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W杯レポート(13)・・あ〜あ、あのフランスが・・フランス対デンマーク(0-2)・・ドイツに勝負強さの片鱗が・・ドイツ対カメルーン(2-0)・・(2002年6月11日、火曜日)

今朝は、早朝から静岡のSBSラジオに出演し、そのままホテルへとって返して残りの原稿を仕上げました。それでも、何かアタマの中が「ザワザワ」。そうです。「マイチーム」が勝負の試合を迎えるのです。ドイツ、そしてセネガル。またフランスにも、絶対にトーナメントに残って欲しいですからネ。

 そんなことを考えているから、どうも原稿が進まない。ということで、その原稿の最後は、絶対に-------ということになるはずだ(もちろん私の思い入れチームのトーナメント進出)・・もし湯浅の予想がハズれたら、笑ってやってください・・なんて締めちゃったりして・・。

 今日は、静岡から掛川まで電車移動。台風は熱帯低気圧になったとかで、雨は小康状態です。それでも、まだまだアタマの中を占拠しているは今日の試合のこと(もちろん私のイメージトレーニングですよ!)。結局、掛川と菊川(掛川の一つ手前の駅)の「川違い」で、電車を降りちゃいましたよ。ホント、またバカをやってしまって・・。

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 セネガル対ウルグアイ、フランス対デンマークは同時進行です。メディアセンターには、たくさんのテレビが設置され、二つの試合を同時に観られます。さて・・

 でも結局は、フランスの試合を一生懸命に観ることにしました。セネガルは、試合の進行状況に応じてということにしましょう。

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 フランスは、プティーの代わりに「マケレレ」、アンリの代わりには「デュガリー」が先発です。申し訳ありませんが、ここではフランスを中心にレポートします。デンマークファンの方々には申し訳なく思います。ご容赦アレ・・。

 さて、ということで見はじめたフランス戦でしたが、「あ〜あ、これは大変なことになった・・」なんて、すぐに感じてしまって・・。

 とにかくデンマークが、9人で守備ブロックを作っているんですよ。守備ブロックに人数が多いと、互いに譲り合ったりとか、集中が途切れてしまうもの。でも、そこはさすがにデンマーク。一人ひとりが、ボールホルダーをチェックする者、そこへの協力プレスや次のパスを狙う者、ボールのないところでマークをする者、そして空いたスペースを狙えるようなバランシングのポジショニングをとる者・・等々、とにかく、一人ひとりが、常に、「有効」な仕事を探しつづけるのです。もちろん中央ゾーンは、人数をかけています。

 そんなデンマークの強固な守備ブロックを、最高の状態とは比べようもないほど沈滞気味のボールの動きにもかかわらず、強引に攻め崩そうとするフランス。これでは、いくらフランスとはいえども無理だよな・・なんて思っていたとき、デンマークが先制ゴールを挙げます。前半22分のことです。

 セットプレーからの展開で、最後は、右サイドから、ファーポストスペースでフリーになっていたロンメダールへ、素晴らしく正確なダイレクトクロスボールが糸を引いていきます。そして、まったくフリーで、正確にシュートを決めるロンメダール。フ〜〜〜。そのテレビの横では、セネガルが、PKで先制ゴールを決めるシーンが映し出されています。

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 デンマークのゲーム戦術(=選手たちが具体的にイメージする戦い方)。9人で、バランス良く、そして全員での「その場で判断する仕事探し」をベースに粘り強く守り(もちろん中には、ジダンマーク専門という選手もいる)、そして、ボールを奪い返したら、最低2人は必ず参加して、トマソンをトップにする(彼を走らせる)カウンターを仕掛けていく・・最後は、絶対にシュートかセットプレーで(フリーキックやゴールキック等で)終わる・・というものでしょう。

 そして、その後のフランスの攻撃は、まさに手詰まり状態へ・・。

 もっと素早く、広くボールを動かさなければ・・、もっとボールのないところでの動きを活性化しなければ・・、もっとロングボールを織り交ぜた変化を演出しなければ・・なんて思いながらも、「それにしても、この試合でのデンマークの強化守備だったら、もうどんなチームでもゴールを挙げるのは・・」なんてことも考えたものです。

 ジダンの調子は、もちろん良くない。全力ダッシュでのボールのないところでの仕掛けやドリブルチャレンジはほとんどなく、中継プレーばかりに終始する。また、たまに魅せる「魔法」も、決定的チャンスを芽生えさせるまでいかない。フムフム・・。

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 後半も同じような展開ですが、まったくといっていいほど実効ある仕事ができていなかったデュガリーに代わり、やっと「シセ」が登場します。これで、彼のスピードと高さを活かした攻撃が展開できる・・。

 そして、やっとフランスの攻めに、スムーズな「流れ(リズム)」が出てきます。それでも、デンマークの守備での集中も、それにつれて高まっていったように感じるのです。これは難しい。

 たしかにフランスは、何回か決定機を作り出します。それを決め切れないだけではなく、逆にデンマークに決定的な2点目を奪われてしまうのです。スコアラーは、例によってトマソン。左サイドへの素早い展開から、これまた素早いタイミングで、フランスゴール前スペースを横切るようなトラバースパスが送り込まれます。そんな状況での、トマソンの決定的スペースへ走り込む感覚は、まさに一流。そしてトマソンが、ファーポストスペースへ走り込み、ピタリと合ったトラバースパスを、キッチリと決めたという次第。これでゲームは終わってしまい、私の「落胆ドラマ」がクライマックスを迎えたというわけです。

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 フランスにとってこの試合は、「時間と勝ち点状況」との心理戦でもありました(彼らは2点差以上で勝たなければならない!)。見えない敵ですからネ。彼らのサッカーに、その「心理戦争」の暗い陰が、常につきまとっていたと思う湯浅なのです。

 ボールがつながるようになった後半でも、最後のところでのタメがない、中央ゾーンへ急ぎすぎる、本来のリズムではないから、どうしても攻めに入った選手たちの足が止まり気味(足許パスが多い!)・・。

 それでも、何度かは、素晴らしいドリブル突破や、例によっての「狭いゾーンでの素早いワンツー」などを魅せはしましたがネ・・。

 フランス選手たちも感じていたに違いありません。自分たちが「神様が仕組んだ落胆ドラマ」の主人公を演じているんじゃないかってネ。

 ワンツーで突破したヴィルトールからのラストパスを、ゴール前5メートルのところからシュートしたトレゼゲですが、それがバーを直撃したときなんかは、彼の顔から、皮肉な笑みまでもれてしまって・・。「ダメだ、こりゃ・・今日は、まったくオレたちの日じゃない・・」。

 これで、ワールドカップ主役の一人が消えました。私は、絶対に彼らはデンマークを敗って決勝トーナメントへ進出すると確信していましたから、(前述したように)色々なメディアに、その確信の背景までも語ってしまいましたよ。まあ仕方ない・・。これがサッカーということです。

 もう一つの最終戦も、前半で3点をリードしたセネガルが、最終的には「3-3」まで追いつかれてしまって・・。彼らには、経験が足りなかった・・ということでしょう。「3点だゼ! もう絶対に大丈夫だ・・」。彼らには、そんな「見せかけの余裕」が墓穴を掘る・・。そのことに対する「体感」が足りなかったということです。でもまあいいじゃありませんか。これで、彼らも一つ学んだのだし、彼らの目標だった決勝トーナメント進出を果たしたのですから・・(二位通過)。

 私の「隠れマイチーム」が大会から消えたことに、かなり落胆しながらも、まあ、これがサッカーだし、それはつづくんだ・・と、自分自身に言い聞かせていた湯浅でした。

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 さてドイツ対カメルーン。この試合も、時間を追って、書きつづることにします。

 12分。完全に押されていたカメルーンが、ちょっとしたドイツのミスパスを突き、オレンベがカットします。そのまま突進するオレンベ。そこへ、こぼれ球を拾った仲間からのタテパスが、まさにオフサイドギリギリで出ます。このシーンでは、オレンベは完全にリンケがマークしていたのですが、最後の瞬間、リンケが「オフサイドだ!」と泊まってしまったんですよ。あれがオフサイドだったのかどうか・・。タイミング的にはオフサイドはないように見えたのですがネ。とにかくオレンベは、ドイツGK、カーンと1対1になってしまいます。スッ、スッと、落ち着いて前へ出ていくカーン。両手を「斜め下側」へ広げ、例の鬼の形相。その迫力は、想像に難くありませんが、それに気圧されたオレンベは、結局、カーンの正面へシュートをしてしまうのです。やっぱり、オリバーはすごい!

 その後は、もう膠着状態。カメルーンの攻撃は、例よって「停滞」のオンパレード。まったくボールが動きません。もちろん、最終勝負ゾーンまでいくことができれば、ドリブル、ワンツーなど爆発的なテンポアップはありますが、その「勝負ゾーン」にしても、ドイツにとっては先刻ご承知ですからネ。

 とにかくカメルーンは、ドイツの守備組織が整った状態では、ほとんどいっていいほど、それを崩せるような雰囲気さえ、醸し出せません。

 カメルーンは、中盤でボールをもった場合、そこにアタックしてくる相手を「かわす」ところからペースアップすることを明確にイメージしています。「一人を抜けば、フリーになって仕掛けられる」というわけです。要は、最終勝負の「起点」になるというわけですが、欧州チームの場合、それを作り出すのは「ボールの動き(=パス)」がベース。それに対してカメルーンは、アタックしてくる相手を「かわすドリブル」をイメージしているということです。

 でもそれでは、簡単にアタックせず「ウェイティング」の場合はどうしようもなくなってしまう。まさにドイツが展開している守備のようにネ。そして「仕方なく」横パスですよ。これでは、「次」を読まれてボールを奪われてしまうのも道理。

 対するドイツも、カッタるい攻めなのですが、それでも「カタチ(=ツボ)」をもっていますからネ。中央から上がっていっても、サイドから攻め上がっても、とにかく最後の瞬間は「サイドからのクロス」か、中距離シュートを明確にイメージしているのです。もちろん流れによっては、例外的な「中央突破」もありますが、それにしても、大体は、ロングボールを「ヘディングで落とし」、そのこぼれ球を狙うというカタチくらいですかネ。

 27分。コーナーキックの次の展開から、ソングがドイツの最終ラインから飛び出してフリーヘディングを打ちます。わずかに左へ逸れたのですが、オフサイドではないし、完全なフリー。決定的なチャンスです。考えてみたら、ここまで、カメルーンは、二度も、決定的なチャンスを作り出しました。それに対してドイツは、ツィーゲが蹴ったフリーキックからの一本だけ(ファーポストの上隅へ・・カメルーンGKが、指先で弾いた!)。それ以外は、チャンスらしいチャンスなしってな体たらくです。

 カッタるい組み立てのカメルーンでも(ものすごくノロい組み立てでも)、選手たちが欧州で活躍しているだけあって、最終的な仕掛けでは、イメージがシンクロする瞬間がある・・っていうことです。そのことを、どのように表現しましょうか。まあそれは、組み立てが遅いことで、逆に、最終勝負のタイミングを合わせやすいということですかネ。それにしても、走り抜けられてしまったドイツ最終守備ラインには猛省が必要です(オフサイドを確信していたから・・ということなんでしょうが、それにしても・・)。ラインの間を抜かれたのは、それだけで、その他は、完璧に抑えていたとはいえ・・。

 39分。ラメローが、二枚目のイエロー食らって退場になってしまいます。フムフム・・。でも、そのときボクは思っていました。「そうそう、こんな厳しい状況が、ドイツを覚醒させるんだよ。ヤツらは、もっともっと追いつめられれた方がいいんだ!」。それまでのドイツのプレーに、どうも「アイルランド戦からのネガティブイメージ」が尾を引いているように感じていましたから・・。

 とにかく「脅威と機会は表裏一体」なのです。さて、これからだゾ・・なんて思っていました。

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 さて後半。ドイツでは、ヤンカーに代わって、左サイドを担当するマルコ・ボーデが登場します。長い間の怪我がやっと癒えたマルコ。彼にとって最後のワールドカップということになります。そして、すぐにやってくれました。

 中盤でボールを奪った「ワントップ」のミロスラフ・クローゼ。そこへ、四人のカメルーンディフェンダーたちが集中してくるのですが、しっかりとボールをキープします。そして左サイドに「太平洋スペース」ができてしまう。そこを駆け上がる白いカゲ。マルコです。

 ミロスラフ・クローゼのキープは巧妙でした。スッと右へ、そして切り換えして左へ。カメルーンのディフェンダーたちは、単にその動きを見ているだけで寄せていかない。まあ、「仕掛けてこいよ!」ってな心理だったのでしょう。なんといっても、あれだけ人数がいますからね。それこそ、悪魔の心理的なワナだったというわけです。

 そして切り換えした直後のミロスラフの左足から、ここしかないというコースへ、素晴らしいスルーパスが通される。もちろん、マルコ・ボーデは、まったくフリー。そして落ち着き払ったシュートを、右隅に決めたというシーンでした。

 このシーンでは、カメルーンのジェレミが、マルコ・ボーデを「見て」いなければなりませんでした。でも彼は、完全にボールウォッチャーになってしまって・・。そして振り向いたときには、もうそこにマルコはいなかったというわけです。まさにこれが、ドイツ人が「カメルーンの最終ラインは穴だらけだ・・」という根拠なんですよ。

 後半は、フォーバックにしたドイツ代表。その前の中央に、ハーマンとバラックのコンビが網を張り、その少し前の右サイドにはベルント・シュナイダー、左にマルコ・ボーデ、そしてミロスラフ・クローゼが、ワントップという基本的なポジショニングバランスになります。

 でも攻撃に移ったら、クローゼを「オトリ」に、バラックが、シュナイダーが、ハーマンが、はたまたボーデが・・と、どんどんとタテへ抜け出していくんですよ。もちろん、タテのポジションチェンジ。とはいっても、「左右のチェンジ」は、人数が足りないからできませんがネ。

 ここからは、やっとドイツがゲームをコントロールできるようになってきます。たしかに押されてはいるのですが、決定的な場面では、決してウラを取られたりしないし、全員の守備意識が高いから、互いの信頼をベースに、「その時点での自分のポイント」だけに集中することができるんですよ。

 26分には、またまたイエローカード。本当にこの試合のレフェリーはイエローが多い。まあ、ある程度は的確ではあるんですがネ。この時もらったのは、ドイツのツィーゲ。これで彼「も」次の決勝トーナメント一回戦では出場停止です。ドイツで出場停止なのは、彼の他、中盤守備の重鎮、ハーマン。そして最終ラインの重鎮、ラメロー。いやはや・・。

 そして33分、ドイツが追加ゴールを挙げます。カウンター気味の攻め上がりから、右サイドでボールを回し。最後にドリブルで仕掛けたハーマンから(数人のカメルーン守備陣の意識と視線を引きつけたスキを突いて)、右サイドのバラックが、まったくフリーでタテパスを受けたのです。そしてそのとき、中央のミロスラフ・クローゼが、まったくフリーになってしまって・・。ここでも、クローゼをマークしていなければならなかったのは、ジェレミ。フ〜〜。

 それにしても、バラックの「足首のスナップ」を効かせたセンタリングは、相手にとって大いなる脅威です。

 最後のシーンになりますが、これこそが「ドイツのツボ」と呼べるようなチャンスが飛び出します。後半の40分。右のフリングスへパスが周り、そこから、ゴール前でタテに走り込むバラックへ、ピタリとクロスが合わせられたのです。結局カメルーンGKに防がれてしまったとはいえ、この試合では、一番「らしい」ゴールチャンスだったのかも・・。

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 さてこれで、ドイツが一位でグループを抜け出し、もう一つのカードでは、アイルランドが、サウジアラビアを「3-0」と下して順当に二位を確保しました。

 今回は予選リーグでの番狂わせが多いから、リーグ最終戦が、まさに決勝トーナメントの様相を呈していると感じます。明日は、死のグループ(F組)の最終戦、ナイジェリア対イングランドを見るために大阪へ移動です。あ〜〜疲れた・・。ということで、今日はここで・・




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