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やられっぱなしだった前半・・生き返った後半・・日本代表vsホンジュラス代表(3-3)・・(2002年5月2日、木曜日)

ちょっとアップが遅れ気味。どうも慣れない場所は時間が掛かってしまって・・。それに東京中日新聞の原稿もありましたから・・。

 周りのメディアの方々から、「今日もオートバイですか?」なんて声が掛かってしまって・・。そんなわきゃ、ネ〜〜だろ!! 東京から600キロ近くも離れているんだから・・。

 あっと・・失礼。それでは、まず試合の全体的な印象から入りましょう。

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 相手のホンジュラスは、しっかりと守って鋭いカウンターを仕掛けるという戦い方に徹していました。カウンターの鬼! とにかく中盤からの守備ブロックが、忠実でクリエイティブな大パワーディフェンスを展開することで、日本代表の攻めを「途中」でカットし、素早く日本ゴールへ!というイメージでプレーしつづけたのです。彼らには、そんな戦い方ができるだけの「才能」が揃っていますからネ。カウンターは、基本的には「才能ベース」なんですよ。

 逆に日本は、相手が「下がり気味」にプレーしていることで、不用意に、前へ重心が掛かりすぎてしまって・・。そんな相手の意図は、特に稲本、福西が感じていなければならないこと。最初の15分間くらいは、一人が前へ行けば、もう一人は残るという「前後のバランス」がうまく機能してはいましたが、それでも、味方が攻めあぐんでいたことで、だんだんと、彼らも前へ重心がかかり過ぎていったというわけです。

 ホンジュラスが展開する、厳しい中盤ディフェンス。日本代表は、ほとんどといっていいくらい「二列目の起点」を作り出すことができません。多くのケースで、その前の段階で、攻撃の芽を潰されてしまうんですよ。そして、ものすごく鋭いカウンターを食らってしまう・・。

 森島にしても、中盤での起点プレーがままなりません。まあ彼の場合は、二列目からの飛び出しを意識しているわけですから、もっと鈴木や西沢が「上下」に激しく動いて「起点」にならなければ・・なんて思っていたんですが、それでも、中盤の底からの「球出し」は遅いし、周りの足も止まり気味だから、どうしても、日本得意の「トン、トン、ト〜ン」という軽快なボールの動きを演出できません。そして、ボールの動きが鈍重になったところを、「正確な読み」をベースにするホンジュラス中盤ブロックに潰されて(読みベースの集中プレスは見応え十分!)、カウンターを食らってしまう・・。

 とにかくホンジュラスのカウンターの鋭いこと。彼らは、自分たちの戦術に対する絶対的な自信があるようです。もちろん、そんなカウンターを、高い確率で成就させてしまう才能を有しているということも含めてネ。

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 そんなホンジュラスに対して、最終勝負の「キッカケ」さえ掴めない日本代表。前半38分のことです、最前線の鈴木が、ズバッと戻り、中村からのタテパスを受けます。それでも、サポートが遅いことで「トン、トン」とパスを回すことができずにキープ。そこに二人、三人と、ホンジュラス選手が集中してしまうんです。それが、前半での典型的な展開だったということです。

 ホンジュラスのゴールですが、コーナーキックからの先制ゴールは、もう見事の一言。ニアポストゾーンへ、あれだけの勢いでダッシュされ、そこにピタリとパスを合わせられてはかなわない。ヘディングされたボールも、見事に、楢崎の「逆モーション」へ飛んでいきました。

 その後、中村俊輔が「幸運なフリーキック(あれは完全に相手GKのミス!)」で同点ゴールを奪います。でも、その一分後には、本当に見事なカウンターから、勝ち越しゴールをたたき込まれてしまうんですよ。中盤の高い位置でボールを奪われ、それをフリーの右サイドに回されます。そこから、ちょっと「タメ」られ(日本の最終ラインが、そのサイドへ引き寄せられた!)、ファーサイドスペースへの「見事なピンポイントクロス」を決められたというわけです。

 三点目も同じようなカタチで、右サイドからセンタリングを上げられたのですが、今度は、松田が「ミス」を犯してしまいます。どういうふうにボールが抜けていったのか定かではありませんが(目測を誤った松田のアタマを越えてしまった!?)、とにかくその抜けたボールを、ズバッ!と決められたというわけです。良いプレーを展開していた楢崎も、あれではノーチャンスです。

 あっと、ホンジュラスの三点目が決まる前の39分には、またまた中村が、コーナーキックから直接ゴールを決めました。でも、これまた相手GKの稚拙なミスではありました(後半は、ホンジュラスの第一キーパーが登場してきました)。

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 さて後半ですが、そんな「相手のツボにはめられた」消化不良のゲーム内容が、ガラッと様相を変えます。中村俊輔が二列目に入り、両サイドを、市川とアレックスが固めたことで、抜群のダイナミックサッカーに変身したのです。そしてホンジュラスを席巻する。

 来日間もないということで、ホンジュラスはコンディション的に厳しかったのでしょう。前半のように、効果的なカウンターを仕掛けられるような「高いゾーン」でのボール奪取がままならなくなっていました。やはり「実効ある守備」は、ボールのないところでの忠実マークや、次のアタックをサポートするチェイシングなど、多くの「汗かきプレー」によって支えられているということです。

 ホンジュラスを押し込みつづける日本代表。中村俊輔も、やっと、マリノスで魅せつづけていた、攻守にわたるダイナミックプレーを披露しましたよ。

 前半の彼は、とまどいばかりが目立っていましたからね。なんといっても相手は、カウンターの鬼。前半20分には、相手に翻弄されてまくって右サイドを崩されてしまいましたしネ(そのまま決定的なラストセンタリング・・フリーシュートまでいかれるが、最後は宮本がギリギリで抑える!)。でも二列目に入った後半は、水を得た魚のような活動性を魅せました。

 特に守備。「チェイシング&アタック」では、稲本よりもダイナミックだった!? 

 また攻撃でも、そこそこの存在感を示していました。とはいっても、「まだ」攻撃での、ギリギリのリスクチャレンジには消極的。相手を翻弄してしまうようなレベルの「タメ」やドリブルなどは、あまりみられません。まあ、ホンジュラスのディフェンダーは、一対一では、ものすごく強いですからネ。

 そんな日本代表が魅せた大パワー攻撃ですが、そのハイライトは、後半16分のプレーでした。稲本が魅せた、クリエイティブなボール奪取から中村へパスがわたります。そこからの中村の「タメ・ドリブル」が秀逸でした。そして、鈴木へのスルーパスが決まったという一連のプレー。たしかに鈴木のフリーシュートはミスキックになって、ゴール右へ外れてしまいましたが、とにかく、久しぶりにスカッとする「攻撃フロー」ではありました。

 その後は、久保も登場し、またまた特異な存在感を示してはくれました。でも、後半39分のチャンスは決めなければ・・。左のアレックスが突破し、正確なセンタリングを上げたんですよ。そして久保のフリーヘッド。でも大きくバーを越えてしまって・・。タイミングが微妙にズレたんでしょうけれど、これは決めなければならないチャンスでした。

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 ちょいと疲れ気味で、目の奥も痛んできました。ということで、今回も、最後は「稲本」で締めることにします。

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 「行けよ! 稲本!!」。そんな声が口をついて出てしまって・・。彼に対して、何か「プレーイメージの構造的不満」とまでいえるモノがつのっていたんですよ。

 協力プレスを掛けられるタイミングなのに、味方のサポートに寄っていかずに様子見になってしまう・・、追い越された相手(ボールなし)を簡単に行かせるだけではなく、その後の展開を目で追うだけになってしまう・・、また攻撃では、(特に前半!)前へ行きすぎることで、中盤の守備バランスが崩れ気味になってしまう・・。このことについては、前回の(スロバキア戦の)コラムでも書きましたが、要は、アーセナルで、前へ「押し出され過ぎている」という傾向が読みとれるということです。

 前半最初の時間帯は、(前述したように)福西とのコンビが、かなりバランス良く「上下」していたんですが、前半も15分を過ぎたあたりから、どうも稲本が、状況をわきまえずに「行きすぎ」だと感じるシーンが続出していました。ホンジュラスの「カウンター狙い戦術」を、まず真っ先に感じ、対処しなければならない稲本なのに・・。

 それでも・・、本当にそれでも、彼のプレー内容を総合して見た場合、調子が上がっていることだけは確かな事実だと思う湯浅なのです。相手ボールホルダーに対する、これぞクリエイティブディフェンス!というアタック。何度、ファールにならない見事な「ボール奪取」を魅せたことか(美しいアタック!)。

 また攻撃でも、(まあ、後半になって彼のプレーが好転したということですが・・)素早い展開の起点になっていましたし(何度も、クサビのタテパスを決めていました)、状況的にもタイミング良く、最前線まで押し上げていくシーンを何度も目撃しました(もちろんその後の、全力での戻りも含めて・・)。

 まあ、彼ほどの選手ですから、これからの一ヶ月で、昔のような「実効ある」ダイナミックプレーを魅せるようになるにちがいない・・。もちろん、アーセナルで培った「プラス・アルファー」を上乗せしたパフォーマンスをネ・・。

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 最終ラインや鈴木、西沢に関するコメントを割愛するなど、ちょっと中途半端に感じますが、どうも今日は限界かも・・。明日は、ランチタイム過ぎに東京へ戻り、次の日の欧州遠征の準備です。ビデオを見て気付いたことがあったら、またレポートしますので・・。

 もしアップしていなかったら、次は、例によって「ヨーロッパ便り」ということになります。では今日はこのあたりで・・




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