トピックス


 

ベルギーとロシアについて、ちょっとだけ触れておきましょうかネ・・(2002年2月3日、日曜日)

本日から一週間の予定で海外出張。たぶんアチラでは、HPをアップする時間はないと思い、出かける前に、軽く、ベルギーとロシアについて「初期分析(ファースト・インプレッション)」を・・と思い、キーボードに向かいました。

-----------

 さて、まずベルギーから。先日スカパーで放映した「クロアチア対ベルギー」だけではなく、プレーオフ(本大会出場決定戦)のチェコ戦なども観ました。その、ベルギーでの初戦。チェコは、コレル、ロシツキー(両者とも、ブンデスリーガの雄、ドルトムントの中核選手)が出場停止なだけではなく、前半41分には、守備の重鎮、レプカまでもレッドカードで失ってしまいます。それでも、10人のチェコに対して攻めあぐみ、追加ゴールを挙げることができないベルギー。フムフム・・、やはりベルギーは、「自分たちが主体になって仕掛けていくという展開」は苦手なんだな・・なんて思っていました。

 これまでの国際大会で「赤い悪魔(ベルギー代表のニックネーム)」たちは、しっかりと守って、素早くカウンターを仕掛けていく・・という試合運びで成功を収めていました。それでも、自分たちが「ペースを作る」という展開になったときには、どうしても攻撃が停滞してしまう(単調になってしまう)・・。

 そんな現象も、ベルギー選手たちの「イメージシンクロ」のベースになる「試合展開」が、前掛かりに攻め上がる相手に対して、その「守備での穴」を鋭く突いていく・・というものに集約されているからなんでしょう。

 チェコとの第一戦の後半は、まさに、彼らにとって不得手な展開になってしまったということです。一人足りないことで、また相手(ベルギー)のホームということで、守備を固め、「キズ(失点)」を最小限に止めようとするチェコ(もちろん、スキあらば・・とカウンターを狙っています!)。ベルギーは、どうしても、そんな彼らを崩しきるところまで行けません。試合後に、ベルギーのワセイジュ監督が、「たしかに理論的には、リードを広げられる状況だったのかもしれないが、我々にとっては、チェコにゴールを奪われなかったことの方が重要な意味を持つとしなければならないのかも・・(キッカー誌)」なんて語っていたとか。さもありなん・・でした。

 ただ、チェコのホームとなった第二戦は、まったく逆の展開に・・。とにかく勝たなければならないチェコが、はじめからガンガンと押し込んできます。最初の15分間は、それは凄い勢いでした。それでも、ビッグチャンスは、ロクベンツの決定的シュートシーン一本。そしてその後は、押し上げるも、堅牢なベルギー守備ブロックを崩しきるところまでいけないという膠着状態に・・。もちろん、そんなゲームの流れは「ベルギーのツボ」です。とにかく耐えながら(この、ディフェンスでの集中力の持続性が凄い!)、ワンチャンスのカウンターを狙い続けるのです。とはいってもベルギーにしても、スピアヘッドのエース、エミール・ムペンザを欠いていることで、チェコゴールへ迫ることがままならない・・。

 そんな展開のなか、徐々にチェコがナーバスになっていきます。それこそ、ベルギーの思うツボってなゲームの流れ。攻め込もうとするが、どうしても攻めの歯車が噛み合わないチェコに対し、逆に、ベルギーのベルヘイエンが、二度もビッグチャンスを迎えてしまう・・。フラストレーションがたまったチェコが、心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでしまった・・!?

 そして、タイムアップまで残り数分というところで、チェコ守備ブロックの重鎮であるボニェクが、自ペナルティーエリア内で痛恨のハンドを犯してしまいます。PK!! もちろんベルギーのキッカーは、ヴィルモッツ。冷静なPKゴールではありました。

 こうして、ベルギーが、プレーオフで連勝し、ワールドカップ本大会へとコマを進めたわけです。それにしても、彼らの「得意技」は変わりません。しっかりと守ってカウンター・・。それでも、それがツボにはまったら、怖い、怖い。

 それは、選手全員が、その「ツボの状況」に対して、明確なイメージを持っているからに他なりません。「あっ、オレたちのツボにはまりそうだ・・」。そう感じた瞬間、何人もの選手たちが「ボールのないところでの爆発アクション」をスタートさせ、最後までスピードを緩めない・・。その迫力たるや、これぞ「赤い悪魔」ってな具合なんですよ。

 そんな「ツボにはまった、素早く鋭い(カウンター気味の!?)攻め」の演出家は、ヴィルモッツであり、守備的ハーフのバンデルヘーゲ。特に、バンデルヘーゲは優秀ですよ。

 そして「突撃隊」が、トップに張る(基本的にはワントップの)エミール・ムペンザであり、右サイドのベルヘイエンであり、左サイドのバート・ホールなのです。

 また前が詰まったら、バンデルヘーゲが、ドカン!というロングシュートを放ちます。その強烈なこと・・正確なこと・・。怖い、怖い。

 たしかにベルギーの選手たちは「足許」が器用ではありませんし、自分たちが主体になったクリエイティブな展開のレベルもそこそこ。それでも、彼らの「ツボ」にはまったときの「素早い最終勝負」は、危険なことこの上ありません。だからこそ日本代表は、考えなくとも、スッと戻るアクションに入れるなど、ビデオなどを使い、「ベルギーのツボ」に対するイメージトレーニングをくり返さなけばならないのです。そのツボにはまってから、状況を判断して反応していたら遅れてしまうのは目に見えていますからネ。

---------------

 さてロシア。

 彼らは強いチームです。フットボールネーションのエキスパートたちも高く評価しています。

 彼らのサッカーで一番目立つのは、何といっても「流動的なバランス」の良さ。彼らが展開するサッカーは、本当にうまく均衡しているんですよ。まあバランスといっても分かりにくいでしょうから、もっと具体的に言うと、例えば、攻めにしても守備にしても、それぞれの局面に参加している人数が、常にうまく足りていることとか、攻守にわたって選手たちのポジショニングのバランスがいいとか、色々な視点があるのですが、それらすべてがうまくバランスしているということです。

 前線でも、中盤でも、局面に「顔を出してくる選手」たちの顔ぶれがどんどんと変わる・・。要は、攻撃でも、守備でも、全員が、それぞれの状況にうまく対応した「自分主体プレー」ができているということです。

 彼らは、基本的にはフォーバック。中央は、チュガイノフとオノプコ(素晴らしいプレーヤー!)が担当します。両サイドは、スメルティン(右)とコフツン(左)。その前に、中盤の底として、モストボイが君臨します。最前線は、ベスチャツニフのワントップ。

 それ以外の、カルピン(中盤の右)、アレニチェフ(中盤の左)、ホフロフ(守備的ハーフ)、そしてチトフ(前気味の二列目)等は、状況に応じ、まさに「流動的」にポジション(その時点でのタスク=役割)を、自分主体の判断と決断で変えていくというわけです。攻撃においても・・、守備においても・・。

 まあ、センターバックコンビのチュガイノフとオノプコ、中盤の底(=優れたバランサー)のモストボイ、それにトップのベスチャツニフくらいですかね、基本的なポジションを維持することを「イメージの基本」にプレーしているのは(もちろん彼らも、ここぞ!というポイントでは、前へリスクチャレンジする!)。それ以外の選手たちは、前後左右に、どんどんとポジションをチェンジしていく(攻撃での変化の演出!)。それでも、次の守備における前後左右のポジショニングバランス、人数バランスが崩れない。これは凄いことですよネ。

 とはいっても、基本的なプレーイメージはあるようです。例えば右サイド。そこでは、スメルティンとカルピンが、頻繁に前後のポジションチェンジをくり返し、左サイドでは、コフツンとアレニチェフ、そして中央では、チトフとホフロフが、頻繁にポジションを入れ替えるというわけです。

 そんな、互いの信頼をベースにした確固たるプレーイメージが、また抜群に高い「守備意識」が、彼らの変化に富んだ「流動サッカー」を支えている・・。攻撃から守備への「意識の切り換え」の早さ、また、相手のボールがないところでのアクションに対する忠実なマークなど、彼らのサッカーには魅力が満載です。

 例えば、左サイドのコフツン。上がれる状況となったら、それこそ「脇目もふらず」、最終勝負シーンまで絡んでいきます。そんな「ココゾ!の積極性」は、(基本的には守備的ハーフの)ホフロフも同じ。そして、彼らの「パートナー」である、チトフや、アレニチェフ等が、しっかりと「次の守備での穴埋め」に備える・・。それが、深い相互信頼のベースというわけです。何度、チトフとか、アレニチェフが、自軍のゴール前で全力ディフェンスをするシーンを目撃したことか。フムフム・・。

-------------

 ベルギーとロシアに関する「ファースト・インプレッション」でしたが、今後も、彼らのビデオを取り寄せ、選手一人ひとりのプレーのクセとか、もっともハイレベルに仕掛けイメージがシンクロする典型的コンビネーション等々、もっと深く分析することにしましょう。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]