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「3-3」に終わった日本vsホンジュラス(その2)・・ちょっと守備ブロックのプレーを検証しておきましょう・・(2002年5月3日、金曜日)

やっと東京へ帰り着きました。昨夜は、久しぶりにゆっくりと寝られたので、元気も回復。さて、ビデオをベースに、日本代表の守備ブロックが展開したディフェンスを、自分自身のデータベースとして、「前半」に限って検証しておくことにします。後半のホンジュラスは、コンディション的に、前半のようなダイナミック守備を展開できませんでしたからネ。

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 日本代表の最終ラインが、最初に「ウラ」を突かれたのは、ゲーム開始早々の3分。

 それは、ホンジュラスの右サイドバックにパスが回り、そこへ「安易」に当たりにいった中村俊輔が「簡単」に外されて置き去りにされてしまったところからはじまります。そして中村を抜き去った右サイドバックが、戻ってきた右ハーフへタテパスを出します。この状況で、この右サイドバックは、そのままオーバーラップ。その動きに、フラットスリーの中田浩二と宮本が引きつけられます。

 そして、パスを受けたホンジュラスの右ハーフが、振り向きざまに、ものすごく素早いタイミングで「スルーパス」を通してしまったというわけです。

 決定的スペースへ走り込んだのは、ホンジュラスのトップ。それは、ラインを上げた状態で「右サイドに引き寄せられた」中田浩二と宮本のポジションと、中央ゾーンまで寄っていた松田のポジションが、微妙に「縦方向にズレ」ていたからです(松田のポジションが下がっていた!)。

 フラットラインの生命線は、三人が、「オレたちがオフサイドラインだ!」と確信をもてること。この時点で、「前後にデコボコ」になっていた日本代表のフラットライン。その「ラインが縦にズレたことで出来たスペース」を突かれてスルーパスを通された(ベストタイミングのフリーランニングを仕掛けられた!)というわけです。フムフム・・

 でも、あの状況で、もし松田が、中田浩二と宮本の「ライン上」に残っていたら、スルーパスが出たタイミングと、ホンジュラスのトップ選手の「抜け出しタイミング」がものすごく素早く、ピッタリだったから、確実に「完璧なウラ取り」になっていたに違いありません。だから、松田の「ブレイク(=マンマークへの移行!)」は正しい選択でした。あのシーンでは、ホンジュラス選手たちの「最終の仕掛けイメージ・シンクロ」を誉めなければ・・。いや、というよりも、ホンジュラスは、日本代表のフラットライン戦術を、本当によく研究していたということです。

 最前線からズバッと戻ってきた選手へタテパスが通る・・、そこで「最終勝負の起点」を作り出されて、そこから、ものすごく素早いタイミングのスルーパスを決められてしまう・・。この「前半3分」のシーンでは、最初にタテパスを受けた右ハーフと、トップ選手のイメージは、明確に、本当に明確にシンクロ(同期)していました。そんなホンジュラスの攻撃が、最終ラインの判断(読み)に対する「余裕」を微妙に乱していった・・ということなのかもしれません。

 結局、波戸の忠実守備があったことで事なきを得ましたが、日本代表フラットスリーの三人は、「あっ・・ヤツらは、かなりオレたちのフラットラインのことを研究している・・」と感じたに違いありません。だからこそ、そこからの「最終勝負のラインコントロール」の切れ味が鈍くなった・・と感じた湯浅だったのです。

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 次の9分。ホンジュラスが、フリーキックから軽く横パスをつなぎ、次の瞬間、トップ選手へ向け、ダイレクトで、最前線へ向けて一発ロングパスを送り込みます。普通だったらオフサイドか、日本の最終ラインが最初にボールに追いつく状況。でもここでは、松田が「残って」しまったことで(中田浩二と宮本は、高い位置でラインをキープしていたから、彼らは、「よし、コイツはオフサイドだ!」と確信していたに違いない!)、そのトップ選手が、オフサイドにならずにタテパスをコントロールしてしまったんですよ。すぐに、中田浩二と宮本が戻ったことで事なきを得ましたが・・。

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 コーナーキックからの先制ゴールのシーン(14分)。

 コーナーキックへの対処でも、「ゾーンからマンマークへの素早い移行」をベースにする日本代表。このシーンでは、後方から走り込んでヘディングシュートを決めた「ピネラ」が、最後はまったくフリーになってしまいます。ピネラを「最後につかまえなければ」ならなかったのは宮本。彼は、最後の瞬間の「直前」には、ピネラの「ニアへの走り込み」を関知していたはずです。それでも、反応が「ほんの0.1秒」遅れてしまった・・。

 このシーンでは、宮本は「学習」したに違いありません。「ほんの0.1秒」が持つ意味の重さを・・。

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 さてホンジュラス二点目のシーン。これはもう、ボールを奪い返したホンジュラスの完全な「汚いファール」。ビデオでもはっきりと、切り換えした福西のユニフォームが引っ張られているのが確認できました。昨日のスタジアム観戦でも、ボールをキープする福西の「不自然な転倒」に、エッ? 相手に引っ張られたんだろう!?なんて感じていましたが、結局はノーホイッスルで、そのままプレー続行。

 ボールをキープする福西からの、余裕をもった「展開状況」だったから(味方が押し上げる状況だったから!)、もうどうしようもない。そして、フラットライン組織が完全に崩れた状態での「三対三」に陥ってしまいます。そして、右サイドにいる、まったくフリーな選手へタテパスが出されます。この時点で、ヘディングシュートを決めた「パボン」が、一度「ニアポストへダッシュする素振り」から、すぐに、逆のファーサイドスペースへ開くことで、完全にフリーになってしまいます。

 この「フェイク動作」によって、ニアポストスペースへ「引きつけられた」宮本。その後は完全にボールだけに集中してしまいます。戻った松田は、宮本がパボンを「見ているはずだ!」と、迷わずに、ニアポストゾーンでフリーになっている「もう一人」のホンジュラス選手のマークに急行します。でも結局は・・。

 そして、案の定の「山越えセンタリング」を、ドカン!!と決められてしまったというわけです。

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 まあ、その後の「松田の目測ミス」から奪われたホンジュラスの三点目についてはコメントはなしにしましょう。

 全体的に(前半だけ!)日本の最終ラインは、ホンジュラスのボールホルダーが、「ライン直前のスペース」にうまく入り込んでくるシーンが多かったことで、また周りのホンジュラス選手たちが、日本代表の「フラットライン守備戦術」をしっかりと意識していたために、ラインコントロールと「ブレイクポイント」とのメリハリが、ちょいと不安定になったと感じます(フラットライン守備システムについては、以前に書いた「フラットライン守備システムを語り合いましょう」を参照してください!)。

 ホンジュラスのボールホルダーが、ライン直前のスペースにうまく入り込んでくる・・。その要因は、なんといっても、ホンジュラスの「ゲーム戦術」にありました。

 昨日も書いたとおり、彼らは、最初から「ココゾ! のカウンターだけ」を狙っていたのです。中盤の高い位置から最終ラインにかけて、全員が、本当に一人の例外もなく、忠実な組織ディフェンスをベースに、ボールを奪い返した「次の瞬間」を、まさに猛禽類の眼で狙いつづけていたのです。

 日本代表が、中盤の底から「仕掛けのタテパス」を出す・・、でもそのパスの「タイミング」が遅れ気味だったために、ホンジュラスの中盤守備ブロックに「読まれ」、鈴木や西沢、はたまた森島などの「パスレシーバー」に対する集中プレスが掛けられてしまう・・、そしてボールを奪い返したホンジュラスの選手たちが、ものすごく素早いタイミングでタテパスを通してしまう・・、もちろんそれに合わせ、必ず一人は後方から飛び出していくことで、そこからのコンビプレーも冴えわたる・・といった具合です。タテパスが送られるのは、中央ゾーンやサイドゾーンなど変化に富んでいます。

 そんな、守備からカウンターへと流れるようにつづいていく「一連のプレー」が、ホンジュラス選手たちのアタマのなかに明確にイメージされていたということです。

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 この試合は、「カウンターを明確にイメージする相手との勝負」という意味で、もっといえば、相手のカウンターをイメージした「バランスプレー」と、危急状況での「脇目もふらない全力の戻り(カウンターに対処するための、最終ラインをサポートするミッドフィールダーの全力ディフェンスアクション!)」に対する意識の高揚という意味で、貴重な学習機会になったと思います。そう、「あの」ベルギーをイメージして・・。もちろんベルギーの場合は、「より」パスが強調されるカウンターになりますがネ・・。

 中盤での、ボールホルダーに対する「クリエイティブなプレッシャー」のみが、最終フラットスリーの「次の勝負所に対する読み」を可能にします。とにかく日本代表の守備ブロックは、「ラインコントロール」と「ブレイク」に対する「感性」を、ミッドフィールドとの「連携(=これが生命線!)」も含めて、限界まで研ぎ澄ましておかなければならないのです。

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 さて明日からヨーロッパ遠征。まず、ブンデスリーガの最終日からレポートすることにしましょうかネ(状況は「海外コーナー」を参照してください!)。では・・




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