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CL・・勝負に徹したドルトムント・・ボルシア・ドルトムント対アーセナル(2-1)・・(2002年10月31日、木曜日)

本当に、よく勝ったな、ドルトムントは。チャンピオンズリーグAグループで、ドルトムントがアーセナルに「2-1」で勝利をおさめたのです。場所は、ホームのヴェストファーレン・シュタディオン。満杯だったから、7万人くらい?! それはすごい盛り上がりでしたよ、スタンドだけはネ・・。

 そんな興奮に包まれたスタンドとは異次元の空間であるかのように、グラウンド上は、本当に異様な静寂につつまれていたんですよ。もちろん、表面的な静けさは、内包された両チームの「意図」が極限まで高まっていることの証でもあるわけです。「この」両チームが、「この」状況で対峙したわけですからね。

 ドルトムントの選手たちは、ものすごく集中していました。まあ集中というよりは、アーセナル選手たちが秘めるレベルを超えた才能を恐れ、ものすごく注意深くプレーしていたといった方が正しい表現かも。何といっても彼らは、アーセナルのホームでの第一戦では、完膚なきまでに叩かれ、大敗を喫しましたからね。

 とにかく、中盤で安易にアタックを仕掛けるシーンは皆無。チェックタイミングが遅れたら、確実なウェイティング。そして、何度チンチンに振り回されても、何度チェック動作を外されて置き去りにされかけても、粘り強くマークしつづけ、絶対にドリブルスピードを上げさせないのです。アンリに対しても、リュンベリに対しても、ヴィルトールに対しても、ビエラに対しても、ピレスに対しても・・。

 あっと・・。ピレスのパフォーマンスですが、それは、絶頂期から比べれば「かなり」落ちると言わざるを得ませんでした。一番目立っていたのは、何といっても、減退した運動量とボールを持ったときの消極性。以前は、グラウンド狭しと縦横無尽に走りまくり、ボールにタッチしまくり、展開と仕掛けの「コア」になりまくり、チャンスを見計らったドリブルにチャレンジしまくり、そして攻撃の最終シーンに絡みまくり・・なんて、とにかく「まくり続け」ちゃう。

 フランス代表のカゲの将軍とまで言われていたんですよ。ヨーロッパではネ。だから、W杯におけるフランス代表の早期敗退は、ジダンだけではなく、彼のケガも大きく響いていたというわけです。

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 さて試合。

 前半18分に、フリーキックからアンリに先制ゴールを奪われたドルトムント。こうなったら、やはり行かざるを得ない。結果として、どうしても前へ重心が移動し過ぎることで後方の守備ブロックが「空き気味」になってしまう。そんな状況で、アンリが、まったくフリーでボールを持ってドリブルをはじめ、どんどんと加速するというピンチに陥ってしまいます。

 とにかくアンリのドリブルは、一対一の状況だったら、もう誰も止められない。そのことは、グラウンド上で体感している選手たちが一番よく知っている。だからそんな状況に、選手たちが、一瞬「凍り付く」のも道理だったのです。まあそのシーンでは、粘りの汗かきマークをつづけたヴェルンスが、後方から追いかけてきたチームメイトと協力してボールを奪い返したから事なきを得たのですが・・。

 でも逆に、そんなピンチが、再び選手たちの集中を呼び戻し、ディフェンスでの集中が戻ってきたと感じました。攻撃から守備への切り換えが、目に見えて早くなったのです。アーセナルにボールを奪い返された瞬間に、中盤のフリングスやケール、リッケン、はたまたエヴェルトンやロジスキーまでもが、脇目もふらずに全力で戻り、例によっての粘りディフェンスを展開するのです。彼らの勝因でもっとも大きかったのが、そんな、首尾一貫したディフェンスだったことは言うまでもありません。

 まあ、強化された守備意識によって攻撃が犠牲になったことは否めません。たしかにアーセナル守備陣に、コレルのアタマに合わせ、そこからのヘディングラストパスを二人目、三人目がチャンスに結びつけるというドルトムントのツボにターゲットを絞った効果的なディフェンスを展開されたこともありましたが、とにかくドルトムントがアーセナル最終ブロックを崩したシーンは、本当に希だったのです。それでもワンチャンスをしっかりとモノにして勝ち切った・・。

 ドルトムントのゴールは渋かったですよ。同点ゴールは、ロジスキーのフリーキックをアーセナル守備陣がミスってオウンゴール。まあ、コースが完璧だったことが一番の要因でしたがね。また勝ち越しゴールは、非常に微妙な判定でのPKをロジスキーが決めたものでした。とにかく、ドルトムントの集中力に拍手を送りたい湯浅でした。

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 対するアーセナル。あれほど首尾一貫したディフェンスを仕掛けられたら、いつものように、自分たちが描くプレーイメージを体現するのは難しかったとは思うのですが、それにしても、ちょっとリズムを乱し過ぎていると感じます。要は、選手たちが、互いの次のプレーイメージをうまくシェアできていないということなのですが、それは一体何なのかな・・。シンプルにパスをつなぐというマインドが陰りがち・・、だから個人勝負に奔りがちになっている・・等々?! そんなネガティブな面は、逆転された後の攻めに如実に現れていました。

 私は、まだ万全ではないピレスが、先発でグラウンドに立ったことも、彼らのサッカーがうまく機能しなかったことの原因の一つだと思っています。チームメイトたちは、彼の全盛期のプレーをイメージしていますからね。シンプルなボールの動きのコアになる・・、勝負所では、躊躇なくドリブル勝負を仕掛けていく・・、彼が中心になった素早く勢いのあるワンツーもどんどんと仕掛けていく・・等々。チームメイトたちは、前述した「まくり」つづけるピレスをイメージしていたのに・・というわけです。

 ロナウドが参加したことで、チームプレー(互いのイメージコンビネーション)がうまく噛み合わなくなっている今のレアル・マドリーもそうなのですが、そんなサッカー独特の現象を見るたびに、サッカーチームが、本当に微妙なバランスの上に成り立つ生き物だと再認識させられるのですよ。もちろんそこには、サッカーが、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実要素てんこ盛りのボールゲームだという原則もあるわけですが・・。

 微妙なバランス。それは、選手たちが脳裏に描きつづける、攻守にわたるプレーイメージがうまくリンクするかどうかということ。瞬間的に状況が変化してしまうサッカーだからこそ、一瞬の間だけシンクロするプレーイメージを着実にグラウンド上に現出させていくという作業が、ある程度うまく回転することが重要な意味を持つというわけです。まあ、いつも書いていることではありますが。

 とはいっても、アーセナルが調子を上げてくることは確かなことでしょう。調子を崩しているレアル・マドリーも含め、そこでの回復プロセスの証人になることほどエキサイティングな経験はありません。その意味でも、CLの二次リーグが楽しみになってきました。

 あっと・・。今節のAグループのもう一つの試合、オーゼール対PSVアイントホーフェンは、ホームのPSVが、「3-0」でオーゼールをうっちゃりました。その結果、Aグループからは、ドルトムントとアーセナルが二次リーグに進出することが決定しました。

 さてこれから、アンダー20アジア選手権の決勝です。フ〜〜。




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