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W杯レポート(12)・・韓国が厳しい立場に追い込まれた・・韓国対アメリカ(1-1)・・チュニジアは、ものすごく手強い相手だ・・チュニジア対ベルギー(1-1)・・(2002年6月10日、月曜日)

今朝は、2時間ほど床につき、その後ラジオ文化放送に出演しました。まあ、番組の盛り上がっていること。この盛り上がりが、日本におけるサッカー文化の社会的ポジションアップ(サッカー文化の浸透)に対し、直接的、間接的に貢献することを心から願っている湯浅です。

 勝ったという「現象」ではなく、サッカーという社会的な存在が内包するパワーの凄さ、そしてその理由(背景要因)を感じて欲しいと願って止まないのです。イレギュラーするボールを足で扱うなど、不確実性要素が満載されていることで、最終的には「自由」にプレーせざるを得ないサッカー。もちろん「組織目的を大前提とする、ある一定のチーム内ルール」のなかで・・。そんなボールゲームは、他に存在しません。その自由度の高さが、世界でもっともポピュラーであることの背景にあるということです。

 瞬間的に変化をつづける状況のなかで、常に、自分主体で判断、決断し、勇気と責任感をもって「自らが信ずる」プレーにチャレンジしていかなければならないサッカー。そのプレーのほとんどがリスクと隣り合わせ・・。それは、いまの不確実になっている大競争時代の状況に、かなりの部分「投影」されると思います。だからこそサッカーが、21世紀社会のイメージリーダーにもなり得る存在だと確信している湯浅なのです。

 ちょっと「硬く」なってしまって・・スミマセン。とにかく私も、昨日の日本の初勝利に、まだまだ歓喜さめやらず・・ってな具合なんですよ。

 それは、この勝利の影響が、(日本の良さをそのまま残した!)社会体質の改善なども含み、これから、ものすごく「広範囲」に波及していくに違いないと思っているからです。だから私は、いまの日本代表が呈示している成長プロセスの「流れ」が断ち切られないことを願って止まないのです。

 ホンモノの闘う集団(組織目的を強烈に意識する個人事業主の集合体!)になった日本代表チームに、乾杯!!

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 さて今日は、まず韓国対USAを短くレポートし、その後、ベルギー対チュニジア戦にも軽く触れようと思っています。ではまず、韓国とアメリカの激突から・・。

 試合は、「激突」という表現にふさわしい激しいサッカーを展開する韓国に対し、その前への勢いを落ち着いて受け止め、鋭いカウンターを仕掛けていくアメリカという展開になりました。

 それにしても、あれだけ動いたら、いつかはバテるんじゃないか・・なんて思っていたのですが、前半24分に、アメリカのマティスに先制ゴールを決められてしまったために、韓国のダイナミズムは、同点になるまで大きく落ちることはありませんでした。真っ赤に染まったスタンドの大声援・・。

 とにかくすごい押し上げ。これぞ「韓国パワー」なんて思っていたのですが、それでも、以前のように、前後左右の(人数&ポジショニング)バランスがバラバラになってしまうというわけではありません。しっかりとバランスをとりながらも、抜群の迫力攻撃を仕掛けていくのです。

 よくトレーニングされたチームだな・・なんてことを思っていました。それでも、最後の仕掛けは、ちょっと強引に過ぎる。もっと落ち着いてボールを動かせばいいのに・・。最後の仕掛けで「変化」を演出できないから、どうしても、アメリカ守備陣のウラを突くことができないのです。またドリブル勝負でも、相手を抜き去るところまではいけない。アメリカのディフェンダーは1対1にも強いですからネ。

 エネルギッシュではあるけれど、どうもスマートさに欠ける韓国の攻撃に対し、アメリカのカウンターは、まさに危険そのもの。ツボにはまったときには、感動的なほどに忠実でスピーディーな(ボールのないところでの)勝負のフリーランニングが飛び出すんですよ。それも、一人だけではなく、ときには2人、3人と・・。

 また組み立てでも、素早く広いボールの動きから、ラストパスと決定的フリーランニングが、ピタリとシンクロするようなハイレベルな攻撃を魅せます。ということで、この試合では、決定的チャンスの数と、ボール支配率が、まさに「反比例」ってな関係になってしまったんですよ。

 韓国は、たしかに押し込むなかでPKを取ったし(失敗!)、ソル・ギヒョン、チェ・ヨンスが(パスレシーバーとして)、それぞれ一回ずつ、アメリカ守備ブロックのウラを突いた決定的なチャンスを作り出したものの、結局、流れのなかでは、十分なチャンスメイクができないというフラストレーションがたまるサッカーになってしまいました。彼らの同点ゴールは73分。フリーキックからの、アン・ジョンファンのヘディングシュート。それは、見事な「ニアポスト勝負」でしたよ。

 これで韓国は厳しい立場に追い込まれてしまいました。何といっても最終戦は、手負いのポルトガルですからネ。それに対してアメリカは、チーム崩壊状態の(!?)ポーランド。明日の試合では、たぶんポルトガルが勝ち点「3」を挙げるでしょうからネ。(この詳しい状況については、様々なネット情報を駆使して、各チームのポイント状況を確認してくださいネ)

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 さてチュニジア対ベルギー。この試合も「1-1」の引き分けに終わってしまいました。

 日本代表の選手たちは、このゲームを宿舎で観ていることでしょうネ。そして再認識しているに違いありません。「手強い相手だな、チュニジアは・・」。

 この試合では、ボールの支配率では、ベルギーが凌駕していました。それでも、シンプルなパス回しからの、ゴール前での味方の動きにピタリと合わせるクロス攻撃という得意なカタチを作り出すことがままなりません。それは、チュニジアが、しっかりとした分析をベースにした準備を重ね、それに基づいたクレバーな守備を忠実に展開していたからに他なりません。ボールホルダーへの素早いプレッシャーは当たり前として、次のパスを読んだポジション取りや、ボールの動きの停滞に狙いを定めた協力プレス。はたまた無類の強さを発揮する「1対1」など、粘り強くベルギーの「ツボ」を潰していくのです。

 それにしてもチュニジア選手たちは素早い。足の速さもそうなんですが、次の勝負所に対するイメージ描写にスピードがあると感じるのです。とにかくこの試合では、誰一人としてサボらず、攻守にわたる全力プレーを繰り広げました。正直言って、ビックリ(し)ました。

 そして攻撃となったら、本当にカミソリの刃のように鋭い仕掛けを繰り広げるのです。

 カウンター気味に、中盤からの超速ドリブル勝負や、2-3人によるシンプルなコンビネーションを臨機応変に組み合わせて素早く相手ゴールへ迫るというのが基本的な発想です。要は、パスでの組み立てというシーンは、ほとんどなく、とにかくボールを奪い返したら、即、全速力・・ってな具合なんです。それが、驚くほど危険なニオイを放ちます。

 ゴドバン、ガブシ、トラベルシ、ジャジリ、そして何といってもベン・アシュール。そんな、スピードとテクニックを兼ね備えた才能たちが、ドリブルやワンツー、はたまた超特急のフリーランニングにピタリと合う一発ロングパスなどを駆使し、アッという間に相手ゴールへ迫ってしまう。あの堅牢なベルギー守備陣もタジタジといったシーンが続出していました。

 これまでの彼らは、一体何だったのでしょう。私は、彼らのトレーニングマッチを数試合ビデオで観たのですが、そのときの「鈍足サッカー」から比べたら、この試合での彼らの「様々な意味を包含するスピード」は、まさに100倍。一時期チュニジアはどん底まで落ち込みましたよネ。今の彼らには、だからこその結束があるように感じます。まさに、サッカーは心理ゲーム・・っちゅうことです。本当に手強い相手のチュニジア。さて、リーグ最終戦が楽しみになってきたではありませんか。




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