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欧州便り(2)・・最後まで、粘り強く闘いつづけた日本代表・・そして稲本の完全復活!・・レアル・マドリーvs日本代表(1-0)・・(2002年5月8日、水曜日)

いや、感動的な「闘い」を魅せてくれたじゃありませんか、日本代表の強者たちは。

 そんな闘う姿勢が目立ったのは、何といっても、「水たまり」のなかの闘いになった後半です。あんな状況では、とにかく全員が、ボールが止まることも視野に入れて、自分主体で仕事を(まあそのほとんどが守備になってしまうのですが・・)探しつづけなければなりませんからネ。何が起きるかわからないから、「見てしまった」方が負ける・・。ボールが止まるということを意識し、常に「次」に対するイメージを鋭く磨きつづける前向きな姿勢が勝負を分けるというわけです。

 逆に言えば、こういう状況だからこそ、選手たちの「気の強さ」、「性格の強さ」が明確に見えてくるとも言えるかもしれません。それについて、福西や小笠原が、自ら「先の闘い」を探しつづけ、闘いつづけるという姿勢になるまでに、ちょっと時間がかかり過ぎた・・だから試合の流れにしっかりと入っていけるまでに時間がかかり過ぎた・・という印象が残ります。

 それに対して久保や中澤は、交代出場した「最初から」、そんな「変化要素がテンコ盛りの闘いの場」で存在感を存分に発揮していました。フムフム・・。

 水たまりになり、ボールのイレギュラーバウンド以外の「変化の要素」が増えた後半だったからこそ、それぞれの選手たちの「闘う姿勢」が如実に現れたということです。

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 前半ですが、やはり、組織プレー、個人的な能力では、「二軍」といえど、レアルに一日の(いや、それ以上の!?)長があります。ゲームを支配され、押し込まれる日本代表。それでも、日本の守備ブロックが完全に「崩された(完璧にウラを突かれた)」というシーンは皆無といっていいほどでした。

 押し込まれているけれど、それで日本の守備ブロックが受け身になり、下がり過ぎてしまって(眼前や背後の)スペースを突かれるといった悪魔のサイクルに陥ることは、まったくといっていいほどなかったのです。抜かれても、外されても、粘り強く「次の守備」に全力で戻りつづける日本代表の強者たち。局面の競り合いでは、激しい、本当に厳しい競り合いを挑みつづけます。だからレアルにしても、例の「軽快なボールの動き」を演出することがままなりません。

 そんな強固な守備ブロックの主役が、稲本と戸田の守備的ハーフコンビだったのです。特に稲本が素晴らしかった。休むことを知らないダイナミックディフェンダー。この試合では、なんといっても稲本の完全復活が、光り輝いていました。もちろん、「水たまりの闘い」でも、その光が鈍ることは、まったくありません。

 私は、この試合でも、稲本を中心に見ていました。いや、というよりも、意識して探さなくても、自然と彼のプレーが目立ってしまう・・と表現する方が妥当でしょう。守備でも、攻撃でも・・。素晴らしい。やっと、本来の稲本の「姿」に戻ってきた・・なんて、ホッと胸をなでおろしたものです。

 そんな稲本や戸田の活躍は目立っていましたが(また明神の「粘り腰」も見応えありましたよ!)、やはり「守備重視」の意識をベースにしていますし、攻撃ブロックの選手の組み合わせも「カウンターイメージ」ということで(森島が2列目に入ったという意味です)、攻撃の「組み立て」はうまくいきません。最初の時間帯は、まさに一発勝負のタテパスや、無理な状況での一発ドリブルチャレンジばかり。もちろんサポートは遅れ気味ですから、前線が「孤立」し、実効ある攻めを構築できないのです。

 それでも、前半も20分を過ぎたあたりから、後方サポートも充実するようになっていきます。それは、何といっても、守備ブロックが「安定」していたからに他なりません。やはりサッカーの基本は「守備」。それが安定しているからこそ、心理的な余裕が生まれ、攻撃にも「活力」が出てくるものなんですよ。要は、効果的なタテのポジションチェンジがうまく機能しはじめるということ、そして、「次の守備に対する確信」が強化されることで、前のスペースへの飛び出しにも、後ろ髪を引かれない勢いが出てくるということです。

 そんな「試合中に発展を魅せた日本代表の攻撃」ですが、そこでも、稲本が目立ちに目立っていました。前が空いたら、迷わずドリブル勝負を仕掛けます。もちろん「決定的ゾーン」ではなく、中盤の高い位置でのドリブル突破チャレンジ。それが、殊の外うまく機能し、レアル中盤のバランスを崩していくというシーンがありました。そして、稲本と戸田を中心にした組み立てパスや、クサビのタテパス、はたまた中盤でのコンビネーションプレーなども、どんどんと効果的なものへと発展していったのです。

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 とにかく、この試合でのキーポイントは、何といっても、稲本と戸田の守備的ハーフコンビだったとするのが正しい評価のように思います。

 彼らの、中盤での効果的なディフェンスがあったからこそ、最終守備ラインのラインコントロールもうまく機能し、最終勝負のシーンでも、確実な「読み」ができた・・。

 チョン、チョンとボールを動かし、そして最後の瞬間に「逆サイドへの決定的なクロスパス」を出す・・。レアルが演出しようとする、そんな「前段階」での仕掛けのボールの動きにしても、稲本と戸田を中心にした効果的なプレッシャーによって、かなり「制限」されていました。そして中盤守備による「抑え」が効いているからこそ、最終ラインも、「余裕」をもって、レアルの最終勝負に対処できたというわけです。

 ボールがないところでの「最終勝負の競り合い」に入る頻度が一番高い、中田浩二や松田が、最後の「球出し」に対する読みをピタリと当て、走り込む(決定的フリーランニングを敢行する)相手よりも先に(その相手の鼻先で)ボールをカットしたりクリアしてしまったシーンを何度目撃したことか。

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 前半26分に奪われた、この試合唯一のゴールですが、こちらには、明らかなオフサイドに見えたんですが・・。まあ、アウェーだから仕方ないか・・。

 シュートチャンスの数では、たしかにレアルの方がかなり上でした。それでも、諦めたり、消極的になったりせず(ここでの消極性は、一瞬、様子見になってしまうプレー姿勢のことだとご理解ください)、チャンスを見計らって「厚い攻め」を繰り出していく日本代表。本当に頼もしく思ったものです。

 最初に書いた「感動的な闘う姿勢」ですが、たしかに状況が状況だったから「後半の内容」の方が目立っていました。それでも、この闘う姿勢については、前半も同様に優れたものだったとするのが妥当です。

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 全体的には、相手のチカラが上だったし、振り回される場面もあったことで、フラストレーションはたまり気味ではありました。それでも、(上に書いたとおり)外されても、チンチンに回されても、気後れすることなく、粘り強く、そして全力で「次の守備」に回り(戻り)つづけて効果的な「組織守備」を魅せ、そして何度失敗しても、様子見にならずに(チャンスを狙って)前へ進みつづけた日本代表の選手たち。

 この試合は、彼らにとって、大きな自信ベースになったに違いありません。

 
 さて次は、チームとしてのまとまりがある強豪のノルウェー。ベストメンバーを組んで試合に臨んでくるとのこと。日本代表も、中田ヒデと小野が、発展をつづける「闘う集団」に戻ってくる・・。ものすごく楽しみです。
 
 またまた、ランダム執筆で、ちょっと「まとまり」がありませんが(繰り返しも多い!?)、ご勘弁を・・。



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