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久しぶりの「J2」第30節・・こんな立派なゲームができる山形が「ビリ二位」ですか・・川崎フロンターレvsモンテディオ山形(0-0)・・(2002年9月11日、水曜日)

本当に久しぶりに「J2」を観戦しました。川崎フロンターレ(現在4位)対モンテディオ山形(同11位)。

 「今シーズンに昇格する自信はありますよ。ホームゲームでの勝率は、全チームトップですし、W杯後では、7勝1分けと無敗なんですよ。また何といっても、ゲーム内容にも自信があります」。川崎フロンターレ広報担当の「熊谷直人」さんが、端正な顔に笑みを浮かべて余裕のコメントをしてくれました。

 中盤には、元アントラーズの鬼木、元エスパルスの長橋、元ヴィッセル神戸の茂原など「忠実なダイナミズム」を秘めた優秀な日本人選手を揃え(この試合では、優秀なミッドフィールダー塩川が出場停止ですけれど・・)、その前に、破壊力抜群のブラジルトリオ(アレックス、マーロン、ベンチーニョ)を配置します。まあ基本的には、二部で勝ち抜くための「前後分断」の割り切り(現実的な)チーム戦術ということでしょうか・・。

 対する山形。私は一年以上前に、柱谷幸一監督が就任した当時の彼らを何度か見たことがあります。「コンセプト(やりたいサッカー)が明確で、忠実なダイナミックサッカーをやっている・・」という印象でした。当時は、成績も付いてきていました。でも今シーズンは・・。

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 さてゲーム。

 全体的な流れだけではなく、決定的なチャンスメイクでも山形が上回っている・・という展開でゲームが立ち上がります。

 それにしても、山形の最初のチャンスは見事でした。中盤でのタメから、爆発ダッシュで抜け出した酒井(だと思ったんですが)への、ピッタリカンカンのスルーパスが決まったんですよ。でもまったくのフリーシュートだったにもかかわらず、ボールはGKの正面に飛んでしまって・・。

 その瞬間、「そこだよ・・。J2で勝ち進むためには、そんなワンチャンスを確実に決めなければいけないんだよ・・」なんていう呟きが出ていました。彼らの場合は、チャンスメイクまでで「イメージ」が完結してましっている!? 相手ゴールに飛び込んでいくボールまで、明確にイメージできていなければならないのに・・。

 要は、フィニッシュまでの明確なピクチャーを持つことがいかに大事かということです。それさえ脳裏に描かれていれば、決定的なチャンスを作り出したって、「それはまだプロセスにしか過ぎないぞ!」という言葉が、自然と浮なんでくるものなんですよ。だから、最後のシュートの瞬間に、最高の集中状態を演出できるというわけです。そんな「イメージ(ピクチャー)トレーニング」こそ、最重要テーマ。

 ちょっと「舌っ足らずの表現」ですが、このことは、決定的に重要なポイントなのです。だからこそ監督は、心を鬼にし、強烈な刺激を与えながら、最終フィニッシュまでの明確なイメージを選手たちのアタマに叩き込む作業に没頭するというわけです。

 でも山形の選手たちが描くピクチャーは中途半端。「4-4-2」のフォーメーションからの忠実な中盤ディフェンスをベースに攻め上がりはしますが、ボールの動きが緩慢なこともあって(フロンターレの守備ブロックを振り回せないから)決定的チャンスメイクまで行き着くことがままならない。

 何といっても、ボールホルダーと、「二人目」、そして決定的なスポットに入り込むべき「三人目」のイメージが、ほとんど「シンクロ(同期)」していないんですから・・。決定的なフリーランニングにしても、ミエミエのタイミングばかり。ボールがないところでのプレーに、決定的なスルーパスを「呼び込む」という発想そのものが感じられません。

 ボールホルダーの「ルックアップ能力」、パスを受ける方(ファウンデーション選手とフィニッシュ選手!)の、このスポットだ!という明確なイメージを基盤にしたフリーランニング等、様々な「ファクター」で、やはり「J1」とは差がある・・と感じます。

 そんな山形に対し、「現実的なチーム戦術」のフロンターレ。頻度は高くありませんが、明確な「フィニッシュイメージ」を持つブラジルトリオが、効果的なパス交換や、日本人ディフェンダーのイメージを超越したフリーランニングスタート(パスと動きとの有機的な連鎖)等を基盤に、危険なシュートシーンを演出します。そのほとんどは、彼らが最初からイメージしている、フリーの中距離シュート。まあ、20-30メートルのシュートを決めた「経験の数」では、日本人は及ばないでしょう。その意味で、彼ら三人の「価値」はものすごく大きいということです。ベンチーニョが、何本も、正確なシュートを放ちます。

 しっかりと守備ブロックを固め、攻撃はブラジルトリオに任せる・・。「結果につながる実効レベル」では、確実にフロンターレの方が上だということです。

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 こんな「ゲーム展開コンテンツ」だから、押し上げてチャンスを作り出すものの(前述のフリーシュートだけではなく、その後も、基本的には単独ドリブル勝負で何度もポストやバーに当たる等、惜しいシュートを放つ山形)、結局は決め切れない山形に対し、「ブラジルの一発」が飛び出すことで、フロンターレが「現実的な勝利」をもぎ取るものとばかり思っていた湯浅だったのですが、そんなイージーな予想に反し、最後までモンテディオ山形の集中の途切れることはありませんでした。それどころか、堅く粘り強い守備ブロックを基盤に、押し込まれながらも、カウンターから、二度も決定的なシュートを放つ場面まで演出してしまいます。

 あっと・・試合の最後の20分間は、完全にフロンターレのペースになってしまったんですよ。川崎フロンターレは、90分全体に対して、次のような展開イメージを持ってゲームに臨んでいたに違いありません。「山形は、前半は頑張るけれど、後半は必ずバテてくる・・そうすれば、前線や中盤のマークも甘くなるから、ワンチャンスを狙って、ブラジル式ワンツーや、ココゾのスルーパス(日本人選手のイメージを超越したタイミングの決定的フリーランニングとのコンビネーション!)で守備ブロックのウラを突ける・・」。

 でも、山形守備ブロックの集中力は、最後まで、「大きく」落ち込むことはありませんでした。

 それにしても、これだけのゲームができる山形が「ビリ2位」というのは解せない・・。それだけ「J2の闘い」が熾烈だということなんでしょうネ。

 この試合では、なかなか面白い視点でのイメージトレーニングができました。ゲームの見方さえ最初にイメージしておけば、試合自体も、ものすごく楽しめますよ・・ホントに。これからも、機会を見つけて「J2」の試合に足を運ぼうと思った(大きくモティベートされた)湯浅でした。

 次は金曜日。稲本が所属する「フラム(フルアム!? フルハム!?・・イングリッシュ・イングリッシュの発音では、やはり『フラム』が妥当かな・・)」の試合をビデオで観て簡単にレポートする予定です。ではまた・・




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