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さて「CL」・・まずバイエルン・ミュンヘン対レアル・マドリー戦(2-1)での、ドラマチックな逆転劇から・・(2002年4月3日、水曜日)

このまま終わってしまう「流れ」だな・・なんて思っていました。左サイドを駆け上がったリザラスのセンタリングから飛び出した、エウベルの決定的なヘディングシュートがバーに当たってしまう・・、エッフェンベルクのPKが、相手GK、セザールに弾かれてしまう・・、またまたエウベルの決定的なシュートがGKの正面に飛んでしまう・・。

 前半11分、ジェレミの中距離シュートが決まり、1-0とレアルがリードした状態で後半へ。そして、もう「行く」しかないバイエルンがどんどん押し込んでチャンスを作り続けたのに、同点ゴールを奪えない。それは、「今日は回らない・・」という、独特のサッカー表現がピタリと当てはまる展開だったのです。そして私は、「まあ、このままの流れで終わってしまうだろうな・・」なんてね。

 ところが、ところがです。起きてしまったんですよ、ドラマが。

 どんどんとシンプルに、そして直線的に攻めつづけるバイエルンが、終了8分前に同点ゴールを決め、そしてその6分後には勝ち越しゴールまで挙げてしまったのです。同点ゴールは、エウベルからのアシストを、エッフェンベルクがクールに決め、勝ち越しゴールは、これまたエウベルのベストアシストから、交代出場したピサーロが正確に決めました。両ゴールともに、これぞ「最終勝負シーンでのポストプレー」という、エウベルによる見事なプレーが目映いばかりの光を放ってしまって・・。

 まず同点ゴールのシーン。そこでエウベルは、相手を背にした状態でボールを受け、そのすぐ横で、スッとタテに動いたエッフェンベルクを明確にイメージした「置くような」アシストを出します。エッフェンベルクの、狙いすましたサイドキックシュートも見事だったのですが、とにかく、エッフェンベルクの「モーション」を完璧にイメージした「ソフトなラストパス」は感動モノでしたよ。

 勝ち越しゴールのシーンでは、バイエルン最終守備ラインから放たれたロングボールを競り合う、レアル守備ラインのイエロとバイエルンのピサーロを「追い越す」エウベルの動きが決定的に重要な意味を持っていました。そのロングパスが出された瞬間、エウベルは、ピサーロと視線を交換したに違いありません。そして確信した・・「ヤツは、オレの動きをイメージしている!」。そして案の定、ピサーロは、決定的スペースへ抜け出したエウベルの動きを明確に意識した「バックヘッド」で、ピタリとヘディングパスを合わせたのです。そして最後は、エウベルからのヘディングでのバックパスが、ピタリと、ピサーロの足に合わされたというわけです。もちろんピサーロは、バックヘッドで、エウベルにパスを送ったあとは、そこからのリターンパスを受けるために瞬間的に動いていたのです。それに対し、ピサーロとヘディングを競ったイエロは、ボールウォッチャーになってしまう・・。いや、エウベルとピサーロによる、見事な(イメージ)コンビネーションではありました。

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 この試合の前半は、両チームともに、例によっての「トーナメント戦術」で立ち上がります。決して、人数をかけた(かけ過ぎるような)仕掛けにチャレンジせず、とにかく守備を安定させた状態をベースに一発のタテ勝負を仕掛けるのです。ゴールに飛んだシュートは、レアルが二本、バイエルンが一本。そのうちのレアルの一本が、ジェレミの先制ゴールになったというわけです。

 そのシュートは、右サイドから持ち込んだ中距離シュート。GKのカーンにとっては「イージーシュート」・・なんて、瞬間的に思ったのですが、そのシュートが、カーンの「かなり手前」でワンバウンドし、ボールが、「バウンドの仕方」を見誤ったカーンの手の「上」をすり抜けていったというわけです。まあ、GKにとっては、非常に難しい「ボール弾道の変化」ではあったのですが・・。

 そしてレアルは、計画されたゲーム戦術へクールに戻っていきます。しっかりと守備を固めながら、チャンスには蜂の一刺しを・・。中盤の組み立てでは、たしかに、ジダンを中心にしたレアルに一日の長があります。とはいっても、バイエルンの「忠実」な守備ブロックを崩し切るところまでいけない。それに対し、バイエルンの攻めは単発。直線的に、素早く攻め上がろうとはしますが、いかんせん、その攻めに変化がないから、「予測ベース」で、レアル守備ブロックに、ことごとくチャンスの芽を摘み取られてしまう・・。

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 でも、後半に大きな「転換点」が訪れます。それは、バイエルンのベンチが演出した「ゲームの流れの変化」。それまでの「芸のない単発攻撃」に業を煮やしたバイエルン・ミュンヘン監督のヒッツフェルトが、サリハミジッチとピサーロを、「同時」にピッチに送り込んだのです。

 それは、後半18分のこと。そしてバイエルンの攻めが、俄然、危険な匂いを放つようになっていきます。特にサリハミジッチが入った右サイド。彼自身が前へ行くだけではなく、正確なタテパスを出すことで、レアルの「ウラ・スペース」をどんどんと突いていってしまうのです。一度など、右サイドへ「流れた」サンタ・クルスへ、相手ディフェンダーのアタマを越えるタテパスを出し、サンタ・クルスが、しっかりとパスをコントロールすることを大前提にタテへ飛び出します(もちろん、サンタ・クルスを追い越して!)。そして、イメージしたとおりのタテパスを受けて、危険なセンタリングを送り込みます。

 まさにそれは、チームメイトに「勇気」を与える右サイドからの崩し。そのプレーが、攻撃陣の「イメージ」を確実に広げたと感じたのです。サリハミジッチの「確実な積極プレー」という刺激が、チームメイト全員のマインドを活性化した・・。それを「心理的なキッカケ」に、彼らのボールのないところでの動き(=ムダ走り)に対する積極性が確実にアップしたというわけです。

 フォーバックですから、そんなサリハミジッチの「前掛かりプレー」には、守備的ハーフのコンビ、ハーグリーブスとイェレミースのバックアップが欠かせません。それが殊の外スムーズにいくようになったんですよ。やはり彼らのイメージ・コンビネーションには「年を重ねたあうんの呼吸」がある・・なんて思っていました。

 そんなサリハミジッチの積極プレーに呼応するように、逆サイドのリザラスも、より積極的に前へ突っかけはじめたと感じます。

 その交代は、まさに、チームのマインドを活性化する、大正解の刺激になったというわけです。そして冒頭で紹介したような決定的チャンスが何度も訪れ、そしてその後に待っていたドラマ・・。やはり、チャンスは、ボールがないところでの動きが演出する・・。

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 ホームで先勝したバイエルン。それでも、レアルの底力はもの凄いレベルにあるから、この対決の行方は、もう本当に「オープン」。勝つしかないレアルの「勢い」は、ワールドクラスのクリエイティブ集団が演出するモノですからネ。バイエルンにとって、それは、それは、大変なプレッシャーになるに違いありません。さて・・

 そろそろリバプール対レーバークーゼンの試合がはじまります(朝方の3時)。かなり疲れ気味。もうアタマが回りません。ということで、今日は、ここらへんで・・




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