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チャンピオンズリーグ準々決勝第二戦・・またまた、これぞサッカー!・・レアル・マドリー対バイエルン・ミュンヘン(2-0、二ゲーム合計でレアルが準決勝進出!)・・(2002年4月11日、木曜日)

すごい! これぞ世界最高の「闘い」・・。

 もちろん私は、情緒的にはバイエルンを応援していましたから、少しは落胆しています。それでも、現在、誰もが認める世界最高のチーム、レアルも「サッカー的」に支持していますから・・。

 今シーズンがはじまった当初は、ジダンという天才が加入してきたことでギクシャクしていたレアル。デル・ボスケ監督の手腕もあって、2-3週間で「インテグレーション(様々な意味を包含する融合!)プロセス」が進行していまいます。私は、その経過を追いかけていましたし、「傭兵」がマジョリティーのバイエルンに対しても、彼らが「ドイツ的なサッカーマインド(戦術的発想)」を踏襲していくプロセスも興味深く観察していました。だから様々な視点で、両チームに対して入れ込んでいた湯浅だったんですよ。だから、結果に対しては、ちょっと錯綜した心境。

 それでも、実力・・というか、総合力では、フィーゴが復帰し、ソラーリが大幅にパフォーマンスアップしたレアルに、明らかに軍配が上がります。美しく、強いサッカーを体現するレアル。世界のサッカーにとって、彼らが勝つことは、大きな価値だと確信する湯浅なのです。

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 このゲームには、本当にたくさんの「テーマ」が凝縮されていました。バイエルンのゲーム戦術・・フィーゴが戻ってきたレアルが魅せつづけた本来のファンタスティックオフェンス・・詰め込まれた、攻守にわたる「五秒間のドラマ」・・神様のドラマ・・等々。

 それらをすべて網羅することなんて出来ませんから、ここでは、そこからいくつかのポイントをピックアップします。まず、バイエルンの「守備」から。それも、最終勝負シーンでの忠実ディフェンス。

 例えば、レアルの右サイド、サルガドが、フィーゴ、ラウールを追い越して決定的スペースへ飛び出し、そこへ、「タメ」ていたフィーゴからベストタイミングのスルーパスが出るというシーン。そこで、一瞬の「判断」で全力マーキングをつづけ、最後はしっかりとクリアしてしまうハーグリーブス。例えば、左サイドで「起点」をつくり、最後は、ロベルト・カルロスが、フリーでピンポイントセンタリングを送り込むというシーン。そこで、斜めに走り込んでくるラウールが、ニアポストの「猫の額スペース」でボールに触る直前にアタックしてコーナーに逃げるリンケ。例えば、ジダンが、決定的なドリブルに入ったシーン。そこで、後方から全力で戻って追いつき、最後はジダンとの「フィフティー・フィフティー」の競り合いに持ち込んでボールを奪い返してしまったエッフェンベルク。等々・・。

 それは、それは、エキサイティングなシーンが続出しました。

 普通だったら、完全に「行けて」しまう状況でも、どうしても、最後の瞬間にアタックされてしまう・・。レアルの選手たちも、「行った!」と確信しているから、最後は、「アレッ!」なんていう表情を浮かべてしまって・・。その表情からは、バイエルンの「読みと粘りディフェンス」に対するフラストレーションが読みとれます。

 以前のシーズンでは、そのフラストレーションが蓄積したことで、徐々に足が止まり、心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでいたレアル。それが、この試合では、最後の最後まで、前向きな姿勢に変化がなかったと感じます。彼らも学習した!? とにかく、素晴らしい「ボールのないところでの、ギリギリのせめぎ合い」ではありました。

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 試合は、もちろんレアルベース。

 たしかに、前述したように、バイエルンの、忠実で強力、そしてクリエイティブなディフェンスが目立ってはいたのですが、それでもレアルは、何度か、決定的を作り出してしまいます。本当にため息しきり。

 前半では、コーナーキックからのこぼれ球をひろったソラーリが、二人に囲まれながらもボールをキープし、そして最後に送り込んだ「ラスト・トラバースパス」がラウールに合うも、最後はシュートミス・・、右サイドで「タメ」るフィーゴからの「トラバース・パス」に、オフサイドギリギリのタイミングで飛び出したモリエンテスが合わせるも、バウンドを読み切れず、ボールに触ることができない・・、ジダンの「タメ」から、ベストタイミングで飛び出したラウールへ「ラストパス」が通るも、最後のシュートを、リンケがヘッドでクリアする・・。

 後半でも、ソラーリのフリーシュート(バイエルンGKカーンの正面に飛んでしまう!)や、ジダンのカーブシュート(惜しくもバーを直撃!)なんていうのもありました。そして後半の24分、やっと、本当にやっと、レアルが先制ゴールを奪ったのです。

 コーナーキックから戻されたボールを、ジダンが中距離シュートを放ちます。それが弱く、伸ばしたソラーリの足に当たって、まったくフリーのロベカルの眼前スペースへ転がっていったんですよ。そしてロベカルが、落ち着き払って、バイエルンゴール前へ「ラスト・トラバースパス」を通したという次第。決めたのは、コーナーキックということで上がっていたエルゲラ。この試合、彼は、イエロと組み、センターバックに入っていました。

 さて、こうなったらバイエルンは攻めるしかありません。ただ、それに勢いが注入されない。逆に、この一点でリラックスしたレアルのプレーに、どんどんと「彼ら本来のクリエイティビティー(創造性)」が加味されていきます。やはりレアルは、世界最高のチームだ・・なんて感じていました。

 それでもバイエルンも粘ります。一度などは、相手を背にしたエウベルが、粘りに粘って抜け出し、ギリギリのタイミングでシュートを打ってしまいます(倒れ込みながらの、強いアウトサイドキック!)。でもそこには、レアルGK、セザールがしっかりと「詰めて」いました。身体に当てて(手だったかな!?)クリアするセザール。それは、スタジアム全体が「息をのんだ」瞬間だったに違いありません。

 そして押し上げるバイエルンのウラを突いて、レアルが追加ゴールを挙げます。後半40分。左から持ち込んだラウール。マークするリンケを、振り切り、最後は、グティーへのラストパスを決めたのです。

 このシーンですが、最初にボールをコントロールしたラウールが、背後でマークするリンケを「手探り」で感じようとした瞬間に、その腕(ヒジ)が、リンケの顔面をヒットしてしまいます。顔をおさえて倒れ込んでしまうリンケ。まあ、そんな「偶発的な出来事(!?)」は日常茶飯事なんですが、テレビ映像に鮮明に映し出されたそのシーンは、あまり気持ちのよいものではありませんでした。そしてリンケが倒れてしまったために、ラウールは、完全にフリーで持ち込むことができたというわけです。

 とにかくこの試合は、両チームにとっての、ギリギリの「心理戦」でもありました。気持ちで「弱いところ」が出た方が負ける・・。エッフェンベルクなどは、試合前に、スペインのメディアに対して挑発的な発言をくり返していたといいますしネ。私も、そんな雰囲気は、何度も体感しています(友人との関係で、現場でもネ・・)。それが世界の舞台だということです。

 世界の強者たちが繰り広げた、極限の意志と最高の戦術がぶつかり合ったギリギリの闘い。こんなゲームは、めったにない・・。

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 同日に行われたもう一試合。マンチェスター・ユナイテッド対デポルティーボ・ラ・コルーニャ戦は、「3-2」で、マンチェスターが連勝し、準決勝にコマを進めました。

 これで、準決勝(4月23/24日・・4月30日と5月1日)の組み合わせは、バルセロナ対レアル、マンチェスター対レーバークーゼンということになりました。

 次のヨーロッパ出張に見られる・・!! さてこれからは、じっくりと「内容」を楽しむことにしましょう。では・・




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