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CLと小野伸二・・バイエルンがドラマを演出できずにアウト!・・存在感をアップさせるイタリアのツボ・・ハイレベルな内容を魅せつけるスペイン勢・・等々・・(2002年10月31日、木曜日)

あらら・・。まったく本格ドラマまでいかずにバイエルン・ミュンヘンが姿を消すことになってしまった・・。

 先週のコラムで、「まずデポルティーボに勝利し、最終戦でランスに大勝をおさめ、そしてデポルティーボが、ミラノで行われるACミランとの最終戦に負ければ・・」なんて書いたのですが、この記述内容に誤りがありました。バイエルンが、残された2ゲームに連勝すれば(なるべく多くのゴール差で!)、デポルティーボ・ラ・コルーニャが引き分けても一次リーグ突破でした。面目ない・・。

 さて、一昨日行われたバイエルン・ミュンヘン対デポルティーボの勝負マッチ・・。バイエルンの完敗でした。見かけ上は押してはいたものの、内容で凌駕されていたのです。それも、相手のエース、バレロンがいないのに・・。

 この試合でのバイエルンは、エウベルのワントップで臨みます。その後ろに、二列目トリオ(左がゼ・ロベルト、中央がショル、そして右サイドがサリハミジッチ)を置くという布陣です。フォーバックと、イェレミースとバラックで構成するボランチコンビは、いつもの通りです。

 対するデポルティーボは、やはり・・というか、バイエルンのツボを抑えるという発想のゲーム戦術を組んできました。そうです。両サイドからの仕掛けを完璧に抑制するというイメージです。また、バレロンが抜けてから既に数試合やっていたことも、全体的なチームパフォーマンスに好影響を与えていたという印象も持ちました(この試合では、フランがバレロンの役目を担う)。「彼抜き」のプレーイメージがうまく回りはじめていたということです。

 両翼からの攻めがままならないバイエルンですが、何度か、複数の「パス&ムーブ」アクションを組み合わせた素早いコンビネーションでデポルティーボの守備ブロックに穴を空けそうになるというシーンも演出しました。でもその度に、マウロ・シルバの「読みレベル」の高さを実感させられましたよ。サスガです。あれこそベテランの味と呼べるものです。

 ゲーム展開ですが、攻めあぐんだことで、徐々に力ずくの攻撃になっていくバイエルン。それに対し、フラン、ヴィクトール、そしてマッカーイ等が、組織と個がバランスするような危険な攻撃を仕掛けるディポルティーボ。

 後半になって、バイエルンが動いてきます。うまく機能しない「二列目トリオ」を解体したのです。サリハミジッチとサンタ・クルーズの交代。これで、エウベルとサンタ・クルーズのツートップになります(二列目には、左にゼ・ロベルト、右にショル)。要は、バラックが、より積極的に前線へ絡んでいけるように、二列目の中央ゾーンを空けたということです。

 でもここで大誤算が・・。後半開始早々に、バラックがケガで退場してしまったのです。後半のチーム戦術チェンジが機能するかどうかを確認する間もなく・・。

 バラックと交代したのはフィンク。たしかに良い選手ですが、攻守にわたる実効レベルでは、バラックと比べようもない・・。そしてバイエルンの攻撃から、互いのイメージが高次元でシンクロするようなアイデアが抜け落ちていったという次第。まあ、サンタ・クルーズがヘディングで挙げた同点ゴールは見事でしたけれどネ(ショルの正確なクロスも見事!)。

 まあ、内容的にも納得できるバイエルンの早期敗退ではありました。

 あ〜〜あ、これで大きな楽しみが一つ消えてしまった・・。まあ、調子が上がっているドルトムントとレーバークーゼンに期待しましょう。

 いま10月31日(木曜日)の午後5時ですが、あと2時間ほどでドルトムント対アーセナルの一戦がワウワウで放映されます。気付いたことがあれば、U20アジア選手権決勝(韓国との勝負マッチ!)とともに、明日(11月1日の金曜日)にでもレポートしますので・・。

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 それにしてもスペイン勢。

 特にデポルティーボとバレンシアは、素晴らしいサッカーを展開していますよ。10月31日の水曜日におこなわれた試合では、バレンシアが、アウェーで、「あの」リバプールに完勝しましたしね(0-1)。それも、内容で凌駕して・・。

 たしかにリバプールも、2度、3度と決定的チャンスは作り出しました。それでも、サッカーの内容自体では、まさに完敗だったのです。

 バレンシアが魅せつづけた素晴らしいボールの動き。ロナウドの組み込みに四苦八苦している今のレアルをも圧倒するのでは・・なんてことまで思ったもです。

 カリューをワントップに、左のキリ・ゴンザレス、中央のアイマール、右のルフェーテ、はたまた後方から厚いバックアップを魅せるバラハ等が、素晴らしく高質なサッカーを展開するのですよ。

 アイマールが、キリ・ゴンザレスが、ボールのないところで動きまわりながら、素早く、広くボールを動かし、ここぞ!の勝負所では、個の才能を存分に発揮する・・。もちろん組織パスプレーの最中でも、素早いコントロールや、マークを軽く「いなす」ようなエスプリプレーを効果的にミックスしながら・・。いや、心を奪われてしまいます。

 現代サッカーでは、少ないタッチ数で相手ゴールへ迫るカウンター気味の攻撃がゴールシーンの主流。それでも、彼らのサッカーを観ていたら、組み立てベースの攻めでも、高い頻度でシュートチャンスを演出できる・・という希望が湧いてきたものです。要は、彼らのプレー内容が、美しく、強いサッカーという理想型へ向かうベクトル上に乗っているということです。もちろん「美しさ」の定義については、異論、反論、オブジェクションの世界でしょうがネ。このテーマについては、また別の機会で・・。

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 さて小野伸二のフェイエノールト。

 調子の良いユーヴェントスを相手に立派に闘いました。それでも結局は「2-0」の完敗を喫してしまいました。

 そこで印象に残ったのは、ユーヴェントスが展開した、「まさにイタリアのツボ」とも言えるサッカー。

 スリーラインを維持しながらのディフェンス段階でも、常にトップと前気味ハーフたちが、「次のカウンター」を意識しつづけていると感じます。スリーラインですが、いくら相手に押し込まれていても、それが崩れることがない。要は、前後左右のポジショニングバランスを維持するための戦術的な理解度が高いということです。相手の仕掛けの意図をイメージしながら、守備ブロックの人数と互いのポジショニングを、スッ、スッと微調整してしまうのです。そしてそれを基盤に、ボールを奪い返した瞬間にスタートする必殺のカウンター。

 この試合では、パルマで中田英寿のチームメイトだったディ・ヴァイオが2ゴールを挙げたのですが、その両方とも、フェイエの守備ブロックが整わないうちに仕掛けたカウンターからのものでした。特に、ダーヴィッツ、ネドビェド、カモラネージ、そしてディ・ヴァイオと、素早くボールを動かして挙げた2点目は秀逸でした。

 守備の組織が整った状態ではなく、互いのポジショニングバランスや人数が整っていない状態で相手のスピーディーな攻撃に対処しなければならない場合、はじめから人を追いかける「受け身アクション」になってしまったり、フリーでボールを持つ相手選手に対し、遅れたタイミングでチェックにいったりせざるを得なくなります。

 ユーヴェントスの選手たちは、そんな状況を明確にイメージしながら守備に就いているというわけです。守備から攻撃への、素早くスムーズな移行・・。

 ユーヴェの攻めでは、デル・ピエーロとディバイオのツートップと、二列目のネドビェドが中心。もしその他の選手が参加してくるときは、確実な後方バックアップ体勢が敷かれたときだけです。本当に、イタリアのツボサッカーは徹底している。

 バイエルンに連勝をおさめたACミランも含め、今シーズンのチャンピオンズリーグでは、久々にイタリア勢が存在感を発揮することになるのかも・・なんて思っていました。

 まあこのことについては、来週発売のサッカーマガジンの連載でも書きましたので・・。

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 さて最後に小野伸二。

 全体的な出来は良かったですよ。パフォーマンスが高みで安定していると感じます。「単なるバランサー」ではなく、攻撃でも守備でも、しっかりと勝負所で、確実な実効プレーができているのです。

 とはいっても、その勝負所で、本当のコアになるプレーが少なかったことに対しては、ちょっと不満。

 守備では、彼自身がボールを奪い返すシーンが少なすぎる。また攻撃でも、ドリブルやワンツーなど、自分が中心になって勝負を仕掛けていくというシーンが少ない。もちろん、素晴らしいボールコントロールから放たれる高質な「ラスト・スルーパス」は目立ちに目立っていましたし、その発想はかなりのレベルにはあるのですが・・。このラストスルーパスシーンは、2-3本はありましたかね。素晴らしかったですよ。また、最終勝負のキッカケになるサイドチェンジパスも良かった。

 それでも湯浅は、もっと、もっと、攻守にわたって彼自身が主役になるシーンを・・と要求したいのです。

 仕掛けシーンで、マークする相手を身体でブロックしながらタメを演出するとか、相手をハンドオフしながらドリブルで突破するとか、ボールがないところでの忠実マークから競り合に持ち込み、そこで相手の身体を押さえながらボールを奪い返す等々。そんな接触プレーへのチャレンジが消極的!? まあ現象面では、そうとも言えますかね。

 とにかく、(プレー発想的に)明確な発展プロセスに入った彼には、妥協せず、自分の能力の限界を突き詰めて欲しいと願って止まない湯浅なのです。




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