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W杯レポート(18)・・大会を通じて成長を続けるセネガル・・彼らもまた、それまでの自信に、確信という「実」を詰めた・・セネガル対スウェーデン(2-1)・・(2002年6月16日、日曜日)

今朝は、5時に起床し、そのまま伊丹空港へ。飛行機は8時20分なのですが、ちょっと落ち着いた思考の時間が欲しくて・・。伊丹にあるANAのラウンジでは、コストフリーのインターネット接続サービスを提供していますし、雰囲気も静かですから。

 そして、昨日の試合でイングランドが魅せた、守備ブロックの基本的な発想について考えを巡らせていたというわけです。

 「組織」にとらわれ過ぎず、かといって単独プレーにはしり過ぎることもない。積極的に(組織的に)ラインを押し上げるわけでもなく、また下がり過ぎたり、受け身になるわけでもない。それでも、抜群に「実効」のある強い守備。まさに「有機的に連鎖する」彼らのディフェンスプレーに、守備での「組織と個のバランス」を感じていた湯浅なのです。それにしても、ホント強いな、ヤツらのディフェンスブロックは・・。

 「そうなんだよ。イングランドの守備ブロックは、ものすごく安定している。あのフラットラインだったら、簡単に人の間を突いていけそうだけれど、勝負となったら、背中にも目があるような反応で、ピタリとマークされてしまうんだよ」。以前、友人の欧州プロコーチと、イングランド守備について話し合ったことがあります。そこで彼が使った表現に、興味深いものがありました。背中の目。

 もちろんそれは「読み能力」ということなんてすが、彼らが展開するプレーには、守備のイマジネーションを感じるのです。どうも表現が、アブストラクト(抽象的)になってしまうのですが・・。

 抜群の強さを魅せつづけるキャンベルとファーディナンドのコンビ。一対一に強いだけではなく、ヘディングも抜群。そして鋭い読み。その読みを支えているのが、スコールズとバット、はたまたベッカム(右サイド)とシンクレア(左サイド)で構成する「中盤ライン」のクリエイティブなディフェンスです。

 (当たりに)行きすぎず、引きすぎず。ボールを持つ相手(パスレシーバーも含む)が、突破チャレンジのモティベーションを殺がれるようなクレバーなポジショニング・チェックを魅せるのです。それによって、相手の攻撃の方向(エリア)がコントロールされてしまう・・とまで感じます。

 そしてそれをベースに、他の中盤選手や、最終ラインが、「次」を読んだ勝負を仕掛けていく。フムフム・・。「個」をベースにした、「あうん」の組織ディフェンスプレー・・または、ポジショニングバランスオリエンテッド守備システム・・なんて表現できますかね。

 昨日の試合における「ボールポゼッション(ボール支配率)」は、デンマークの「63%」に対し、イングランドは「37%」。でもデンマークがチャンスを作り出せたのは、本当に数えるほど。とにかくイングランドの守備の強さに脱帽の湯浅だったのです。

 機会を改め、一度しっかりと分析してみましょう。もちろん彼らの基本的なディフェンス戦術の発想は分かっていますが、それに加えて、グラウンド上での「選手個々のインスティンクト(=それぞれの選手たちの発想のコンビネーション)」などをです。

 そんなことを考えながら大分に到着し、メディアバスに揺られて「ビッグエッグ(大分スタジアム)」まで辿り着いた湯浅でした。

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 さてセネガルですが、攻撃の演出家、ファディガと、守備組織の忠実な体現者(守備的ハーフ)のディアオが出場停止です。それだけではなく、何人かの選手たちが怪我という情報も入ってきています。

 いま先発メンバーが発表になりました。フムフム・・。この試合では、シセを中心にしたファイブバック。その前に、下がり気味のフェイエとパパボウバ・ディオップ、そして上がり気味のチュウとアンリ・カマラで組む中盤が控えるという布陣なんだろうか・・。いや、例によって、シセは少し上がり、中盤の底を務めるかもしれない・・。

 これに対しスウェーデンは、リュンベリが怪我で出られない他は、ほぼベストメンバーですかね。あっと、パトリック・アンデションが「いない」。理由は分からない・・さて・・。

 この試合も、時間を追ってレポートすることにします。もちろん私はセネガルを応援してはいますが、レポートは限りなくニュートラル・・の、はずです。

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 さて試合。

 やはり、シセは、中盤に上がり、いつものフォーバックです。でも何といっても驚いたのは、セネガルが、ほんとうにスリートップでやろうとしていることです。チュウを真ん中に、左にデュフ、そして右にアンリ・カマラ。彼らは、ほとんど中盤守備に参加する気配がありません。その代わり、「4-3」の守備ブロックが抜群の強さを発揮する。さて・・

 開始3分、スウェーデンが、クレバーなフリーキック展開から、決定的なチャンスを作り出します。直接蹴るふりからの右へのラストパス。それをアレクスアンデションだと思いますが、思い切りシュートを放ったのです。それを、セネガルの天才GK、シルバが、足の先ではじき出します。フ〜〜。

 そこからは、もうスウェーデンが、一方的にペースを握ります。それでも、8分には、セネガルが押し返し、中盤までもどったデュフからのタテパスが、決定的スペースへ抜けるチュウの走りと、ピタリとシンクロします。相手を振りきったフリーの状態でタテパスを受け、そのままダイレクトシュートを放つチュウ。でもわずかにバーを越えてしまって・・。フムフム・・。

 その後は、ちょいとセネガルの勢いが増したかな・・なんて思っていた10分、スウェーデンが、先制ゴールを挙げてしまいます。鋭いコーナーキック。それに、飛び出したシルバよりも一瞬早く、スウェーデンのラーションがボールに触ったというゴールでした。もちろんヘディングシュートですよ。さて・・

 そして予想されたように、セネガルが吹っ切れます。それまでちょっと「戦術意識」に縛られ、慎重にプレーしようという姿勢がありましたからね。またアンリ・カマラも、少し下がり気味になって中盤でのバランサー的な位置へ・・。でもそれは、デュフと交代交代かな・・。とにかくそれによって、両サイドのコリー、ダフも、どんどんとオーバーラップしてくるようになります。もちろん組み立てでの組織プレーは健在。

 ゴールは、様々な意味を持つモノです。ゴールしたチームを勇気づけ、そのままペースをどんどんと上げさせる・・、逆に、少し下がり気味になり、吹っ切れた相手に押し込まれてしまう。もちろん、まだまだ色々なパターンはありますが、ここでは、後者の展開になります。セネガルが、どんどんと前へのエネルギーを充実させていったのです。それでも、後方は・・? まあそこには、ディオップ、ディアッタ、シセなど、経験豊富(バランスプレーもOKの!)で、抜群の身体能力をもつディフェンダーたちが控えていますからネ。

 これって、韓国テグで行われた予選リーグ第二戦の、デンマークとのゲームを思い起こしませんか?? あのときも、トマソンのPKで先制された後、セネガルが同点にしただけではなく、最後まで完璧にゲームを掌握し、デンマークを押し込みつづけましたからネ。さてこの試合では・・。

 そして試合は、まさに「その」再現といった展開になっていきます。でもちょっとセネガルが、中盤からの個人勝負が目立ちすぎると感じるようになります。もっとボールを動かして、勝負は、もっと相手ゴールに近いところで仕掛けていかなければ・・そう、いつものように・・。まだ焦る時間帯じゃない。

 でも、その後はまたゲームが落ち着いてきます。最終ラインから中盤にかけての組織プレーがまたまた機能しはじめ、それをベースにした単独勝負が活きはじめたのです。そこでは、「誰が、どんな状況になったら単独ドリブル勝負を仕掛けていくのか・・」、「左サイドでデュフがもったら、確実に勝負するから、ゴール前でクロスボールを待つぞ・・」なんていうイメージが、しっかりとシンクロしていると感じます。

 でもまあ、この試合では、どうしても単独勝負が多くなってしまう。何といっても、ファディガがいませんからネ。彼がいれば、前線でも、もっとボールが動くはずです。

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 それにしてもセネガルのプレーは、見ていて楽しい。要は、素早い組織プレーのなかでの「エスプリ」というか。トラップしてから、パスを出すタイミングは、例によって素早いのですが、その短い時間のなかで魅せる「ちょっとしたアトラクション」。トラップする瞬間に、フェイクを入れて相手を振り回したり、少しキープするなかで、見事な「切り返し」で相手を置き去りにしたり。それでも、周りの動きがいいこともあって、ボールの動きに停滞する雰囲気が漂うことは希です。

 スウェーデン守備の薄い部分へボールを回し、そこを、抜群の破壊力のドリブルで攻め込んでいくセネガル。デュフが、カマラが、チュウが、はたまた両サイドのコリーが、ダフが・・。彼らのサッカーには、魅力が満載ですよ。

 もちろんまだまだ「荒削り」。パスにしても、もっともっとスムーズに回るはずですし、単独勝負も目立ちすぎ。もっとスマートなパスでの崩しができるようになれば、彼らのドリブル突破にも、「変化という付加価値」が加算されてくるのに・・。あっと、この試合では、ファディガが出場停止だった・・。まあ、彼らはまだまだこれからだ・・。

 もう一つの彼らの魅力ですが、何といっても、彼らのスピード(=ジャンプ力)には驚きがありますよ。まあ、その天賦の才に「溺れて」しまっては墓穴を掘ることになるんですが、そこにはブルーノもいますからネ。とにかく攻守にわたる「一対一」での彼らの強さが、世界のトップクラスであることは確かなことです。そのことは、フランス戦でも証明しましたよネ。

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 さて、前半36分。やってくれました。アンリ・カマラ。ヘディングでのパスを胸でトラップし、チェックにきたスウェーデンディフェンダーをスパッと右へかわします。そして、そのまま右足で、ドカン! ボールは、目にもとまらぬ速さで、スウェーデンゴールの左隅に吸い込まれていきました。スゲ〜〜な!

 ゴールが、ゲームの流れを変える!? その後、「刺激」を受けたスウェーデンも盛り返し、前への勢いを増していきます。でもチャンスは、セットプレーばかり。ゲームの流れのなかでは、どうしてもセネガル守備ブロックを崩すところまでいけません。

 それに対してセネガル。とにかく、誰がボールをもっても(もちろん前線ゾーンでのことですよ)、常に「危険な香り」を漂わせます。デュフやアンリ・カマラのドリブル突破。パパボウバ・ディオップの、中盤からの「タテのスペースをつなぐドリブル」等々、どうもスウェーデンは、一対一では相手にならないようです。セネガルは、これに「パスでの崩し」が加わればな・・なんて、またまた考えている湯浅です。あっ・・そうか、ファディガがいないんだ・・。

 とはいっても、そこは北欧の古豪。抜かれても、外されても、粘り強く、組織的に(カバーリングの繰り返しで)守りぬきます。そんな彼らのサッカーを観ていて、このような展開がつづいたら、最後は、「勝負の勘所」を深く心得ているスウェーデンが・・なんてことも考えはじめた湯浅です。何といってもスウェーデンには、伝統がありますからネ。

 そして、前半が終了しました。

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 さて勝負の後半がはじまりました。

 セネガルのゲーム戦術は変わらず。中盤まではしっかりとボールを動かし、最前線では、デュフ、カマラがドリブル突破を試みます。そして、タイミングを見計らったフリーランニングを仕掛けるチュウ。攻撃には、両サイドのうちの一人が必ずオーバーラップし、その代わりに、フェイエとシセ、そしてパパボウバ・ディオップは、必ず守備ブロックに残ります。

 拮抗した内容です。ここにきて、スウェーデンも、セネガルに対してどのように守るべきなのかが感覚的に分かってきたようです。守備での勝負を急がず、ウェイティングで仲間のサポートを待つ・・それによってセネガルの攻めを停滞させることができる・・。セネガルの攻めも、人数が足りないことで、どうしてもドリブル「だけ」になってしまっていますからネ。それでも、セネガルのドリブル突破能力は傑出しています。もちろん、デュフが目立つこと。

 そんな展開がつづく後半12分、唐突に、スウェーデンがチャンスを作り出します。大きくセンターフォワードに当て、そこからのバックパスをダイレクトで叩く! そのイメージです。少しでもボールの動きが遅くなったら、確実にセネガル選手に潰されてしまいますからネ。

 それに対してセネガルも仕掛けます。その1分後、左サイドのダフが、サイドチェンジパスを受けて怒濤のドリブル。スウェーデン守備はなすすべなく、2-3人が抜き去られてタッチラインまで持ち込まれ、決定的な「戻り気味クロス」を返されてしまいます。シューターは、チュウ。でも、右足アウトで蹴ったボールは、遠く、左ポストを外れてしまって・・。まあ、互角の展開だな・・。

 でも20分を過ぎたあたりから、スウェーデンの「組織的な攻め」の勢いが増していきます。決定的な場面に絡んでくる選手たちの数だけではなく、ボールのないところでの二人目、三人目のフリーランニングが、どんどんと活性化しているのです。

 それでも、セネガルの最終ラインは、「読み」もいい。ここにラストパスがくる!という確信が、ピタリ、ピタリと当たるのです。最終的な決定的スペースへ、スウェーデン選手よりも先に入ってしまうディオップやディアッタ等の最終ライン選手たち。なかでもディアッタがいいですネ。中央で、抜群のカバーリングを魅せつづけていますよ。

 34分。スウェーデンのカウンター。交代出場したイブラヒモビッチが、セネガルのコリーとの競り合いに勝ち、次に、戻ってきたシセをもかわしてフリーでシュートまでいってしまいます。最後は、「天才」シルバがシュートを弾いたとはいえ、完璧なチャンスではありました。

 その後は一進一退ですが、全体的な「流れ」に大きな変化はありません。スウェーデンの攻めを、余裕をもって守ってしまうセネガルに対し、スウェーデンの守備は四苦八苦。そしてゲームは、延長に入ります。もちろん「ゴールデンゴール方式」です。

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 延長前半5分。徐々にスウェーデンが、本来の勝負強さを発揮してきていると感じます。何度かのチャンの後、セネガルのペナルティーエリア内でボールをもったスヴェンソンが、上手い「回り込みコントロール」でセネガルディフェンダーを置き去りにしてしまったのです。でも、フリーシュートが、右ポストを直撃してしまって・・。

 それに対しセネガル。例によってデュフが、ドリブルで持ち込み、二人を外してフリーシュート。ただ右へ外れていく・・。

 何となく、スウェーデンが、経験ベースの勝負強さを徐々に発揮しはじめた・・と感じます。勝負をかけた味方の攻め上がりがあり、人数が厚くなっていることで、前線でのパスがスムーズに回りはじめたのです。振り回され気味になるセネガル守備陣。これは危ないな・・。

 そんなことを考えはじめた延長前半13分のことでした。やってくれました。またまたカマラ!!

 右サイドへドリブルしたチュウからのヒールパスを受けたカマラが、そのまま直線的にドリブルし、そのままの勢いをシュートにぶつけたのです。そしてボールが、スウェーデンゴール左隅へ糸を引いていきました。

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 狂喜乱舞するセネガルチーム。記者席でも、セネガルのジャーナリストが喜びに身体を震わせています。私も、心から「オメデトウ」とつぶやいていました。

 セネガルも、大会を通じて大きく伸びたチームのうちの一つ。日本や韓国のようにネ。

 ということで、もし日本がトルコに勝利をおさめたら、昨年10月にランスで対戦して以来のセネガルとの再戦ということになります(そのときは2-0でセネガルが勝利!)。

 今日は、ノドが痛く、ちょいと身体も「加熱」気味なので(アイルランド対スペインの、ものすごい熱戦もありましたからネ・・スペインがPK戦でベスト8進出!)、もう寝ることにします。




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