご理解ください(もちろん彼については、時間が解決すると確信はしているのですが・・)。

 今の本山には、「ペース配分など考えずに、とにかく最初からフルペースでプレーしろ!」、また「プレーは、とにかくまず守備から入らなければ、プレーのペース(イメージ)を、自分主体で作ることなんて出来やしないぞ!」ということ言いたい湯浅です。何といっても彼は、攻守にわたって「限りなく自由」にプレーしてもいい・・というポジションを与えられているのですから・・。

 はじめからフルペースで・・、最初はディフェンスからプレーに入っていけ・・。その「意味」は、皆さんもご存じの通りですよネ。

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 さて、来週から「J」がスタートします。二強と思われていたアントラーズとジュビロ。ケガ人、スターティングメンバーの変化等で、思わぬブレーキ要素が見え隠れしています。また、彼らを追いかける「一番手」であるべきエスパルスにしても、まだまだ・・。

 これは、今シーズンの「J」ファーストステージは、大混戦になってしまうのかも・・。さて、どうなるのか・・。今から楽しみで仕方ありません。では今日はこの辺りで・・

 
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 ・・と書いたところ、多くの方から、厳しい試合が重なったから、コンディション的に最悪だった・・そのポイントを書かずに批判するのは・・といった意見が寄せられました。もちろん、その「疲労ファクター」については視野に入っています(まあ、たしかにそれが、前後のポジションチェンジがあまり出てこなかったことの要因であることは確かなことでしょう)。それでも、私が判断したベースは、あくまでも「プレーの発想レベル(姿勢)」のハナシ。要は、どのようなプレーをやろうとしているのかということです。その意味で、今のアントラーズ(特に中盤)は、私にとって、確実に「発想のバランス」が崩れている・・、その大きな部分(原因)が、本山にあり・・、だからこそ彼は、もっと戦術的な発想を磨くべき・・という「大きなロジックの流れ」になったわけです。



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