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W杯レポート(22)・・あれ程のサッカーを展開していたのに・・セネガル対トルコ(0-1、トルコのゴールデンゴール!)・・(2002年6月22日、土曜日)

さて、いま大阪、長居スタジアムのメディアセンターで、韓国対スペインの勝負マッチを観はじめました。

 両チームともに、慎重な立ち上がり。慎重という意味は、攻守にわたるポジショニングバランスを、あくまでも維持する姿勢でプレーするということです。攻撃、中盤、守備のスリーラインを「まず」維持しようとする両チーム。

 それにしても、韓国の「バランス感覚」は大きく進歩したと感じます。守備では、互いのポジショニングのバランスを維持することで、効率のよい中盤プレッシャーをかけつづける(マークの受けわたしと、勝負所での集中など、流動性のなかのバランスがいい)。そしてボールを奪い返したら、これまた、互いの意識が有機的に連鎖するように前へ飛び出していく。それも、前後のバランスが崩れ過ぎない程度に・・。もちろん、基本的なバランスの発想をベースに、勝負所では「エイヤ!」もある。そんな、「行くところ」と「引くところ」のバランスのとれたメリハリが、彼らのサッカーにおいて、もっとも重要な発想だということでしょう。

 でも、互いに注意深い立ち上がりということで、最初の20分間は、ロングボールでの一発勝負のときにしかスタンドが沸かないという展開がつづきます。典型的な、一発勝負における「立ち上がりの膠着状態」。

 でも、25分を過ぎるあたりから、スペインが「やり」はじめます。バランスのとれた各ラインでの「縦方向への伸びしろ」が広がってきているのです。要は、タテのポジションチェンジが増えてきているということですが、そんなベーシックな攻撃の変化に、至る所で単独ドリブル勝負やタメ、はたまたワンツーなど、小さな「エスプリプレー」も付加されはじめるのです。

 徐々に韓国の守備ブロックを翻弄しはじめるスペイン。そんな流れのなかで、何度か、決定的チャンスまで作り出してしまいます。いよいよスペインが来はじめたな・・なんて思っていた前半の終盤でした。

 後半も同じような展開になります。とはいっても、韓国も、ホン・ミョンボを中心にした堅実な守備をベースに、しっかりと押し返します。本当に大したものだ。決定的なチャンスの演出力では、やはりスペインに一日の長があるとはいってもネ。それに韓国は、ツキも味方にしていると感じます。

 そんなエキサイティングな展開が、最後の最後までつづいた勝負マッチ。とにかく見ている方が疲れてしまう・・といったエキサイティングな展開ではありました。

 それに、エッ!?・・というジャッジも、またまた、何度も飛び出しましたしネ。まあ、それがあったから、詳しく分析するモティベーションを殺がれてしまったということもあったわけです。

 とにかく、韓国の準決勝進出に対して、オメデトウゴザイマス! の一言を贈りたいと思います。

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 さてトルコ対セネガル。両チームともに、ほぼベストメンバーが揃いました。

 セネガルでは、左右のダフとコリー、中央のディアッタとマリック・ディオップのコンビで最終ラインを構成します。中盤の底は、例によって三人、真ん中に「前気味のリベロ」として中盤ディフェンスを締めるシセを置き、両サイドに、どんどんと攻め上がるディアオとパパボウバ・ディオップが控えます。二列目は、左にファディガ、右に、スウェーデン戦で2ゴールを決めたアンリ・カマラ。そしてトップは、言わずと知れたデュフ。

 対するトルコは、日本戦では出場停止だったベロゾールが帰ってきました。彼が左サイドに入り、日本戦でヘディングゴールを決めたダバラが右サイド、二列目には、例によってバステュルクとハッサンのコンビ、そしてトップがハカン・シュキュールという布陣です。

 ものすごく面白い対戦になりそうな予感。この試合も時間を追ってレポートします。もちろん私はセネガルをサポート。何といっても、彼らとブラジルの対戦ほど、様々な視点で興味を惹かれる勝負マッチはありませんからネ。

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 さてキックオフ。

 立ち上がりの数分間で感じたこと。それは、やはり・・というか、トルコの方が、組織プレーではセネガルに勝っているということです。何度か、素早く広いボールの動きから、セネガルの決定的スペースへ入り込んでいくチャンスを作り出します。

 それに対してセネガルは、中盤での「ある程度」素早く、広いボールの動きをベースに、最後には、例によっての爆発的な単独勝負を仕掛けていく・・。危険度では、やはりセネガルに軍配が上がります。デュフ、ファディガ、アンリ・カマラ、また後方から攻め上がっていくディオップ、ディアオ等の、最終勝負のチカラは、相当なものです。

 とはいっても、トルコも負けてはいません。とにかく組織的にボールを動かしながら、決定的なフリーランニングを仕掛けいくんですよ。

 そんな展開ですから、とにかくセネガルの守備能力の高さが目立ってしまって。それはもうレベルを超えています。一対一の場面で抜き去られたり外されたりする場面がほとんどありません。またパスカット(インターセプト)に対する読みもハイレベル。そんな面白いコンテンツが一杯の魅力マッチになりはじめました。

 全体的なペースを握っているのはトルコ。攻撃でも、守備でも、モダンサッカーを体現したスマートなプレーを魅せつづけます。とはいっても、どうしても最後のところで攻めきれない。逆にディフェンスでは、セネガルの爆発的な最終勝負を抑えきれないシーンも何度か目撃されてしまう。フムフム・・

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 前半18分、サイドからのセンタリングから、セネガルが決定的なチャンスを作り出します。中央でオーバーヘッドシュートにトライするデュフ。そのこぼれ球を、ドカン!とシュートするファディガ。結局オフサイドになってしまいましたが、その攻撃には、レベルを超えた迫力がありました。やはりセネガルは強い・・なんて思ったりした湯浅だったのです。

 その決定的なチャンスあたりからですかネ、トルコの攻め上がりにチカラがなくなっていったのは。それは、セネガルの中盤ディフェンスが、より素早く、パワフルになってきたからとも言えます。そのことで、トルコの中盤でのボールの動きも、分断されがちになってしまって・・。まあそれには、中盤でボールを奪われた後のセネガルの攻撃が、あまりにも迫力満点だから、トルコ選手たちの押し上げパワーにも陰りが出てきている・・という側面もあります。

 前半21分にセネガルが繰り出したカウンターは、まさに大迫力。デュフから、タテへ抜け出したファディガへタテパスが通り、そのままシュートまでいってしまうんですよ。

 そしてセネガルが、ゲームを掌握しはじめます。ゲームの全体的なペースを握っているというのではなく、一つの「攻撃ユニット」を、ことごとくシュートチャンスに結びつけてしまう・・、だからトルコの前への心理エネルギーが殺がれがちになってしまう・・ということでしょう。

 でも、そんなジリ貧の展開のなか、トルコが、一瞬のカウンターを決めかけます。

 ハカンシュキュールが抜け出し、それにハッサンが絡んだ決定的チャンス。でも最後は、ハカンがトラップミスをしてしまって・・。それにしても、一度、ハカンのドリブルに抜かれたディオップ(マリック)の追いかけるスピードは、それはもう凄かったですよ。5メートルは後方から、それも振り向いて追いかけたのに、すぐにハカンに追いついてしまって・・。そんなスピードがあるから、逆に、ポジショニングやマーキングが、ちょっと「いい加減」になりつつある・・なんてことも感じていた湯浅でした。

 また28分にもトルコの攻撃が成就しかけます。左のハッサンから、ファーポストスペースへ抜け出したハカンへ、ラストサイドチェンジパスが通りかけたのです。ここでもハカンの足が、ほんのちょっと追いつかなくて・・。フムフム・・

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 やはり「チャンスは良薬」ですよネ。この二つのチャンスによって、再びトルコが勢いを盛り返してきます。もちろんそれは、後方からの押し上げが活発になり、そのことでボールの動きに、再びダイナミズムが出てきたということです。その10分前の時間帯では、ボールのないところでの動きが沈滞していたことで(周りの足が止まり気味になっていたことで)、ボールが回らなくなっていましたからネ。さて、またまたエキサイティングな展開になってきた・・。

 前半38分には、またまたトルコが、サイドを突いて決定的なカタチを作り出してしまいます。演出家は、ベロゾール。左サイドのコリーが上がったことで出来た大きなスペースへダッシュし、そこへ、ピタリとタテパスが合わされたのです。完璧にフリーな状態からのセンタリング。でも、またまた中央のハカンに、ギリギリのところで合わなくて・・。

 いや、トルコのペースも上がってきましたよ(逆にセネガルの足が止まり気味になってきたとも言える!)。彼らの組織プレーに鋭さが蘇ってきたのです。やはりトルコも、ヨーロッパ強豪の仲間入りを果たしただけはあります。

 「今回のオレたちの代表は強いぜ・・本当に・・」。友人のトルコ人プロコーチ、ジャディール・ヒディールが言っていました。「そうだよな。ヨーロッパのサッカーシーンでも、ガラタサライやベジクタシュとか、フェネルバチェなんていうクラブチームもかなり活躍するようになってきているしな・・」と、私。

 前半43分。今度はバスチュルクが決定的なチャンスを迎えます。ヘディングなどで何本かパスが回り、最後にタテパスが出たのです。もちろんバスチュルクの決定的フリーランニングに合わせてネ。でも、彼のヘディングでの「流し込みシュート」も、ゴールライン上で(ギリギリのタイミングで)ダフに蹴り出されてしまいます。

 前半の終盤の時間帯は、もう完全にトルコのペース。セネガルは、押し返すことさえ出来なくなってきています。どうしたんだよ・・なんて思っていた前半のロスタイム。カマラからデュフへの決定的パスが通ります。デュフのフリーシュート!!・・という場面でしたが、結局はトルコのディフェンダーに抑えられてしまって・・。

 一つひとつのプレーエッセンスをアタマに刻み込み、それらを「同時に」文章にしていく作業は大変なんですよ。まあグチをいっても仕方ないですがネ・・。

 ということで、このデュフのチャンスで、前半が終了します。それにしても、セネガルのペースダウンが心配です。

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 さて後半ですが、何度かチャンスになりかけたシーンはあったものの、本格的な「動き」はまだこれからということで、最初の15分間は、ピッチ上のプレーを見つめるだけに終始してしまいました。

 セネガルの最終ラインですが、積極的にラインをコントロールする「純粋なフラットフォー」です。ポジショニングのミスや、「ブレイク」のミスはあるものの、彼らには「その後」でも追いついたり、競り合いに勝てる自信があるんでしょう、ちょっと、守備プレーが「イージー」だと感じる場面もあります。たしかに、抜群の身体能力で、結局は守り切れてしまいますからネ。私は、もう少し「厳しく・忠実に」ディフェンスをやらなければ、勝負の試合に勝ち切ることは難しいかな・・なんて感じはじめていました。

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 ゲームは、相変わらずトルコがペースを握り、カッタるいプレーをつづけるセネガルが、時たまカウンターを仕掛けていくといった展開です。それでも、そのカウンターに、前半のような危険なニオイは感じなくなっています。ということで、ちょっとゲームが落ち着いてきましたかネ(両チームディフェンダーの相手攻撃プレーに対するイメージも確たるものになってきている!)。

 そんな展開の後半21分、何度もシュートミスを繰り返し、決定的フリーランニングの勢いも低迷しはじめたと感じていたハカン・シュキュールが、マンシッツ(読み方は定かではありません!)と交代です。さてトルコの攻めに、新たな風が吹くか・・。

 後半のセネガルの攻めですが、前半のような「組織プレーをベースにした変化」が全く感じられなくなっていきます。まあ、トルコのディフェンスが、彼らの攻めのリズムに慣れてきたということもあるのでしょうがネ・・。また、前半には見られた、チャンスを見計らった後方からの押し上げも目立たなくなってしまって・・。これは問題だな・・なんて思っていました。

 セネガルの魅力が半減してしまっている。もしかしたら彼らは、ベスト8に駒を進めたことで緊張の糸がプツンと切れてしまったのか・・!?

 その傾向は、何といっても彼らの守備プレーに現れています。組織的とは言い難い、個人勝負のディフェンスばかりになってしまっているんですよ。また、攻撃にしても、個人プレーばかりが目立ちに目立ってしまって・・。そして最後は、デュフへの一発パスか、ドリブル勝負ばかり・・。やっぱり彼らの緊張は「ほぐれ過ぎて」しまったようです。

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 さて延長にはいりました。まあ、あまりに動きのない・・というか、トルコは攻めきれないし、セネガルの攻撃も前述したような「リズムが分断された」ものですから、スタンドの緊張感までが弛んできてしまっていると感じます。

 そんな雰囲気のなか、唐突にVゴールが生まれます。トルコ。延長前半3分のことです。右サイドのダバラへ素早くパスが回され、そこから、一発のニアポストクロスが飛んだのです。そしてそれを、爆発ダッシュで走り込んだマンシッツが、ズバッと決めてしまったのです。そして「ジ・エンド」。

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 まあセネガルにとっては自業自得といった結末ではあります。それにしても、あれ程のサッカーを展開していたのに、最後の内容が悪すぎる・・。それに対しトルコは、どんどんとパフォーマンスをアップさせています。ブラジルとの準決勝が楽しみで仕方なくなりました。

 本当に残念で仕方ありません。とにかく、これまでと、この試合との(まあ前半の終盤から後半以降にかけて)、セネガルのサッカー内容の「落差」に、ちょっとショックを隠せない湯浅なのです。

 彼らは、ワールドカップ開幕戦のフランスに照準を合わせてチーム作りをしてきたのでしょう。そしてデビュー戦で、世界を驚かせる高質サッカーをみせます。でも結局彼らは、そのペースを最後まで維持することが出来ませんでした。それが、長丁場のトーナメントであるワールドカップの難しさということです。

 それにしても残念。また納得もできません。かなり落胆の奈落が深く、立ち直るのに時間がかかりそうな湯浅でした。

 次は、ソウルでの準決勝を、現地からレポートしますので・・。




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